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中国隔離日記

Twitterの中から中国での隔離に関するつぶやきをまとめました。

2021年09月20日(月) 出発まで2日

今日はPCR検査と抗体検査を受けてきました。予想通りの結果で良かったです。その後、血眼になって健康コードの申請をしました。健康コードが無事に緑色になってくれるのを願うばかりです。

2021年09月22日(水) 出発当日

昨日のうちに成田へ移動するつもりでしたが、申請しておいた健康コードが家を出る直前に赤色になり大パニック。しかも中国大使館は中秋節で休み。中国在住の研究者のアドバイスを受けながら、なんとか複数の証明書を再アップロード。昨晩になって健康コードが緑になってようやく一安心。

無事にチェックインできて、搭乗口までたどり着きました。人が少ないので流れはスムーズです。成田空港はほとんどの店が閉まっていて、本当に寂しいです。行ってきます。

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無事に青島に到着して、隔離ホテルに入りました。かなり予習はしていたので、トラブルはほとんどありませんでしたが、基本的に緊張の連続でした。今回の移動で、中国のコロナ対策の本気度を肌身で感じました。これから長い隔離期間が始まります。

2021年09月23日(木) 隔離1日目

とりあえず1サイクルを経験しただけですが、隔離生活では明確なリズムや目標が必要であることがわかってきた程度です。ただし、離日前の準備と昨日の移動で頭が疲れ切っていて、まだそれらを実行する気力が湧きません。通常の生活のリズムは、物理的な移動によってもたらされるのですね。

2021年09月24日(金) 隔離2日目

動物としての人間の基本的行為は寝て起きて、食べて排泄することである、ということを強く認識させられています。私の場合、これまでの日常生活で、意識の大部分が基本的行為以外のことで占有されていましたが、実はそれらは些末なことなのかもしれない、などと変なことを考えています。

2021年09月25日(土) 隔離3日目

午前中に最初のPCR検査がありました。鼻と口の両方。この一週間で3回PCR検査を受けました。それ以外では、毎日午前と午後にWeChatで体温の報告をします。

隔離期間中の大きな課題は、毎日の生活の中でいかにして意識的に運動を取り入れるかです。手始めに、およそ40年ぶりに動画を見ながらラジオ体操(第一と第二)をやってみることにしました。最初は甘く見ていましたが、今の私には思っていたよりハードな運動であることに驚かされました。

2021年09月26日(日) 隔離4日目


2021年09月27日(月) 隔離5日目

ここ数日の出来事は後日書きます。

2021年09月28日(火) 隔離6日目

この一週間でPCR検査を5回受けました(9月20、22、25、26,27日)。幸い全て陰性で切り抜けています。体調も問題ありません。明日も7日目のPCR検査と抗体検査が予定されています。これだけ検査がある理由は、全てが落ち着いてから書きたいと思います。頑張れ、自分。

隔離中は孤独ですが、有り難いことに、今日は外部からの支援がありました。自分ではまだ国内のネットショッピングが使えないので、同僚が気を利かせて必要な物資を送ってくれることになりました。今日は早速ヨガマットが届いたので、少し汗ばむ程度に運動することができました。谢谢你。

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2021年09月29日(水) 隔離7日目

今日もPCR検査と抗体検査があり(綿棒で止血!)、後者は先週通りの結果でした。そのため、ワクチン接種証明書を提出しました。まだ先は長いし、決して安心はできませんが、少し気持ちにゆとりが生まれてきました。体調も問題ありません。さらに同僚から有り難い物資の支援がありました。

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2021年09月30日(木) 隔離8日目

現在、私が滞在しているのは「マングローブ ツリー リゾート ワールド 青島」という、最も恵まれた隔離ホテルの一つです。予め隔離ホテルが決まっているという理由でANA便を選びました。これまでなかなか景色を楽しむ心境になれませんでしたが、昨日ようやく昼と夜の眺めを撮りました。

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本日をもって東京都立大学を退職しました。在職中には東京都立大学が閉学し、首都大学東京が誕生し、さらに東京都立大学に改称されました。長い間、大変お世話になりました。私のこれらの大学での経験はほぼ全てホームページにまとめてあります。www.comp.tmu.ac.jp/shigekomura/

