ビール傘｜ショートショート

“天気予報です。明日は低気圧の影響で、西日本から徐々にビールが降り出すでしょう―――”

…え？

私は耳を疑った。

ビールが？…降るだと？

何を言っているんだ、この気象予報士は。

こんな言い間違いが有るだろうかと思っていたが、結局訂正が無いまま番組は終わった。

次の日―――。

「マジかよ…」

昼休み終わり、そろそろ会社に戻ろうかというタイミングで本当にビールが降り出してきた。

昨日の予報なんてまるっきり信じていなかったから、当然傘は持ってきていない。

これは困ったと雨宿り…いや、ビール宿りをしていると、後から出てきた老人に声を掛けられた。

「お兄さん、良かったら私のビール傘に入っていくかい？」

「ビール傘…なんですかそれは？」

聞くと、普通の傘を反り返らせたような形をしていて、そこにビールを溜めて帰って飲むらしい。

よく小学生が雨の日にやっているアレだ。

訳も分からず老人のビール傘に入ってやっと会社に戻ると、社内ではすでに、各々が溜めてきたビールを飲んで盛り上がっていた―――。

了（428文字）

たらはかに（田原にか）さんの【毎週ショートショートnote】のお題を元に書きました。

ビールが大好きなもので、こんな世界があったら良いなぁと思いながら書きました笑