9月入学への対案(チームティーチングの導入)

人間は休んでいる時に差がつくので、他の人が飲み会やイベントに行っている間に、働いた方が成功すると20,30代は考えていました。今もその考えはそれほど変わりません。もう少し柔軟にはなりましたが、努力に勝るものなしです。

さて。コロナ禍で学校が休校や分散登校になり、学力格差の拡大が課題・話題になりつつあります。休みが多くなれば、差はつきます。人が休んでいる時に努力する人が必ずいるからです。

学力格差の拡大を防ぐ方法はシンプルです。学校の休みを少なくすることです。土曜授業、夏休み短縮、7時間授業などが具体的な打ち手です。

多少考え方が柔軟になった私が思うのは、飲み会とかイベントとかにも、価値があります。本当に価値ある情報は密室で交換されますし、人とのつながりは公私ともに人間には欠かせませんし、孤独が紛れたり、承認欲求や自己顕示欲が満たされたりすることも人間の活力には必要で、それを否定できるほどの強さを備えた人間が果たしてどれくらいいるでしょうか。

何が言いたいのかというと、子どもたちにとっての飲み会やイベントのようなものの代わりに、土曜授業、夏休み短縮、7時間授業で埋め尽くされた生活に、いったいどれくらいの子どもたちが実際に耐えられるのかということです。耐えられない子どもたちも、少なくないでしょう。であれば、詰込みアプローチでは学力格差は埋まらないのではないでしょうか。(より長い時間学校に滞在することになる詰込みアプローチは、新型コロナウイルスの第2波、第3波により、途中で遮られる可能性も否定できません。)

別のアプローチの方が効果的かもしれません。例えば、クラスサイズの縮小です。40人学級を25~30人学級にする。学級数が増えることに伴う教室の増加に対応が難しければ、教員を増やしてチームティーチングを導入するのもオススメです。いずれにしても、学びの質を高めるアプローチを提案したいです。

大学の事例ではありますが、私が勤務する大学では、今年度から1年次にチームティーチングを導入しました。私もそのプログラムの一員で、例えば担当している「社会の課題を解決する力(社会の探究D)」という授業では、2人の教員と4人のチューターが協力して92人の1年生を教えています。他にもチームティーチングを取り入れた1年生向けの授業を今年度30科目以上開講します。既存の教室を使うという制約条件の中で、教育の質を高める方法として、チームティーチングは効果的な方法の1つです。

今月、9月入学への変更コストが文部科学省により試算されました。追加費用は約4兆円です。それだけのコストを払えるのであれば、同程度の予算で、チームティーチングを今後2~3年間、全国の小中高大で実施することが可能です。(イメージ:教員1人あたり年間400万円×3年間で延べ100万人雇用可能)

学習の量の確保ではなく、学習の質の向上でコロナ禍を乗り越えませんか?ひょっとしたら、これがきっかけとなり、コロナ収束後も教育の質を下げずにいられるかもしれません。そうなったら、素敵なことだと思いませんか?


2020.5.24追記 以下は補足です。

-コロナ禍が起きる前から学力格差は存在
-高校で7割、中学校で5割、小学校で3割が勉強について行けていないと言われる
-そもそも授業が分からない=「非生産的な時間」が存在
-その状態で土曜授業、夏休み短縮、7時間授業を実施しても効果は限定的。むしろ学力格差が拡大の懸念も
-先決なのは「非生産的な時間」を「生産的な時間」に変えること
-そのためには、クラスサイズの縮小やチームティーチング(による習熟度別の教育・学習)が効果的

ST比を改善し、(習熟度別の教育・学習を含めて)教育の質を高めて、土曜日・夏休み・7時間目以降は従来通りに過ごすことを目指す、というのが私の対案です。それが最も現実的な学力格差防止策だと考えるからです。コロナ禍をきっかけに、ワークしていない学びの時間をワークさせる機会にし、後世に胸を張れたらよいなと思います。

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