2021年10月01日(金) 隔離9日目

本来私は青島での2週間の強制隔離の後、温州に移動してさらに1週間の隔離が必要なのですが、事情により3週間続けて青島に滞在することを希望していました。昨日、青島の防疫センターからその許可が下りて、ほっとしているところです。10月13日の温州行きの飛行機を予約しました。

今日の昼食と夕食。一週間で繰り返されている感じ。

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隔離期間中は海外からも励ましのメッセージをいただいています。ありがたいことです。その中の一つに「昔は40日だったからなんとかなるよ」というのがありました。

2021年10月02日(土) 隔離10日目

青島での隔離生活もようやく(まだ)折返し点です。人によって違うでしょうが、私にとって一番の課題は隔離期間中のメンタルの維持です。何かに集中できることと明確な目標が必要です。ここまではZoomと論文執筆で何とか乗り切っています。後半もこのペースを維持できればと思います。

2021年10月03日(日) 隔離11日目

音楽の力は偉大なり。 Eliane Eliasと Chucho ValdésのピアノデュオによるCorazón Partío。午後にこの演奏を初めて聴いて、隔離生活の鬱陶しさをしばらく忘れることができました。思いっきり感情を揺さぶられて、マジで涙が出そうでした。

2021年10月04日(月) 隔離12日目

午前中にPCR検査。最初の強制隔離期間は14日なので、自宅のある人は一旦、現在のホテルを離れてそれぞれの場所に移動します。そのため、明日(13日目)にも検査が予定されています。絶対にコロナの侵入を許さない方針です。そろそろ目的地の健康コードの取得法を理解しなければ。

2021年10月05日(火) 隔離13日目

2013 International Soft Matter Conferenceはローマ・ラ・サピエンツァ大学で開催されました。ポスターセッションは建物の廊下を利用して行われたのですが、自分のポスターボードの向かい側の部屋を何気なく見て驚愕した記憶があります。

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今日はPCR検査と抗体検査がありました。PCR検査は左右の鼻、喉、唾液の4種類を採取するという徹底ぶりです。何も連絡がないので、昨日のPCR検査は陰性だったはずです。

2021年10月06日(水) 隔離14日目

本日の12時をもって、集中隔离期間が終わりました。昨日のPCR検査も陰性だったのでしょう。引き続き、一週間の居家隔离期間が始まりますが、自宅がない私は同じホテルに留まることにしました。それには、職場から青島西海岸新区防疫センターへ延泊申請をしてもらう必要がありました。

私は9月26日の隔離4日目のツイートで何も書けませんでした。その理由は、22日の同じ飛行機の乗客の中から感染者が発生したという情報が報道された日だったからです。その時に経験した恐怖心は今でもなかなか払拭できません。その後、乗客全員に対する怒涛の検査が始まりました。

今日はシャワーを浴びながら、ふと安部公房の「砂の女」に出てくる仁木順平のことを思い出しました。女が搬送されたあと、外に出るための縄梯子がそのままになっていたにも関わらず、彼は脱走しませんでした。私も一週間後にまだこのホテルに留まりたいと思うのかもしれません。怖っ!

2021年10月07日(木) 隔離15日目

これだけ長い隔離期間でもなんとか平常心を保っている(と自分では思っている)のは、(1) 明確な終了日があり、(2) Zoomで多くの人と頻繁に会話をしているから、と分析しています。特に(2)は強力で、私という存在はあくまでも他者との関係の中で成立していることを改めて認識しました。

中国行きを意識するようになってから細々と中国語の勉強をしてきましたが、当初目指していたレベルには程遠い状況です。努力が足りないと言えばそれまでですが、この歳になるとなかなか定着しません。最大の難関は発音で、これについては中国系YouTuberの動画が参考になっています。

2021年10月08日(金) 隔離16日目

午前中に(予定されていた)PCR検査がありました。今日は同じホテル内で200人が検査を受けているそうです。こちらでのPCR検査は全て無料で行われています。渡航前に日本で受けた検査はかなり高額でした。検査自体よりも、検査証明書の発行に費用がかかっているのかもしれません。

