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8月9日、各所で「本が読めなくなった」と報告が相次いでいる。原因は今のところわかっていないーー。

そのネット記事を見て僕は1つ確信した。今、僕の身に起こってることは、きっと何かの感染症なんだ。僕はなんらかのウイルスに感染し、本が読めなくなっているのだと。まず、僕以外の人も本が読めなくなっていたという事態を初めて知り怖くなった。多くの人が急に本を読めなくなるなんてことは前例がないからだ。しかしその後、勝手な推測にすぎないが、ウイルスによるものだという、とりあえずの理由が生まれて胸をなでおろした。人間は意味や理由がないものには恐怖を感じる。だから無理矢理にでも理由を作って一時的な安心を得ようとする。人間は、そういう生き物だ。もしもこのネット記事がフェイクニュースだとしたら、単に僕1人が本を読めなくなったというだけの話で、それはそれで少し悲しい。本が読めなくなった仲間が2, 3人はいてほしい。すると記事のコメント欄に「本が読めなくなったのが私だけじゃなくて安心しました」という発言が載った。それから「私も」「僕も」と共感の声で記事の下のスペースはすぐさま埋め尽くされた。僕はタイミング的にあまりにもできすぎているなと思った。これは僕の夢なんじゃないだろうか。願ったことがすぐに叶うなんて都合のいいことが現実で起こるはずがない。試しに家の近くの宝くじ売り場に行きスクラッチを購入する。1等出てこいと祈りながら10円玉を滑らせると、そこにはなんと「1等」と書かれていた。思わず笑った。なぜなら本物のスクラッチには「1等」なんて文字が書かれているはずないからだ。


小さい頃からお金をもらうことが好きでした