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インスタblog 「革でなく皮を選んだこと」-鞣しをしない皮-

鹿皮紙は革でなく皮の漢字を使っている

鞣し工程を経た皮は「革」となるのだが、鞣し工程を行わないので鹿皮紙は「皮」のままとなる

鞣しとは簡単に言えば、日常生活環境下で使用できるように皮の性質を変化させ固定すること

革になる事で
・皮はそのままにしておくと固くなるが、革はならない(例:鳥皮を放置すると固くなり、腐敗する)

・耐熱性や柔軟性、耐薬品性の向上

・外的影響等で変化しないように組織を安定させる
などメリットが多い

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では、鹿皮紙はどうだろう

鹿皮紙は鞣し工程をおこなっていない

それは鹿皮紙はシンプルに乾かす事で組織中の水分を減らす事により微生物や細菌、カビなどによる影響を受けないようにしているから

皮の乾物または干物のようなものと考えればわかりやすい(塩は不使用)

しかしH2Oは完全に無い訳ではなく結合水としてタンパク質等と共に存在している、自由水として存在している水分量が微生物や細菌やカビの影響を受ける状態以下になっている

革と違い、皮は乾くと硬くなるが薄くする事で使いやすくしている

鹿皮紙のインクのノリを良くするや繊細なテクスチャーを表現する等の汎用性を向上させるためには鞣し工程は悪影響を及ぼすこともある

工程を減らす事はコスト削減、環境負荷を減らす事にも繋がる

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鹿皮活用を考える時に

誰にでも扱える汎用性ある素材にする

新しい鹿皮活用の獣道を作る

新しい生産システムで作るのではなく、既存の皮革産業と協力出来る方法

を考えた

どうすれば関わる人たちが無理なく楽しい関係性を築いていけるのか

一人ではわからない事ばかり、だから多くの専門家に話を聞きに行った、現場の声を聞きに行った

革として利用しやすく厚くて良好な皮は多くの先輩たちが取り組んでいる、僕らが薄くて傷のある見向きされにくい皮の役目役割を与えると決めた

全てが循環するシステム作り、鹿革作りと鹿皮紙のすみ分け

考えて行き着いた末に、僕らは鞣しを行わない鹿皮の羊皮紙「鹿皮紙」作りを始めた

革でなく「皮」を選んだ

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まだまだ答え合わせの途中

当初は誰も話を聞いてくれない事ばかりだったが、少しずつ話しを聞いてくれる人たちが増えてきて本当に嬉しく思います

2022/12/19

鹿皮紙プロジェクト代表 カワダ シュウジ


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