2021年10月09日(土) 隔離17日目

理想的な生活(号泣)
 7時 起床・ラジオ体操
 8時 朝食・検温
 9時 中国語
10時 仕事
12時 昼食
13時 仕事・検温
15時 打合せ
17時 ラジオ体操・トレーニング
18時 夕食
19時 家族・仕事
20時 シャワー・洗濯
21時 SNS
22時 だらだら
23時 就寝

昨日から今日にかけて、中国国内で必要な健康コードと格闘しました。私の場合の最大の難関は、中国での携帯電話番号がまだないことです。その点はeSenderで対応。その後、幾多の難関を乗り越えて、最終的に山東省と浙江省のグリーン健康コードを取得しました。

2021年10月10日(日) 隔離18日目

隔離期間中に最も神経を使うのは体調の管理ですが、それと共に制御が難しいのが十分な睡眠時間の確保です。肉体的な疲労が少ないため、真夜中に起きてしまう可能性があり、そのまま眠れないと昼夜が逆転してしまいます。そのため、明るいうちは絶対に昼寝をしないように心掛けています。

今更ですが、現在の私の隔離生活は21日間、一歩も部屋の外に出てはいけないという厳格なものです。しかし、隔離の意義を考えれば、そうあるべきなのだろうと思います。その中で水は生命線です(ホテル側に言えば持ってきてくれます)。隔離中におよそ100本ほど消費しそうです。

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私が今滞在している青島は、関東北部とほぼ同じ緯度に位置します。ちょうど今、季節が秋へと変わりつつあるようで、今日あたりは先週と比べて10度近く気温が低くなっています。ここのところ天気も良くないです。青島を離れる前に、できればもう一度青空の下の海が見たいところです。

2021年10月11日(月) 隔離19日目

今日の青島は久しぶりに晴れました。太陽の光でかなり気分が良くなるような気がしました。いよいよ明後日には、このホテルを出て温州へ飛びます。温州到着後の段取りも確認して、さらに気分が上がってきました。温州でさらに7日間の緩めの隔離がありますが、灯が少し見えてきました。

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隔離中は時間を持て余して、映画をたくさん見ることになるかと思いましたが、結局一本も見てません。YouTubeで短めの動画を見ている方が息抜きになります。今回多く見たのは、プロ棋士のチャンネル(特に対談)とスズメバチの巣の駆除動画。後者の理由は自分でも分析できていません。

投稿していた論文のレフリーコメントがきました。現状では少しでも隔離のことを忘れさせてくれるので、有り難いです。Hydrodynamic lift of a two-dimensional liquid domain with odd viscosity

2021年10月12日(火) 隔離20日目

午前中に最後のPCR検査がありました。その後、部屋の片付けや論文修正の打合せなどをしていたら、あっという間に青島での最後の晩を迎えました。隔離明け前日の夕食には餃子が出るようで、これは日本人宿泊者の間でも好評でした。納豆も付いていたのは、日本人へのサービスでしょう。

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この20日間を振り返って、一番精神的に辛かったのは4〜5日目の五里霧中だった頃ではないかと思います。半分の10日目を過ぎたあたりから少し心に余裕が生まれてきましたが、やはり最後の一週間は長かったです。外部から私をサポートして下さった方々に改めて感謝いたします。

2021年10月13日(火) 隔離21日目

あと数時間で青島のホテルをチェックアウトして、バスで飛行場へ移動します。その際、昨日のPCR検査の結果を受け取ることになっています。なんだか部屋を出るだけで緊張してきました。まともに歩けるのかな?温州でも緩めの隔離は続きますが、とりあえず最終の目的地まであと一息です。

無事に温州のホテルに到着しました。ようやく部屋の外に出ることができた解放感と、目的地に辿り着いた達成感で、いつになく気分が高揚しています。温州の飛行場には研究所のポスドクの方々が迎えに来てくれて、本当に助かりました。移動の様子については、後日書きたいと思います。

