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インスタblog 「日本鹿と神使信仰」-鹿信仰の地、奈良へ-

鹿皮紙を造ると決めた時から、日本鹿とはどの様な存在なのか思考を巡らせている

猟中は必死に目の前の出来事を心に仕舞い続けていた。鹿皮紙を作り始めたことで、ゆっくり鹿と向き合える時間が増えたからだろう

いままで数百頭の鹿皮紙等に変えて、試作や実験を繰り返している。人の都合で未利用資源の活用という大義を掲げているが、どこか傲慢で不敬な気がしている

くすぶる葛藤を少しでも消化し理解するため、違う視点を与えてくれる場を求めていた

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奈良は古来より鹿と深く関わり、いまなお歴史と文化を色濃く残している

此処には春日大社があり、鹿を神の使いと定め大切にされている。神域には自由に暮らす稀有な存在の鹿が居り、僕らを迎えてくれる

山の鹿を見慣れている人は驚くだろう

神社仏閣を巡りながら、鹿に関わる物語を読む

暮らしとの隔たりなく共存している時代の言葉

人の都合と自然には境があった

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近年の鹿は「ジビエ」「農業・林業被害」「有害鳥獣駆除」の言葉と合わせネガティブに伝わる事が増えた。それは一側面の見方であり、鹿の在り方は十把一絡げにした事で見え難くなっている気がする

先人たちは違う理で生きる動植物に、超常的なチカラを宿すと考えた。故に鹿の形を与えたアメノカク(天迦久)と呼ぶ神話も生まれた。

鹿に「財運」「勝負運」「豊穣」「水難除け」の縁起を担ぐポジティブな価値観を日本人は生んだ

奈良以外の地域でも鹿にまつわる祭りや鹿踊りが伝播し、今なお130ヶ所近く執り行われている。祭り事は迫る畏怖の念を消化し、敬虔な心を育む作用がある

日本で生まれた文化をあらためて素晴らしいと思った

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鹿の生命を奪う限り、葛藤は誰かが背負わなくてはならないもの

いま猟師さんたちがその葛藤の大部分を背負い、一部僕の様に生きていた残像に葛藤しながらも続ける意味を探さなくてはならない

その葛藤を先人たちが祈りや願いに似た想いに昇華させ、未来にポジティブなイメージを作り僕らに残した

そして今では忘れかけているその祈りや願いを、未来に歩き続ける糧となるようにしていかなくてはと、現時点での仮の答えを導く

僕らがこれから作り続ける鹿皮紙が、その一端を担う存在になれるように

文字や絵を記す事は「誰かに想いを伝えるために存在している」

その文字をより豊かにより伝え易くするために、鹿はカタチを変えて存在出来ると確信している

過去から未来、いま立っている場所から地球の裏側まで伝えられるかもしれない

奈良を歩きながら、思考はより遠くへと駆けていく

2022/7/18

鹿皮紙プロジェクト代表 カワダ シュウジ


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