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人生にBGMはない

NHK大河ドラマ『光る君へ』を観ていたら、藤原道長一行が御岳詣へと向かう道中、過酷な山(というかもはや崖)を越えるシーンになった。すると、突如、パイレーツオブカリビアンを彷彿とさせる音楽が仰々しく流れ出し、いかにも男たちの戦いといった雰囲気が漂った。


音楽は、視聴者の心を自在に操るための最も有用な演出である。 


が、我々が生きる現実世界で、突然音楽が流れ出すことは決してない。 



病めるときも健やかなるときも
愛し、愛されるときも
恨み、恨まれるときも
惜別にも再会にも
寂寥にも安心にも


時はただ、誰のもとにも、とても静かに流れていて、そのことはわたしはとても良いことだと思う。


ロックスターにもLVMHの会長にも皇室にも死を待つ老人にも、産声をあげた命にも、ニューヨーカーにもダッカのスラム街の住民にも、音楽は鳴らない。


我々が生きる資本主義社会は、その程度にはやさしい。



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