生活保障制度への道:生活保護をアップデートしよう

新型コロナ危機に伴う現金給付ですが、相変わらず対象が狭いようです。特に、収入の減り幅は小さくてももともと収入が少なかった人や、収入はそれほど変わらなくても支出が増えた人に支給されないのは大問題です。

給付が世帯ごとで、世帯主の収入だけを対象にしているのは、個人の経済的自立も家計の実態もおろそかにしたやり方です。

『30万円給付、減収後の月収10万円以下対象 単身世帯』
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASN4B3W3GN4BULFA006.html?iref=sp_alist_8_07
●30万円現金給付の対象となる世帯
条件①以前より減った後の月収が……
単身世帯 10万円以下
扶養親族1人 15万円以下
扶養親族2人 20万円以下
扶養親族3人 25万円以下

条件②以前より半減した後の月収が……
単身世帯 20万円以下
扶養親族1人 30万円以下
扶養親族2人 40万円以下
扶養親族3人 50万円以下
※扶養親族には同一生計配偶者を含む


さて、日本にはもともと「基礎的な生計費に足りない分を補填する」合理的な制度があるんですよ。「生活保護制度」っていうんですけどね。生活保護のマイナスイメージを広めて貶し、とても使いにくい制度にしてきたことが、いざというときどれだけ自分たちの首を絞めるか、こうなってくるとよく分かりますね。

事業や経営はともかく、少なくとも生活面では、生活保護がまともに受け取れればなんとか生きていけるケースが大半でしょう。そこで、貯蓄や持ち家持ち店舗や車などがあったら生活保護を支給しないという仕組みだと、すべてを失ってからでないと支援が受けられません。すると生活を再建しにくくなり、援助に頼る暮らしから脱出する見込みが立たなくなってしまいます。再建や脱出を不可能にするそんなルールはまったく合理的ではないので、今後一切やめてしまいましょう。また、自治体の財政状態や匙加減に左右されないように、支給費は全額国費から出すことです。

「生活保護」という名前も「ありがたく思え。わきまえろ。図々しい」という間違った風潮を生む原因の一つでしょう。「生活保障」や「生活費補助」などの名前を検討してもいいかもしれません。いざというときのために政府があるので、生活扶助は「お恵み」「施し」「ズル」ではなく、必要に応じて利用すべき権利であり、ライフラインです。

もちろん、生活保護がなくても暮らしていけるようになること、貧困から抜け出して自立して生計を立てられるようになることが望ましいのは当然です。そのためには、仕事や収入を得た人に対しては、単にその分生活保護を減らしたり打ち切るのではなく、支給の減額や打ち切りを半年から1年ほど猶予して移行期間を作る、褒賞金(仕事や収入を得たことに対する給付金)を出す、税金を割り引く、小規模な事業から生計を再建するための低利小口金融を奨励するなど、自活に取り組む人に報い、経済的自立を後押しする手立てが不可欠です。

困窮や貧困で経済的自立が難しい人を罰する、脅す、辱しめるのではなく、むしろ報酬系に働きかけて自立を助けていく方が、効果的で理にかなっています。

また、これは生活保護を受けている人に限らず、みんなが教育やスキルの獲得に取り組みやすくなるように、国が投資して個人の費用負担を下げ、個人個人が自分の力を伸ばしやすくすることは、人生の見通しを明るくするのと同時に、国の経済にとってもとても大事なことです。

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