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コラム|ドット絵からPixelArtへ

誕生から淘汰、そしてリバイバル

ここまで授業で扱ったドット絵は
1980年代に現れたテレビゲームやパソコンなど
初期のデジタルカルチャーの中で生まれた技法です。

まだまだコンピューターの容量や描画力が低かった時代で
データ量の制限から色数や解像度を抑えて表現されたイメージは
結果的にピクセルが大きく目立つため
「ドット絵」と呼ばれるようになりました。

ドット絵の主戦場であったゲーム界隈には
さまざまな才能を持ったクリエイターが参入し
制限された情報量の中で、如何にキャラクターや世界観を表現するか
多くの技法や手法が試みられ、いくつもの名作が生まれました。

その後、時代の流れと共に
コンピューターの容量や描画力などハードウェアが向上し
コンテンツの中身も高解像度なイラストや、映画のようなアニメーション
リアルタイムに描画される3DCGなど、新しい技術によって更新され
ドット絵と呼ばれる表現形式は、徐々に市場から姿を消していきます。

ところが2010年代の中頃に80年代のリバイバルブームが起こります。
その中でドット絵も様々なシーンで取り扱われ
ふたたび、一般に広く認知されるようになりました。

・ビデオゲーム「パックマン」MoMAに収蔵(2013)
・映画「ピクセル(原題:Pixels)」公開(2015)
・「あそぶ!ゲーム展」SKIPシティ映像ミュージアム(2015)
・ドコモの絵文字MoMAに収蔵(2016)


インディーズゲームという布石

一方、このリバイバルブームの前夜の話
Steram(2002〜)やAppStore(2008〜)、GooglePlay(2012〜)など
個人でゲームを販売できる市場、プラットフォームが整い
インディーズゲームがジャンルとして活発化していました。

このゲーム愛好家のコミュニティには
技術的な制限を超えて、新しくひとつの世界観として
(あるいは自分が過去に体験した作品へのオマージュとして)
ドット絵を表現に持ち込む作家や作品も出てきていました。

・「スキタイのムスメ」(App版/2012)
・「Undertale」(Steam版/2015)
・「OCTOPATH TRAVELER 」(Swich版/2018)
・「The Last Night」(開発中)

SNS時代のドット絵

現在ドット絵は海外で定着していた「pixelart」という名称で
再認知されつつあり、ツイッターやタンブラー、インスタグラムなどで
#pixelartと検索すると 、国内外さまざまな作品を見ることができます。

またインターネットの外でも、国内で2つの大きなイベントが立ち上がり
2019年にはグラフィック社から
国内外のピクセルアートアーティスト約50組の作品を集めた
「ピクセル百景:現代ピクセルアートの世界」が出版されました。

・PIXEL ART PARK(2015〜)
・SHIBUYA PIXEL ART(2017〜)
・ピクセル百景:現代ピクセルアートの世界(2019)

デジタル表現の黎明期に、技術的な必然で生まれたドット絵は、
テクノロジーの発展の過程で一度淘汰されましたが
新たなテクノロジーと結びつくことで、その機能性から開放され
ひとつの表現領域として、自由で多様な広がりを見せています。