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#1 2つのBA(ビジネスアーキテクトとビジネスアナリスト)

前回まで10回の連載を通して、IPAが主張する「ビジネスアーキテクト」の果たすべき役割と仕事の内容について解析してきました。
結果はご存知のように、その責任と役割の範囲が大きく、DX推進のためにその力を発揮するには相当の知見と経験が必要になるのは間違いありません。もちろん一人の人間がすべての役割を持つ必要はないので、複数の人がチームとしてビジネスアーキテクトの役割を果たすことも可能です。というか恐らくそのような形を考えないと難しいのではないかと、筆者は思います。習得は大変ですが、そこに何かうまい手がないのかと考えるのが人の常です。
さて、これからIPAの「DX推進スキル標準」で指定されているビジネスアーキテクトの仕事が、一般的に認知されている「ビジネスアーキテクチャ」や「ビジネスアナリシス」で規定されている仕事とどのように異なるのか、はたまたどの程度重なるのかを、具体的なビジネスシーンを想定しながら見て行きたいと思います。その前に大事な前提となることを確認しておきます。
まず、ざっくりとしたDX推進のプロセスを考えてみましょう。DXを推進しようと思い立つには、必ずそれなりの動機があるはずです。
いきなりですが実はこのスタート時点が、DX推進にとっては最大の難関だとご存知でしたでしょうか?この件については多くのDX関連の書籍でも述べられているので、「もちろんよく理解しているよ!」「業務改革や、ビジネス改革が伴わないといけないんだよね!」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。また「RPA、ローコード開発ツールなどの新しいITのアプリや、AI OCRなどの装置を導入して業務効率を上げることだよね!」と言われる方もいらっしゃるかもしれません。
もうお判りでしょうが、これらのどれもが本当の意味でのDXではありません。
「何言ってんの!これをDXと言わずに何をDXというの?」と怒髪天を衝いて怒り狂うかたもいらっしゃるかもしれません。では簡単に解説してみましょう。
■真のDX推進とは
DXはご承知のように、デジタル・トランスフォーメーションのことです。このデジタルとトランスフォーメーションのあいだにある「中黒」が重要です。何を言っているかと言うと、DXにはDとXの2つの要素があると言うことです。つまりどちらかが欠けると、それはもはやDXではなくなることになります。
DXでいう「デジタル」はIoTやPRAなどのデジタル機器やクラウドサーバーや管理システムなどのハードウェアと、アプリケーションプラットフォーム、アプリケーション、IT開発環境などのソフトウェアがあります。これらの技術は日進月歩で進歩しており、それらがトランスフォーメーション(変革)に影響を与える場合もあります。分かりやすい例で言うと、スマホの出現が個人の社会生活だけでなく、企業のビジネスモデルを大きく変えたのがいい例かと思います。
また「トランスフォーメーション(変革)」はイノベーションの実行を指します。イノベーションは、新しいアイデア、方法、プロセス、製品、サービスなどを創造する活動をし、これによって新たな価値を生み出す行為やプロセスを実行することです。当然、そのために必要ならば組織や体制の変革を伴うこともあります。
別の見方をすると、組織の能力(Capabilities)顧客等に対する価値創造の流れ(Value Streams)情報アイテム(Information)体制(Organizations)という企業的に性的な重要要素であるビジネスのカテゴリに、変化を生じさせるような改革のことをイノベーションと呼ぶと筆者は考えています。他に「理念」「ルール」「戦略」など変化を前提とするビジネスのカテゴリの変化は、イノベーションとはなり得ないと言うことです。
DX推進の前提となる事項は以上通りですが、この件は非常に重要かつ分かりにくいので、折にふれて言及することになります。
次回は「DX推進」の最初のプロセスである「動機」の形成についての様々な問題について考えを進めて行くことにします。

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