見出し画像

HYOTA「家族と一年誌『家族』2号」【烽火書房で取り扱いする本】

京都市にあるBut not for me内に間借りで運営している本屋・烽火書房で取り扱っている本を紹介していきます。

HYOTA「家族と一年誌『家族』2号」。

一年かけてひとつの家族を追いかけて、一冊にまとめあげる雑誌。取材対象者だけでなく、取材する側もひとつの家族が行なっており、「家族が家族に出会う」がコンセプトになっている。2号は、蒸留所「mitosaya」の家族の一年を追いかけた一冊。


mitosayaという名前は、蒸留所を営む家族のお子さんふたりの名前を合わせたものだ。そして家族は蒸留所のそばで暮らしている。つまり、mitosayaという蒸留所の歴史はそのまま家族の歴史であり、mitosayaの営みはそのまま家族の営みである。

ということは、この「家族」という本は、家族の歴史を記述する「私史」の側面と、会社の歴史を記述する「社史」の側面を持っていることになる。そして、そのふたつが渾然一体となって語りかけてくるのである。家族のことを描くことがこの蒸留所の魅力を描くことになり、蒸留所のことを描くことがこの家族の魅力を描くことになる。だからか本書を通じて僕たちは、思っている以上にこの家族のことを親しく感じるようになるし、この蒸留所のことを好きになるのかもしれない。

そして、ここで語られてることはなにも他人事ではなく、働き方とか生き方とか暮らし方とか、そういった誰にでも身近な事柄をじっくりと考える機会を与えてくれる。

優れた切り口で編集された本書だが、写真の魅力にも言及したい。蒸留所のかっこいい設備の写真が載っているかと思えば、ちょこちょこと走るお子さんの写真が登場する。洗濯物が干されている庭の写真があるかと思えば、美味しそうでおしゃれなお茶やクッキーの写真が載っていたりする。この本が、暮らしの本であると同時に蒸留所の営みの本でもあり、そして家族の本であることを様々な角度から切り取ってくれている。