チミドロ表裏

「なのかな?」の裏話 04.「2パターン」の話(スズキナオ)

2019年3月15日に発売になったチミドロの2ndアルバム「なのかな?」の収録曲について、思い出を綴っています。それの4回目です!


今回は、

04.2パターン

のことを思い出します。

「2パターン」で「ふたパターン」と読みます。

持ち手のついたバッグであり、リュックとして背負うこともできる、というような「2WAYバッグ」が便利だなというような、いつものようにどうでもいい内容の歌詞です。

東京に住んでいた何年か前まで、私は渋谷にある会社に勤めていて、その会社でサボり過ぎ、社内で圧倒的ナンバーワンのダメ社員として知られるようになった結果、「根性叩き直してもらった方がいい」みたいな感じで、別の会社に出向することになりました。

というか、会社の給与の決め方がある時から「相対評価」というのに変わって、その際にされた説明が「会社として支払える額には限りがある。それをどんな風に分配するか、みんなの意見を取り入れて決めていきたい」というようなもので、「つきましては、他グループの人に対しても、あの人はもっと評価されるべきだ、とか、あの人は意欲が足りない、というようなことで思うことがあったらどんどん意見を下さい」という。

それからしばらくして私は社長に呼び出され、「君が給料をもらい過ぎているという意見が社内から複数上がった」みたいなことを言われ、減給されることになった。

まあ、会社の役に立っていなかったのは確かなので仕方ないところもあるのですが、それにしても、「自分の給料を上げてください!」と主張するのと「あいつの給料を下げてください!」っていうのは似てるようで、かなり隔たりがあるんじゃないでしょうか。
以来、私はどんなにこれから自分が大変な目にあっても、「俺を助けてくれ!」と言いはしても、「あいつも俺みたいに不幸にしてくれ!」と願うようなマネだけはすまいと誓いました。
だいたい、会社の人たちに対しても「あいつか?あいつが言ったのか?」みたいに疑心暗鬼になるし、いいことないよ。
みんながよそよそしくなり、横で協力しあわず、むしろ出し抜こうとするようになり、偉い人の機嫌をせっせと取るようになる。まるで今の日本のようだ。

そして出向させられたのですが、これがまた、まさに「罰が当たった」っていう感じの嫌なミッションで、そのことはまたどこか別の場所で語るとして、出向してから数週間で体重が一気に減りました。
出向先はめちゃくちゃ大きなビルのワンフロアで、たくさんの人が働いており、単にそういう環境に自分が慣れなかったということもあるのでしょうが、いつもビクビクして、弁当は近くの嫌なニオイのする川のほとりで食べ、食欲がないので半分ぐらいしか食べられないみたいな。

それはそれは憂鬱な日々でした。

自分の席のあるフロアから3階上に行くと喫煙スペースがあって、そこでタバコを吸うのが一瞬の息抜きで、とはいえすぐに吸い終わってしまうのであえてエレベーターを使わず、誰もいない階段を使って上り下りするようにしていました。

うなだれて足元を見ながら行く。階段の上にズッズッっと自分の足が、くぐもった音を立てながら左、右、左、右と現れる。それを見ていて、そのリズムで、「リュック、バッグ、リュック、バッグ、リュック、バッグ、ふたパターン」という言葉が脳裏に浮かび、それからは階段を上り下りする時はいつも念仏のように「リュック、バッグ、ふたパターン」と頭の中で繰り返しながら足を踏み出すようになりました。

そんな頃にチミドロでスタジオに入る機会があり、ドラムのジュンヤさんに「こんなリズムでさ」と、DJ Rushのダンスマニアから出たレコードの中の「Lady Bug」っていう、ほとんどドラムだけの骨組オンリーみたいな曲のフレーズを口頭で説明し、そこに頭にこびりついている「リュック、バッグ、ふたパターン」のフレーズを乗せてみました。
完全にそれだけの思いつきでしたが、「これ楽しいっすね」とジュンヤさんが言って、トミータがフレーズをつけて、それで「一応こういうのもありか」と、なっていった記憶があります。

ドラムとシンセが録り終わったところにMC陣が声を録音していく段階で、クスモがスキャットっていうか、「アン」「ウーン」とか、なんか色々な声を足してくれて、それでより間抜けで気味の悪い感じになってよかったです。
CDで聴くとこの曲がすごくドラムが生き生きしていてよくて、「おっ結構いい!」と毎回思います。

チミドロ2nd FULL ALBUM「なのかな?」については特設サイトをチェック!

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