何故なら誰も責任を取れないほどの被害がでるかもしれないからだ。
『東京は宣言すべきタイミングから1週間以上遅れてしまいました。この差は大きいです。そして、この緊急事態宣言に効果があるかどうかは疑問です。それは先日話題になったグーグルの位置情報を基にした人の移動データを見れば明らかで、東京は「自粛」といってもほとんど効果がありませんでした。欧米ほど在宅勤務は増えていないし、飲食店には依然として人が集まっています。これまで日本政府はパニックを抑えるために「今までと変わりはない」ということを強調していたのでしょうが、それは逆効果だったと思います。日本の現状は手遅れに近い。日本政府は都市封鎖(ロックダウン)は不要と言っていますが、それで「80%の接触減」は不可能です。死者も増えるでしょう。対策を強化しなければ、日本で数十万人の死者が出る可能性もあります。~日本は法的に強制的な外出禁止にはできませんが、ロックダウン中の英国も同様に外出禁止を強制することは困難です。罰則といってもそれほど大したことはなく、騒いでいる人がいたら警官が注意をする、それでもひどかったら30ポンドの罰金です。その程度なんです。それでも人々は外に出てはいけないと認識していて、それを守っている。なぜか。みんな危機感を共有しているからです。重要なのは「社会的隔離をいかに効果的にやるか」ということです。ロックダウンは経済・社会に大きな影響を与えるものです。そういうことを考えて、ロックダウン的な手法を取ることが難しかったのだと思います。欧米の例では、最初は社会的隔離をやったが、結局うまくいかずロックダウンせざるを得ないというケースが多いです。~既に大都市でのクラスター対策は破綻しています。これまでPCR検査数を抑制し、クラスター対策のみを続けていましたので、市中感染を見逃してしまい、院内感染につながってしまっています。今まさに院内感染から医療崩壊が起き始めています。国は検査数を増やせば感染者が外来に殺到して医療崩壊が起こると言っていました。しかし、ここまでの流れは全くの逆です。検査をしなかったから、市中感染を見逃して、院内感染を招いているのです。そもそも、クラスター対策の中で出てきた「3密(密閉・密集・密接)」を避けるべきという指針についても、これだけに固執するのは危険です。3密は一つの仮説です。クラスター対策の限界を認め、方針を転換しない限り、感染拡大は止まりません。~しかし、東京のような大都市ではそれは非常に困難です。「3密」だけではなくドアノブや荷物など、何が経路となって感染が拡大しているか分からないこともあります。韓国や台湾、シンガポールでは、検査をどんどん実施し、アプリを使って感染者とその周辺の人々を追跡しています。一方で、日本では検査数は増やさず、保健所からのファクスのやりとりで、コンタクトトレースも前時代的な手法です。疫学の手法が昔ながらのやり方、つまり人海戦術が基本になっています。世界で「3密」と言っている国はありません。もちろんその条件がそろうと感染のリスクが高いというのは正しいと思います。ただそれ以外にも感染の可能性があることは考える必要があります。海外では、基本は社会的隔離で全ての感染経路の可能性を含めたメッセージを継続しています。「若者クラスター」「夜のクラスター」「3密」などという事象にばかりフォーカスする日本のメッセージは、その妥当性に懸念が残ります。~定義はいろいろありますが、二つのことがいえます。一つは患者の急増で医療のキャパシティーを超えることです。検査反対派は検査をすることで患者が病院に殺到することを懸念していました。今後は検査をするかどうかを議論する前に、感染者が急激に増えて軽症も含めた患者が殺到し、重症患者を救えなくなるでしょう。もう一つは、院内感染などで医療提供側が医療を行えなくなることです。院内感染で病院が閉鎖されると、救急も閉鎖され、新型コロナウイルス感染症以外での死亡者数が増えていきます。実際には、後者の医療崩壊が多発していくでしょう。今、医療の現場からは悲鳴が上がっています。これは検査をしてこなかったことの弊害です。~結局、社会的隔離やロックダウンを繰り返しながら、「検査と隔離」を徹底して、感染拡大を抑えるしか方法はないのです。ワクチンができるまで、かなりの時間がかかります。もうそれ以外に方法はないのです。日本では「検査と隔離」を徹底せずに感染が爆発的に増加して、医療と社会が崩壊する危機的な状況です。緊急事態宣言の対象外の地域でも、対岸の火事と考えていてはいけません。交通を遮断しないということは人の移動が可能で、人の移動とともにウイルスは広がります。ロックダウンしないということは、それはもう、どこに行ってもいいというメッセージです。人とウイルスの動きを止めることは非常に難しい。それを想定して対策を立てるべきです。もちろん、医療と社会の崩壊を目の当たりにして、ロックダウンに踏み切ったら経済はより甚大な被害を被ります。それでも多くの国ではロックダウンをやっています。それは、ロックダウンを後にすればするほど、被害は甚大になることが分かっているからです。だから、早期のタイミングでやると決意したわけです。~先ほど言いましたように、日本の緊急事態宣言では、自粛ベースであまり効果はないでしょう。いずれロックダウン的な施策をせざるを得なくなります。その際には休業補償などもしっかりとやらなければなりません。ロックダウンはやるかやらないかではなく、やるしかないということです。本来であれば4月初めにロックダウンすべきでした。今からやっても遅過ぎますが、やるしかない段階です。スウェーデンなどの一部の国はロックダウンせずにうまくやっていると評価するメディアがありますが、欧州はもともと在宅勤務がすごく進んでいます。ロックダウンしなくても家にいるわけです。日本はどうでしょうか。あれだけ自粛しろと言われていても、在宅勤務は9%しか増えていないといわれています。欧米各国とは働き方などが比較になりません。日本はクラスター対策にこだわってしまいました。水際対策とクラスター対策で国内まん延を防ぐことができるという考えがその根本にあったのでしょう。しかし、市中感染と院内感染がこれだけ広がってしまえば、水際対策をやっていてもほとんど意味はありません。空港でPCR検査を大量にやっていますが、リソースの無駄です。市中にどれだけ感染者がいるか、院内感染をどうやって防ぐかが今は最も重要です。このパンデミック(世界的流行)はすぐには終わりません。数週間、数カ月間で終わるはずはなく、終息には年単位の時間が必要でしょう。人々はウイルスと共生する新しい生活に慣れていくしかありません。まずやることは三つです。一つ目は政府の指揮系統をはっきりとさせる。今は官邸や危機管理室、専門家会合、厚生労働省などバラバラです。二つ目は、検査数をしっかりと増やす。三つ目は医療従事者への防護服の配布を徹底して、彼らを守ること。医療が崩壊したら日本社会は持たない。』
この渋谷さんの指摘は妥当だと思う。日本の政治判断が誤っていた事になるだろう。ある意味では「責任を取ればよいと言うものではありません」と言った今の日本の首相の言葉は的を得ているのかもしれない。何故なら誰も責任を取れないほどの被害がでるかもしれないからだ。
「東京は手遅れに近い、検査抑制の限界を認めよ」WHO事務局長側近の医師が警鐘
渋谷健司 英国キングス・カレッジ・ロンドン教授、WHO事務局長上級顧問インタビュー
ダイヤモンド編集部 片田江康男:記者
https://diamond.jp/articles/-/234205
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