アルゴリズムによる支配
テクノロジーによる革命を人類は指をくわえて見ているだけでいいのか
ユヴァル・ノア・ハラリの『21Lessons』を要約する。
過去2作から見る本書の位置づけ
・サピエンス全史:過去から現在について。ホモサピエンスの繁栄は虚構の共有による協力を可能としたこと。虚構の例は、国家、宗教、会社など。
・ホモデウス:未来について。IT、テクノロジー、アルゴリズムによる人類の支配が待っている。持てる者と持たざる者の差は拡大し、持てる者はヒトを超越し、神になろうとする。
・21Lessons:現在から未来に向けて。これまでの虚構の共有による協力関係がテクノロジーにより崩壊する恐れがある。人類は何を導としてこれから歩んでいけばいいのか。
自由主義の崩壊
人類が共有してきた虚構(物語)である自由主義がテクノロジーに脅かされ崩壊の危機にある。
自由主義は単一なものではなく、各国がそれぞれ掲げている。それぞれが理想とする自由を追求することで国際的な自由主義体制が崩壊することは自明。その中で、テクノロジーによる革命は人々に分断をもたらし、国家的な体制の崩壊につながる。
(ナショナリズムへの回帰、ポピュリズム政権の台頭が証明している。)
新しい虚構には、テクノロジーを盛り込む必要があるが、その鍵となるのは、世界共通の認識である雇用。
宇宙の視点に立ったグローバルな協力関係
核、生態系、テクノロジーといったグローバルな問題を前にして、コミュニティ、文明、ナショナリズム、宗教、移民などによる人類の衝突をしている場合ではない。
人類の危機に対して、宇宙の視点から考えた協力が必要。
世俗主義の価値観の共有
直面する課題に対して、グローバルな協力を実現するために重要な物語は、神を信じない世俗主義である。
様々な宗教伝統を共有しており、複数の混成のアイデンティティを容易に受け入れることができる。
観察と証拠に基づく真実を神聖視し、苦しみを理解し、真実や中道を探す思いやりをもって、平等に責任を持つことが、世俗主義の責務である。
真実と虚構のバランス
真実の因果関係は複雑化を増しており、プロパガンダやフェイクニュースを見極めることは難しくなっている。真実を理解し、正義を見つけることはできないのだろうか。
そもそも、昔から真実が最優先されていることはなく、人類が協力してどれだけ力を発揮できるかは、真実と虚構の絶妙なバランスにかかっている。
自分を知ること
真実にはたどり着くことができず、これまでの虚構も崩壊しつつある。人類はこの先どうすればよいのか。
テクノロジーが発展し、アルゴリズムにより支配された世界となるこれまでの虚構の崩壊に対してできることは、アルゴリズムを先回りして自分自身を理解すること。
求められる能力は、批判的思考、コミュニケーション能力、協働、創造性である。それは、重要性の判断、情報の結びつけ、世情を幅広く捉える能力につながる。
近い将来アルゴリズムは人類が自分自身の現実を観察するのをほぼ不可能にするかもしれない。手遅れとなる前にまずは自分を知らなければならない。
まとめ
テクノロジーの発展がこれまでの枠組みを壊す可能性が高く、その影響はグローバル化が進んだいま、地球全体に及ぼす影響が高い。そのため、近視眼的な思考に陥るのではなく、より広い視点、地球全体を捉えた視点で、グローバルな協力が必要となる。それを実現するためには、宗教や文明などの多様性を受容することが肝要である。個人ができることは、幅広い情報を批判的に捉え、それらを結び付けたうえで、創造性のある思考ができる能力を身につけておくこと。そうすれば、少なくともアルゴリズムに支配されていると気づくことはできるかもしれない。