超高難度脱出ゲーム〜水中編〜

 差し込む日光が、周囲を泳ぐ色とりどりの魚たちを、美しいサンゴ礁を照らし出す。
 絶景と言い切っても差し支えない光景を前に、しかし小鳥の気持ちは重かった。正確に伝えるのであれば、そこに気持ちを向ける余裕がなかった。

「なにがどうなってるの、これ……」

 疲れた呟きが漏れる。それはどこにも届くことはないだろう。
 なぜといって、今彼女がへたり込んでいるのが綺麗な球形をした泡の中だからだ。どうやって呼吸できているかもわからない。

 泡の中からまず目につくのはタコ。ただのタコではない。ダイオウイカ並みの巨大な軟体生物がすぐそばに鎮座している。
 そしてその頭の近くに浮かんでいるのは……小鳥は正直信じきれず、何度も目を擦ったのだが……人魚のようだった。
 遠目から見てもはっきりとわかる美貌。なにやら身振り手振りで大ダコになにかを指示している。

 その指がこちらを指すのを見て、小鳥は理解した。あれは番ダコなのだと。

【続く】

#逆噴射プラクティス

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