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2021年10月14日(木) 隔離22日目

これから7日間の自主隔離期間に入ります。しかし、これまでの3週間に比べれば色々なことができるので、精神的な負担は遥かに少ないです。自分が動きたいときに動けるというのは、なんと素晴らしいことでしょう!やや抜け殻のような状態で、初めての温州の街並みを窓から眺めています。

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隔離22日目 我々のプレプリントを公開しました。隔離期間を過ごすことができた理由の一つは、この論文を書くという目標があったからです。短い論文ですが、忘れられないものになりそうです。The Onsager-Machlup integral for non-reciprocal systems with odd elasticity

中国ではSIMファースト。渡航の準備から昨日まで、中国での携帯番号が無くてできないことが限りなくありました。というか、何もできません。今日はポスドクの方に手伝ってもらって、新しいSIMと番号を入手することができました。先は長いですが、第一歩を踏み出すことができました。

その後、ホテルで瀬戸さんと久しぶりにお会いしました。私が温州に来るにあたって、これまであらゆるレベルで大変お世話になってきました。その下地もあって、お会いしてすぐにポスドクの方と三人で、論文の打合せをしました。ちなみに、私が研究所に行けるのは隔離が終る来週の水曜日。

2021年10月15日(金) 隔離23日目

青島のホテルから温州の飛行場までの移動も、とても厳格なものでした。ホテル内、バス、飛行場、搭乗口、機内の全ての状況で付き添いの人がいて、他の一般乗客とは決して交わることがないように案内されました。もちろん買い物などできません。温州での検疫も時間がかかりました。

温州に来てホテルやお店の人と少し接していますが、英語はほぼほぼ通用しません(当たり前か)。身振り手振りや筆談にも限界があるので、文章になってない単語のみの超不完全中国語も少し使ってみました。まだ確率は低いですが、通じるときもあるので、そういう時は密かに嬉しいです。

2021年10月16日(土) 隔離24日目

これから中国で生活するためには、スマホ上のアプリを使いこなせることが必須です。今日は@airi_physicsさんに、代表的なアプリやその使い方について丁寧に教えていただきました。中国語を勉強しないといけません。また、哈罗单车(HelloBike)というシェアサイクルも使ってみました。

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2021年10月17日(日) 隔離25日目

自主隔離期間中はまだ研究所に行くことができませんが、来週以降はすでに発表の予定が二つ入っているので、昨日と今日はスライドの準備を進めています。やはり最初は大切なので、一層気合を入れないといけません。今日の温州は一気に気温が下がって、外は長袖でないと寒いほどです。

A級棋士の糸谷哲郎さん(八段)が私と同じ中学高校の出身であることを知って、一方的な親近感を強く持たせてもらっています。そんなこともあって、隔離期間中は彼が登場するYouTubeをかなり見ました。「ダニー」のキャラで隔離中の気分がかなり和みました。

2021年10月18日(月) 隔離26日目

私の隔離生活も残りわずかとなり、それはそれで嬉しいのですが、この長かった隔離期間を思い起こすたびに、同じことを繰り返せるような気がしません。このことは、簡単には日本に帰国できないことを意味しており、それはそれで寂しい気持ちになります。感情の揺れと向き合う日々です。

2021年10月19日(火) 隔離27日目

明日の隔離終了日を前にして、今日は最後のPCR検査がありましたが、物々しいことにホテルから検査場まで救急車で運ばれました。しかも人生で初めて救急車です。しかし、これくらいのことではもう驚きません。結果は午後に出て、晴れて「阴性」。ようやく明日から研究所に行けます!!

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今日でようやく全隔離期間が終了します。これまでは、健康さえ維持できれば、ひたすら時間が過ぎるのを待てば良かったのですが、明日からは自分の手で色々なことを開拓していかなければいけません。やるべきことを考えると、すぐに頭が飽和してしまいそうなので、ゆっくりとやります。

2021年10月20日(水) 隔離期間終了日=仕事開始日

無事に隔離期間が終わりました。「中国隔離日記」は一旦、終了します。これまで読んで下さった皆様に感謝します。