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プレゼン用スライドについて

年が明けると、学士、修士、博士の学位論文の提出と学位発表会のラッシュです。そこで、学生さんのプレゼンを見ていて、スライドについて気になったことを書いてみます。

まずは、ダメなスライドの例を挙げます。

(図はHanano et al., 2006より)

このように、論文の図をコピペしただけの図はいただけません。

(1)タイトルから「植物ホルモンの影響を調べたんだなぁ〜」ということは想像がつくものの、結論がわからない。
(2)A, B, C…については、きちんと説明した方がよい。B、Dについては全く意味不明である。

というわけで、少し手を入れてみます。

(1)タイトルに結論を書くだけで、何を言いたいのかが明確になります。
例えば、スライドのタイトルが「XX遺伝子の発現解析」や「RT-PCRの結果」などになっていると、聴いている方は、発表者の意図を探さないといけないのでストレスが溜まります。一方、タイトルに「〇〇でXX遺伝子が誘導される」と書いてあると、発表者の意図がすんなりと入ってくるというわけです。

極端な言い方をすると、「タイトルで騙して欲しい」ということである。

(2)論文ではA, B, C…と書かれていることが多いが、プレゼン用スライドでは、内容を説明してほしいというのも大きな点です。例えば、図の例ではサイトカイニン、オーキシン、ブラシノステロイド、ABAによって、概日リズムの位相、精密さ、周期の長さなどが制御されていると言いたいので、ホルモンの名前を記入しておくのがよいでしょう。元の図のB、Dではそれぞれリズムの位相や精密さの違いを統計的データとして示しているのですが、それらは実際の波形をポインターで示すか、あるいは別のスライドを用意して説明した方がよいでしょう。

他にもフォントのサイズやカラーを使う等、たくさん改良すべき点はありますが、例のように少し手を加えるだけでも、聴き手の印象はだいぶ変わるので、学位論文の図を安易にコピペして発表するのはやめましょう。

ついでに、よくあるわかりにくいプレゼンテーションについて書いておくと、
イントロ→目的→方法→結果→ディスカッション
と論文の順序通りに発表するパターンである。

複数の実験データを発表する場合、それぞれの結果の前に方法を説明してほしい。「実験①は〇〇の方法で、実験②は△△の方法、実験③は××の方法で行いました。実験①では、〇〇という結果が得られました。このことから〇〇ことがわかりました…」と数枚のスライドを見せられた後で、「実験②では…」と発表されても、もはや聴衆には実験②や③の方法は記憶に残っていないのである。

一つ一つの実験データについて、目的と方法を明らかにしてデータを示し、それから得られた結論を議論して、議論から得られた疑問を明らかにする目的で次の実験方法を示して次のデータを発表する、それを連続させてストーリーを完成させて欲しいわけです。

例えば、
イントロ→(目的①→方法①→結果①→ディスカッション①)→(目的②→方法②→結果②→ディスカッション②)→(目的③→方法③→結果③→ディスカッション③)→総合討論
という具合にスライドを作成して発表して欲しいと思います。

またイントロについて、generalな導入からスタートする例が多いが、学位発表会や学会では「私は〇〇に興味があってこの仕事をしています」「私は〇〇という問題に取り組んでいます」「私は、今日は〇〇について話します」と、generalな導入の前に目的やサマリーを話してスタートした方が、聴き手は発表者の意図を想像しながら聴けるのでオススメです。

学位論文の執筆に時間がかかるので、プレゼンの準備にあまり時間を割けず難しいかもしれませんが、頑張ってください。

Good Luck!



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