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『萌出障害 先天欠如,歯胚位置異常,萌出遅延,過剰歯,捻転歯 臨床対応 CASEBOOK』より―はじめに

『萌出障害 先天欠如,歯胚位置異常,萌出遅延,過剰歯,捻転歯 臨床対応 CASEBOOK』を9月1日に発刊します! 先行して「はじめに」をウェブ版として公開します.ぜひ,ご一読ください.(編集部)

月刊『日本歯科評論』2019年7月号に掲載した特集論文「パノラマエックス線写真を活用した小児の萌出障害への対応」が好評をいただき,本書を執筆する機会となったこの論文は,当院でパノラマエックス線写真を撮影した小児696人のデータを分析して執筆したものであったが,それから3年ほど経ち,パノラマエックス線写真を撮影した小児は1,000人を超え,まとまった数の症例を診る機会が得られたため,改めて分析し今回書籍としてまとめさせていただくこととした.

当院は矯正歯科でも小児歯科でもない一般歯科開業医であるが,小児患者を丁寧に診ることを続けていたら,小児患者が増えてきた.現在,新患の4割が小児患者である.
そのため,本書ではパノラマエックス線写真から萌出障害の頻度などを調べているが,矯正治療の相談など,歯列の改善を主訴に来院される患者も増えてきており,何か異常があるからエックス線撮影をする,というバイアスがかかっているため,「パノラマエックス線写真撮影をする」という時点で,萌出障害の発生頻度についてはやや多めに出てしまう可能性があることはご了解いただきたい.

萌出障害は2割弱の子どもたちに見られるため,日常的に多くの症例に遭遇する.その頻度から,本来もっと注目し,一般開業医でも対応すべきと考えている.そこで本書では,臨床で遭遇しやすい先天欠如,歯胚位置異常,萌出遅延,過剰歯,歯の捻転などの萌出障害を取り上げ,その頻度や起こりやすい部位ごとの診断,対応,処置などを解説している.

自院(分院も含む)で経験した症例のみを載せているが,小児歯科専門医ではないため,経験した症例には限りがある.その中で本書では,実際の症例からエックス線写真を含む臨床写真を数多く載せることに拘ってみた.萌出障害にはさまざまなパターンがあり,個別対応が必要な症例が多い.本書を代表的な萌出障害例へ対応した「症例集」としてお読みいただき,ご自身が対応中の類似の症例があれば,アイデア集として参考にしていただければ幸いである.

最後に,小児の患者で大切なのは,小学校低学年時に1度はパノラマエックス線写真を撮影することであると考えている.本書を手にした皆さんにも,子どもたちの萌出障害を早期に発見し,対応していただければと願っている.

2022年7月
河井 聡


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