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煙を見捨てる


7本を吸い終えた。1日の満足度が高かった日に自分へのごほうびとして吸うようになっていた。公園で吸うのがスタンダードで、2本だけ近所のスタンド灰皿で吸った。深夜2時過ぎのこと。その時、急に吸い方が合ってるのか気になり、youtubeでタバコの吸い方の解説動画を見始めた。1本目で肺に煙を入れる感覚を掴み、ふかし吸いではない、正解の煙がたまに口から出るようになった。しかし2本目を吸い始めた直後、まさかの、招かれざる来客が登場。おっさんが平日の深夜にほっつき歩いてんじゃないよ。心のうちでそんな悪態をつきながら、おっさんに吸い慣れてないやつだと思われたら嫌だなとしょうもない自意識が働き、心を乱され、だんだん吸うペースがめちゃくちゃになり、しまいには終盤のシャトルランくらい狭いインターバルでタバコをくわえるようになっていた。これ以上ここにいたらむせてしまう。そしたらタバコの初心者だと思われる。どうせうまく煙を吐けない。無理だ。恥をかく前に退散しよう。内心の焦りを悟られないように冷静を装い、存在感をできるだけ消して夜の闇に溶け込むように帰った。僕が急いで吸ったせいで空気の容量をオーバーして溶け込めないまま浮遊している煙が置き去りにされたことに腹を立てて「おい!」と一言、それ以上は何も言わずに、ただその一言を僕に浴びせた。その日の僕はいじめに気づかないふりをするクラスメイトのように卑怯で卑屈でみっともない生き物だった。


小さい頃からお金をもらうことが好きでした