自律神経と女性ホルモン
前回は、共に視床下部を司令塔とする自律神経とホルモンの関連性に触れつつ、女性の人生においてのホルモンの働きをざっくりまとめました。
女性は人生の中で生理・出産・更年期・閉経といった転機に女性ホルモン分泌が変動する為、男性に比べ自律神経のバランスも不安定になりやすいようです。
今回は、女性ホルモンに関連した生理学的仕組みに焦点を絞りまとめながら、更に自律神経との関連性を感じてみたいと思います。
はじめに。
女性ホルモンには2種類あります。
エストロゲンとプロゲステロンという名称が一般的に知られていますね。
ただ、これら女性ホルモンは段階的な指令を経て分泌されています。
視床下部から下垂体へ放出される
「卵巣に司令を出してよ〜」
と指令を出すホルモン
からの・・・
下垂体から卵巣へ放出される
「エストロゲンを分泌してよ〜」「プロゲステロンを分泌してよ〜」
と更に指令を出す2段階の指令を経て
ようやく卵巣から女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が分泌されるのです。
そして視床下部という場所は自律神経に左右される体温・血圧・心拍といった身体の恒常性を維持する機能の中枢です。
記憶を司る大脳辺縁系や情動を司る扁桃体とも密接な連絡を取り合っていますので、記憶・情動〜自律神経〜ホルモンが影響し合うことは無理もないようです。
【女性と関わりの深いホルモン 分泌場所一覧】
〜視床下部〜
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)=ゴナドトロピン放出ホルモン
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)
〜下垂体前葉〜
卵胞刺激ホルモン(FSH)=ゴナドトロピンのひとつ
黄体形成ホルモン(LH)=ゴナドトロピンのひとつ
乳腺刺激ホルモン(PRL)=プロラクチン(妊娠中は子宮内膜から分泌)
〜下垂体後葉〜
オキシトシン
〜卵巣〜
卵胞ホルモン=エストロゲン
黄体ホルモン=プロゲステロン
余談ですがホルモン名称について。
英語表記と日本語表記が入り混じり、また仕組みも段階的なところが複雑に感じられ、OT学生時代には『せめて呼び方まとめて💧』と思ったものです。
【女性と関わりの深いホルモン分泌 一連の流れ】
〜第二次性徴〜
①視床下部から下垂体に向けて、『性腺刺激ホルモン放出ホルモン』による「性腺刺激ホルモン出して〜」との指令が出る。
②下垂体から卵巣に向けて、『性腺刺激ホルモン』による「エストロゲン出して〜」との指令が出る。
③卵巣から分泌されたエストロゲンが血液により身体の各箇所に運搬され、乳房の発達・陰毛の生長・丸みを帯びた体つきへの変化・性器の発達が起こり、初経開始となる。
〜月経〜
①視床下部から下垂体に向けて、『性腺刺激ホルモン放出ホルモン』による「卵胞刺激ホルモン出して〜」との指令が出る。
②下垂体から卵巣に向けて、『卵胞刺激ホルモン』による「卵胞を成熟させてエストロゲン出して〜」との指令が出る。
③卵巣が原子卵胞を成熟させ、卵胞がエストロゲンを分泌する。
血中にエストロゲンが増加すると視床下部と下垂体へ『負のフィードバック』が伝わりLHーRHとFSH分泌が抑制される。
④エストロゲンが十分に分泌されると下垂体から卵巣に向けて『黄体形成ホルモン』による「排卵してよ〜」との指令が出る。
⑤卵巣にて成熟卵胞が破れ、排卵が起こる。
⑥妊娠が成立しなければ成熟した子宮内膜は剥がれ、体外へ排出される。
〜更年期〜
①月経時の①→②と指令が送られる。
②エストロゲンの減少により応答に滞りが生じる。
③「出たよ〜」の正のフィードバックが得られない視床下部は、更に月経時①の指令を出す。視床下部が過活動状態にて交感神経優位となりやすく、自律神経障害が起こる。
女性ホルモンに関連するホルモンの分泌経路を追ってみると、自律神経との関わり・更年期障害のメカニズムが分かりやすいですね。
更年期は、より自律神経を整えることを意識的に行うことで健やかさを保つことの出来る期間であり、その後の人生の健やかさにも影響を及ぼす大切な時期なのですね。
最後まで読んでいただき有難うございます。
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