コラム|After Effectsの源流
AfterEffects(以下AE)の大きな機能として
コンポジット(画面合成)の話をしました。
→Adobe After Effectsについて
次の画像は実際のAEの操作画面です。
下半分がタイムラインといって
時間軸にそって素材を管理するウインドウなのですが
素材が下に向かって、多層構造になっていることがわかります。
AEの操作画面。タイムラインに素材がレイヤー(層)状に並んでいる
動かす要素が多くなるとレイヤーは100以上になることも
このような多層構造で画像を合成する装置は
実はデジタル以前の、アナログ時代にも存在していました。
特にアニメーションの世界で活躍した
マルチプレーンカメラ、あるいは線画台と呼ばれる撮影装置です。
リンク先のGigazine.netの記事に詳しく書かれていますが
この複数枚のガラス板を重ねて、カメラで撮影する装置は
AEでおこなわれている画面合成の仕組みと同じように見えます。
というよりも
マルチプレーンカメラを
デジタル的に再現しているのがAfterEffects
なんですね。
Gigazine.netの記事は、ディズニーアニメの動画を解説しているため
平面的なセルアニメーションを扱っていますが
マルチプレーンカメラでは、布や小物を置いて撮影したり、
複雑な照明を使った演出も可能です。
主に個人作家が制作する実験的な短編アニメーションの世界では
マルチプレーンを駆使した、さまざまな手法が模索されました。
最後に、この多層構造を使った短編作品を3つ紹介したいと思います。
"霧につつまれたハリネズミ" by Yuri B. Norstein
1975年に作られたユーリイ・ノルシュテインの名作。切り紙を使ったアニメーション。全体を覆う霧は、非常に細かい紙片をマルチプレーンカメラの舞台上に置いた上で、繊細なライティングを施し表現している。現在でも非常に高い人気があり、ミニシアターなどで度々上映されている
"花と嫁" by 川口恵里
東京藝術大学大学院映像研究科 アニメーション専攻 1年次作品(2012)
マルチプレーンにデジタル一眼を用いて撮影した作品。カメラの被写体深度(ボケ)を極端につけることでダイナミックな絵作りに成功している。
またGEIDAI ANIMATIONチャンネルは、芸大大学院で作られた様々な実験的なアニメーションを見ることができる。大学で自分と向き合いながら制作した作品群は、自分の卒業制作に向けて、作品を考える上でも参考になるはず
”ホリデイ" by ひらのりょう
カメラで撮影しているように見えるが実はAEの3Dレイヤーで合成している。作画、実写、キーフレームアニメと複数の技術がひとつの画面に違和感なく共存しており、多様な素材を均質に扱えるというデジタルの特性が発揮された作品といえる
まとめ
ここではAEというソフトウェアの概要を
感覚的に掴んでもらえるように
その背景にあるマルチプレーンカメラという装置を紹介しました。
またマルチプレーンカメラに関連して
多層構造を持った作品も3つ紹介しました。