チミドロ表裏

「なのかな?」の裏話 01.「 TOKYO特許許可局」の話

はじめに

2019年3月15日。チミドロのニューアルバム『なのかな?』がシカクオンガクから発売されました。

前回、『みんなのうた』というCDをTOKYO FUN PARTYというレーベルから出したのが2007年で、つまり12年の月日が経ったのです。

プロのミュージシャンならまだしも、特に華々しい存在でもない素人バンドだから、1年で1枚出ようが10年で1枚だろうが、っつうか別に一生出なくたってまったく問題ないし誰も気にしないのですが、一応自分たちとしては結構ずっといつでも「またアルバム作りたいね」って言い合って来たのに12年かかってしまいました。

それはまず自分の腰が重いからで、何をするにも「うん、やろう、いつかやれたらいいよね」という風に、具体的に踏み出すことを避けてきたからです。そんな自分のせいで周りのみんなもだんだんやる気が落ち着いていって、最初は急かしてくれていたのがそのうち何も言わなくなる。やる気を吸い取る特殊な力が自分にはあるのかもと思うほどです。

それでもなんとかようやく形としてまとめることができて本当によかった。なんかすっきりするもんですね。

アルバムにはこのような曲が収録されています。

01. TOKYO特許許可局
02. 酒地蔵
03. ただの錯覚
04. 2パターン
05. skit
06. わんにゃんパーク
07. ゲットー酒場
08. ブレーカー
09. やっぱり仕事したくない
10. ジャスハイヘブン
11. SHINE旅行

今回、シカクオンガクから「せっかくだから曲について自分で解説するような文章を書いてみては」と提案してもらい、そんな風に言ってもらえるならと思って、数回にわけて全曲のことを振り返ってみることにしました。

「TOKYO特許許可局」の思い出

まず、

01. TOKYO特許許可局

という曲からアルバムが始まるのですが、この曲が2008年に作ったもので、もういきなり10年以上前。

もともとDJきなこもちアイスさんという沖縄出身のミュージシャンから「フリーダウンロードのコンピレーションアルバムに参加しませんか」と誘いを受けて、そのコンピが、「規定のサンプルネタだけを使って作った曲」ばかりが入っているという主旨のものでした。

なのでこの曲も、その指定された音源をサンプリングして組み合わせて作ったはずです。

無駄な機械を作り続ける人の話が歌詞になっているのですが、そもそも特許許可局ってそういうものなんだっけ?と後で思った記憶があります。

でも調べてみたら「東京特許許可局」というのは早口言葉用にでっちあげられたもので、そのような施設は存在しないとのこと。

だからまあ、なんでもいいということだ。

チミドロはシカゴハウスに憧れて、「あんな感じで決まった言葉を連呼するのなら、その場でリアルタイムでもやれそうだ」と思って始めたもので、複雑な歌詞を歌うことはできないというか、予定になかったのですが、自分はテクノも好きだったけど、ヒップホップも少しは聴いて、かっこいいと思うラップ、好きなラップが自分の中にあり、いつかやってみたいと思ったりもした。しかし私も他のメンバーもどうしてもラップが下手で、それっぽくすらできない。

そこで「もう最初から絶対にうまく発音できるはずのない言葉をラップにしたら下手でも関係ないじゃんね」というような、後ろ向きな、自虐的な気持ちから、「東京特許許可局」をテーマにしようと思いました。

前述したコンピの締め切りギリギリか、あるいはもうとっくに過ぎていたかのタイミングでようやく作り出し、夏の昼間、その頃住んでいた部屋の畳の上にシンセとサンプラーを置いて制作しながら、その時ちょうどすごく嫌なことが私生活の中であって、むっちゃくっちゃイライラしていて、暑かったし、パンツだけになって、汗だくで立って歌いながら作っていった記憶があります。

自分が作ったトラックに、後からベースのイチノミヤ君がカオシレーターで音を足してくれて、それがピッタリハマっていい感じになりました。

パリッコさんと会ったのもこの曲がきっかけだったな

そういえば、この曲をそのコンピに入れてもらうことになって、完成後にその打ち上げが中野の白木屋で開催されて、そこに行ったらパリッコさんも来ていて、その時は自分は「有名な人だ知ってるぞ」と思って緊張して少しもしゃべれなかったのですが、同じく参加していたハナイさんとパリッコさんの地元が近いみたいなことをきっかけに「今度飲みましょう」と二人が話していて、「もしよかったらナオくんも来たら?」とハナイさんが言ってくれて、そういうことがあって結果パリッコさんと知り合うことになった、という曲でもありました。

さらに、後になって映像制作会社に勤める友人が「いっつも大きな仕事のアシスタントばっかりなんだけど、自分の意志で、思うようにMVを作ってみたい!」と声をかけてくれて、MVが制作されることになりました。

今はなき阿佐ヶ谷住宅という団地で撮影をしたり、その頃よく出演させてもらっていた高円寺の無力無善寺で撮影したり、とにかく1日で色んな場所で撮影することになって、撮影クルーも大人数で、ちゃんと服とかお面とか小道具も用意されていて、タイムテーブルに沿って進行していくみたいな、「ここで休憩入ります!お弁当用意してありますんで!」というような。束の間のスター気分を味わった記憶。

本当にありがたいことです。チミドロはいつもそういう、なんかありがたいことの連続でやれている感じです。っていうと「マジ感謝」みたいな風だけど、本当にそうなんだ。大きな鳥に肩をワッシと掴まれていつもどこかへ連れていってもらっている。

1曲について話すだけで結構長くなってしまったので、まずはここまでで終わります。

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