【書評】日本歯科評論 別冊2021『モノリシックで活かす!ジルコニア・レストレーションの現在』
月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2021年7月号掲載分の「HYORON Book Review」を全文公開いたします(編集部)
山﨑長郎/東京都渋谷区・原宿デンタルオフィス
■進化著しいジルコニア
修復・補綴治療におけるマテリアルやシステムの発展には目覚ましいものがある.その中でも,ジルコニアほど汎用性が高く,進化してきた材料はない.
それだけジルコニアの優位性は他の材料と比較して群を抜いて素晴らしく,そのうえCAD/CAMを併用することにより,さらにその地位を高めてきた.
それゆえ,デジタル・デンティストリーが発展・普及しつつある中で本書が上梓されたことはタイムリーであり,また必然であったかもしれない.
■わかりやすい構成と内容
さて,本書は非常にわかりやすい内容と構成で編まれており,読者にとって読みやすいことが大きな特徴となっている.同時に各章の著者に研究者と臨床医をうまく割り振り,絶妙な配置となっている.
最初に第1章「歯科用ジルコニアについて知る」では,基本的なジルコニアについての知識,すなわち医療用材料としての変遷や材料特性,そして,なぜ歯科の補綴装置にジルコニアを使用するのか,そのメリットとデメリットについてかみ砕いて解説されている.
第2章「ジルコニアの臨床を手がける前に」では,本書の中心であるモノリシックジルコニア補綴装置製作のデジタルワークフロー,また製作過程における重要なポイントとしての支台歯形成および印象採得の注意点,モノリシックジルコニア補綴装置の難点である接着の処理と方法を細かく説明している.
さらに,モノリシックジルコニアの補綴治療を成功させるための技工操作および特徴を歯科技工士サイドから解説している.
第3章「モノリシックジルコニアによる臨床例」では,さまざまな症例が提示されていて非常に興味深い.
前歯部のクラウンやラミネートベニア,臼歯部のクラウンとブリッジ,ロングスパンブリッジ,インプラントの上部構造,そしてメインテナンス等々,バラエティーに富んだ内容となっている.
臨床医にとっては,初診から最終補綴装置の装着,メインテナンスまでステップバイステップで網羅されおり,非常にわかりやすく読み進めることができる.
最後の第4章「CAD/CAMと口腔内スキャナーの最新情報」では,ジルコニア補綴装置の製作に必要な最新のデジタル機器であるCAD/CAMと口腔内スキャナーのホットな情報が提示されている.
この章は,これからの修復・補綴治療のメインロードになるものであり,読者はしっかりと把握していただきたい.
■修復・補綴治療の今後を指し示す
このように各章のつながりもしっかりしていて内容も知見もレベルが高い.読み方は読者の自由であるが,取り上げられているマテリアルもシステムも,前述のように修復・補綴治療の今後の進行方向を明示している.
最後に,本書は“モノリシックジルコニア”に絞ってフォーカスを当てていることが成功していると思う.ぜひ一読していただきたい本として推薦したい.
関連リンク
◆別冊2021『モノリシックで活かす!ジルコニア・レストレーションの現在』(宮﨑 隆・近藤尚知 編著)
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