太陽の少女と冬の魔女と
ノーサは、彼女と初めて出会った日のことを忘れないだろう。滅多にない青空の日だったから。
また、彼女のことも忘れないだろう。珍しい旅人だったから?それだけではない。
決して忘れられないだろう。炎のように赤い髪を。
決して忘れられないだろう。凍てつく空気などものともしない、あの薄手の服を。そこから覗く、よく日焼けした肌と、その上に刻まれた神秘的な紋様を。
……決して忘れられないだろう。足元の雪を溶かしながら、鼻歌とともにやってきた彼女のことを。
そしてもう会うことはないと思った。
なぜなら彼女は白の森へと向かったから。村で恐れぬ者などいない、あの冬の魔女の住処へと。
再三止めたにも関わらず、彼女は微笑とともに向かってしまった。見惚れるほどに軽やかな足取りで、死へと向かっていった。
『大丈夫。お母さん、そこまで怖い人じゃないからさ』
ノーサは忘れないだろう。少女が別れ際に呟いたあの言葉を。
【続く】
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