全自動二輪、高速道路を爆走す

噂の出所はとあるトラック運転手だった。
某月某日の深夜のこと。いつものように高速道路を利用していた彼は、思いがけない衝撃に文字通り飛び上がりそうになったのだという。

「ぶつけられたのか!?と思いましたね。それくらい揺れました。けどすぐに違うとわかったんです」

運転手のMさんは手振りを交えながら語った。

「もう、窓がすごい勢いで鳴ったもんですから。トラックを止める云々の前に思わずそっちを見ちゃったんですよ。そしたら」

と、Mさんは言葉を止める。焦らしているのか……と思いきや、そうではない。
今でも信じられない、と彼は苦笑した。

「そのー、ですね。一瞬だけですけど確かに見たんです。自転車でした。なんで高速に、なんて思う暇もない。次の瞬間には道路に火の轍を残して追い抜いていったんです」

あんなに急いでどこに行くんでしょうねえ。
彼はそう締めくくった。

【続く?】

#小説

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