4・1開業の方法についての提案

 私は2009年10月に、千葉県四街道市にて居抜き開業をしました。もともとチェア3台プラス院長室というレイアウトの医院で、1階が内科、2階が歯科で、今もそれは変わりません。なんと、その内装外装を全部そのままに「引き継ぐ」という形で、家賃を払えば良いという条件で入らせていただきました。そのため、設備投資が必要なく、さしあたりの運転資金だけをかくほしてスタートすることができました。つまり、この時点で金融機関からの借り入れがゼロで、リスクを最小限に抑えた開業をすることができました。これは、出口戦略を考える今、とても大きな意味を持ちます。

 ただし、そこまでは良かったのですが、開業後すぐに軌道に乗せることができませんでした。3年は厳しい状態だったと思います。開業する直前まで私が勤務していたのは、チェアが9台、オペ室1つ、歯科衛生士のメンテナンスチェアが3台あるという、大きな医院でした。ドクターも5人はいて、常時4人が出勤している状態でした。1日の来院数は、少ない日でも100人以上だったと思います。カルテの数もどんどん増えて行ったのを覚えています。真面目にやっていれば、自然とそのような規模になると考えていました。今思うと全く甘い考えです。

 真面目にやれば大丈夫だと思っていたので、開業当初は、ほとんど広告・宣伝を行わず、ただ医院を開いて待っているだけでした。2階というロケーションのせいで認知性も悪く、今考えてみると私が医院をやっているという事すら知られていなかったに違いありません。担当の税理士さんからは、「休みの日にバイトに行って収入を得たらどうか」という提案をもらいました。また、1階の内科スタッフを患者として呼ぶようにチラシを配るように言われたこともありました。確かにそれは、いっときの解決になるかもしれません。しかし、根本的な解決にはならない事は明らかなので、助言に従うことなく、何か軌道に乗せる方法は無いものかと考えていました。

同じような状況が2年半くらい経過したころ、このままでは本当にいけないと思い、経営系のセミナーに参加しました。そこで多くの事を学び、刺激を受けて、さらに自分で本もたくさん読み、やっとマーケティングというものをやりだしたのです。何も知らないで始めていたのが無謀だったとつくづく思います。

 最初に手をつけて、今でも継続している、そして最も効果の出せたことは、ホームページの作成、そしてそこからの集患でした。今でこそ医院がホームページを持つことは当たり前ですが、ほんの10年前まではまだ市内でもきちんとしたサイトを持っている医院さんは、医科も含めて少なく、一方では「そんなことにお金をかけるより、ひとりひとりの患者さんを地道に呼ぶしか無い」と言われたこともありますし、初期投資の必要なことなので、最初は躊躇しましたが、それでもとりあえずページだけは作りました。ところが最初のページを見た人に、「ぱっと見た感じでは、たぶんおじいちゃん先生あたりが診療しているように見える」と言われました。トップページに医院の外観を載せ、私を含めてスタッフの顔は一切掲載していなかったので、今考えると当然です。しかも、当時の歯科医院のホームページといったらだいたいがそんな感じだったので、私としても違和感がないままだったのです。「おじいちゃん先生」発言に衝撃を受け、そこからホームページを大改造しました。すると集患に成功して、そこからやっと私の開業医人生が始まったと言っても過言ではないくらいになりました。

 マーケティングに終わりはなく、今でもホームページは定期的に内容を更新し、ツイッターやブログを組み込み、You Tube動画も掲載したりして、生きたページになっています。スタッフの入れ替わりも多少はありますので、1年に1回は全員の顔写真を撮影しなおして、更新しています。写真はプロにお願いしているのでコストがかかりますが、ここにはこだわっています。ホームページに関する戦略の詳細は、とても重要なファクターなので、また後述していきたいと思います。

 ホームページ以外にやったこともあります。2階の医院なので視認性問題がありました。2階に歯科があることすら認識されず、1階が内科であることから、2階はリハビリか何かの施設?あるいは住居スペース?という声もありました。そこで、2階に歯科があるということだけでもアピールしなければと、外ににブラックボードを設置したり、パンフレットを置かせていただいたりしました。ホームページ効果と相まって、徐々に知られていくようになりました。

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