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#18 New Game クリア報酬のないクエストVer.2

義母の退院日が決まった。

退院日が決まった時より、2時間ほど遡る。
義母の退院について、具体的な日にちが提示されるも、受け入れる私たち側にとっては、いろいろのタイミングの中、ようやく、ケアマネージャーさんとの対話となったので、今日の明日退院と言われても、要介護4の人を受け入れる心理的物理的状況にないということで、一旦、「病院側の都合」はおいてもらっての、ケアマネージャーさんとの対話は、在宅介護における居宅介護支援を受ける契約を始めるところからのスタートだった。
この辺りについては、要介護4なら施設行きがいいと思っていた私と夫との温度差が出ている気がするが、だからといって、在宅介護を完全拒否する気に、私自身がなれないので、受け入れるほかはない。
けれど、今までやれていたことを、そのまま私が「無条件」でやることはできないという、「私自身の思いと主張」はしなくてはならないと、声を出した。

その最たるものが、義母の『食事に関すること』だった。

もちろん、これ以外にも、入浴介助だとか、継続的なリハビリを兼ねたデイケアを介護サービスにほとんど頼りたいというようなこともあったけれど、私の中で、とにかくいろんなウエイトを占めていた『食事の支度と準備』に関して、声を上げないとわかってはもらえないと、私のつまらない矜持をかなぐり捨てて主張した。平日はほとんどが、完全自炊は無理なので、

(せめて平日くらいは)宅配の食事サービスをメインに考えてほしい

と。
これを言うのは、本当に勇気がいったのだけれど、言わずにはおれなかった。
決して出来ない環境ではない。しかし、朝の出勤準備の忙しい時間に、義母の食事の面倒を見なければならないというクエストは、思っている以上に高難易度だったのだ。物理的な問題が積み重なって、心理的圧迫にも繋がっていっていたし、さらには、仕事から帰って、そのまま座ることもなく3時間近く、食事の準備、世話、片付け等をやらなくてはならないのは、正直アラフィフの私には、体力的にもツライ。
子育てをしているわけでもないし、仕事内容は事務職なので、殊の外体力を消耗しているというわけでもない。けれど、しんどいと思うことが日々増していたのも事実で、ここを押し殺してはいけないと思った。

ケアマネージャーさんは、当たり前のように、
「そうですよね~」
と請け負ってくれた。とても救いだった。
夫には前もって、私がどうして、せめて平日は宅食をメインにしてほしいと思ったかは説明していたけれど、多分、いまだにピンとはきていない。
概略としては、終末期の病により、多用される処方薬の副反応もあって、とても食が細くなっていた義母の食事を細かく作って準備することは、平日は朝8時には出勤しなくてはならない私からしたら、朝5時半に起きてもギリギリか、まして、準備したご飯を、夕方帰ってきたら、半分近く残していたりするのを見ると、本当に精神衛生上、しんどかった。
義母の体力も心配になるし、朝ご飯が夕方まで放っておかれて、昼ごはんはどうしたのかとか、朝ご飯がそんな状態だから、晩ご飯作ろうにも、反応が薄いだけではなく、義母からしたらよかれと思っての発言だろうけど、

そげん、腹空いとらんし、いそがんでもいいよ

などと言われる。
急がなくてもいいと言われても、晩ご飯の準備の前に、朝ご飯の残り問題を処理しなければならないという緊急クエが発生して、晩ご飯の用意を考えていたけれど、朝の残りを食べるのか否かとか、そもそも、私が作ったものを晩ご飯は食べてくれるのかとか・・・・思い悩んでいると、

