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【書評】治癒に導くエンドの秘訣 ―難症例克服のための歯内療法ケースブック

月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2020年8月号掲載分の「HYORON Book Review」を全文公開いたします(編集部)

武市 収/日本大学歯学部 歯科保存学第Ⅱ講座 教授

■これは秀逸だ!

これは,本書を読み進めていくうちに私が抱いたファーストインプレッションだ.

難症例の対応には,高度な治療技術が必要とされる.それにもかかわらず,不用意に治療を行った結果,状況を悪化させてしまうことも少なくない.適切な治療を行うためには,その症例を的確に分析し,対処することが重要である.

本書では,難症例に対する診査・診断法を多角的に実践し,非常に難しい症例を客観的に捉えるための方法を紹介している.加えて,治癒へと導くためのストラテジーがわかりやすく書かれているため,掲載されている症例のみならず,さまざまな症例にこれらのアプローチ法が応用可能であろう.まさに,「一般歯科臨床を行う者であれば誰しも知りたい内容が満載」といっても過言ではない.

微に入り細に入り,深く掘り下げつつも,1症例に対する説明は4ページで完結しており,読み切るにはちょうど良い量であることも特筆すべきである.

■こんな本があっただろうか?

本書は4章で構成されており,「処置」「形態」「偶発症」「外科的対応」について紹介されている.すべての症例において,冒頭に「診断および処置のポイント」が書かれており,ここを読むだけで当該症例に対する治療が大筋でわかるようになっている.

次に,「症例の概要」では必要な診査法と得られた結果をどのように理解するかが書かれており,ここが重要なポイントとなる.難症例というハードルを下げるためのヒントが書かれているため,さまざまな症例に応用可能なテクニックを身に付けることが可能となる.

治療の経過は,時系列で数多くの口腔内写真やエックス線写真が提示されており,非常にわかりやすい.興味深いことに,特殊な器具を使用せずに治療を行ったケースが多数紹介されている.そのため,本書で学んだ知識は明日の臨床に即応用可能となるであろう.もちろん,歯科用コーンビームCT,手術用顕微鏡およびニッケルチタンファイルといった,最新歯内療法として知られる機器を使用した症例も多く,若手のみならずベテランの歯科医師であっても読みごたえ十分な本となっている.

■ここが素晴らしい

症例ごとに「My favorite materials & techniques」が紹介されている.すなわち,難症例へのアプローチ法に加えて,各著者が好んで使用している器具・材料やテクニックを知ることができ,自分の臨床の幅を大きく広げることができる.

本書の著者は歯内療法に精通した著名な先生ばかりである.普段なかなか聞くことができないことが,ここであっさりと紹介されていること自体驚きだ.いわゆる「本当は教えたくないエンドの肝」が紹介されているところに大きな魅力を感じた.

本書を読めば,臨床家が知りたい難症例への対応法が手に取るようにわかるため,まさに秀逸である.日常遭遇することが多い症例を取り上げているため,症例で困ったときには本書の中にその答えが見つかるであろう.是非,皆さんにお薦めしたい一冊である.


関連リンク
◆『治癒に導くエンドの秘訣 ―難症例克服のための歯内療法ケースブック』(阿部 修 興地隆史 木ノ本喜史 中田和彦 編著)
◆月刊『日本歯科評論』8月号
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