(おなか空いてないから、なのか、私に悪いと思ったのか、単純に自分がそう思ったからなのか)
夜は、漬けもんだけでいいよ。

と言われてしまって、頭では分かっていも、どうしようもない虚無感に襲われて、しかし、そんな訳にもいかないから、食事を準備すると、朝ご飯をちゃんと食べてないから、晩ご飯はペロッと準備したものを食べたり。
それだけならいいけれど、晩ご飯で作った、例えば、煮物なんかも、翌朝に出すと手を付けなくなってみたり、とにかく、「食品ロス」が多くて、とても困ったりした。
食品ロスということは、食費ロス。夫からもらっている食費を侵食してしまったりして、とにかく、そういこともツライ。
また、義母は、偏向食の人で、とにかく、牛豚肉は絶対食べない。もちろんそれらの加工食肉も食べない。ここはかなり厳しい。じゃあ、魚料理でと思うけど、魚料理ってレパートリーもなければ、使いまわしもきかないし、義母にいたっては、鮭の切り身を半分も食べなかったりして、いくら残りを夫が食べるといっても、限度があるし、前述したとおり、使いまわしが効くと思った料理ほど、2回目3回目は手をつけない。

これには、心底困ったし、こちらのメンタルはかなりヤラレた。

もちろん、そのこともケアマネージャーさんには包み隠さずお話した。
幸いなことに、居住エリア内には、いくつもの宅食サービスを行っている会社(お店)があって、選ぶのには苦労しないと思う。
食べられないものを残されても、それはその宅食内で完結するので、他にまだ作っているのにな・・と思うこともなくなるし、なにより、味付けもお任せ出来るから、その点の心理負担はかなり楽になる。もちろん、一食当たりの品数も確保してもらえるし、この品数を準備するというのがまた、私にとっては難題物だったので、義母には申し訳ないが、そこは目を瞑っていただくほかない。
私は家政婦ではないし、専属料理人でもないし、そしてまだまだ家族未満の関係性なのだ。
頭で分かっていることと感情のバランスが、ちょっとした事ですぐに崩れて壊れてしまうこともよく知っている。
義母を嫌いになりたくないからこその主張だった。

夫は私の主張は基本合意してくれている。私の言うことは最もだと頷いてもくれている。義母も面と向かっては文句は言わないだろう。
さりとて、これらも、実際、やってみないと分からないことだとも思う。

義母は、骨折からの補強手術からのリハビリをとても頑張ってくれたようで、先日久しぶりに逢えた義母は、入院前とは別人かと思うほどに、杖一本でシャキシャキ歩いていて、本当に驚いた。これで要介護4とは・・・と思ったけれど、認定審査の時は、骨折直後で動きを制限されていたからだろう。
いずれにしろ、以前は、ちょっとの移動も車椅子だった人が、シャキシャキ歩いてくれていたので、これなら在宅介護も大丈夫か?と思わないでもないが、実際はこちらも、どうなっていくかは分からない。
家に帰ってくれば、他人の目はないし、決められたリハビリのための行動も原則なくなるから、元の木阿弥とならないとも限らない。
なので、ケアマネージャーさんには、最初から、すぐにデイサービスやデイケアで少なくとも週2日ほどは外に必ず出るというプランをお願いした。
田舎から出てきて、全く知らない土地で、ハツラツと生きていくには、家の中にこもっていてはダメだし、インドアな趣味を持っているわけでもない義母には、強制してでも外に出して、他人の目に触れていた方がいい。
元々、人と話すのは好きな方だし、おしゃべりの部類だと思うので、きっといずれかのサービス施設で、良い和を作ってくれると思う。

あとは、私自身の心と気持ちの持ちようを腐らせないようにしないといけないということくらいかな。
割と長子気質が強い方なので、頼るということがなかなかうまくいかないタイプ。義母や夫からの口撃を何でもかんでも享受せず、私も自分の思いを言の葉に乗せて伝えていかなくてはならない。出来ないことは出来ない。やりたくないことはやらないと言わないと、誰も私のことなど分からないし、イヤイヤでもやってしまえたら、人はそこは、自主的にやれるものだと都合よく解釈してくる。―――私の中の変革も求められている。



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