見出し画像

#5 主婦業にだけは向いていない

誰にでも、向き不向きはある。
営業職は天職だ、とか、事務職が性に合っている、とか、不器用なので製造職には向いていないとか。
仕事に貴賤はないとは言うが、世の中で一番大変で承認欲求が満たされない業種が「主婦(夫)業」だと思うのだけれど、私は本当にこの主婦業に向いていない。
もちろん、完全なる主観の話であり、私は子育てを経験していないので、一般論で語るつもりもない。

主婦業とひとことで言っても、その業態は様々だろう。
専業主婦もあれば、兼業主婦もあり、はたまたパートナーシップに則った形で執り行われている方達もいる。
昭和生まれのアラフィフ世代な私は、ふた昔は前の、亭主元気で留守がいい的な一般家庭に育ったので、実母は基本専業主婦だったからか、何となく主婦業は「お母さんの仕事」という認識からなかなか抜け出せないでいる。
なので、実は一度「主婦業」に就いて大失敗し、主婦業を廃業した過去がある。

主婦業の大半は、家事にある。家事と言っても、これまた多岐にわたる職務があり、大まかに分ければ、掃除、洗濯、炊事となり、私はこのどれもがとにかく苦手というか、多分、不向きなのだ。
綺麗であるに越したことはないが、掃除は面倒くさくてイヤだ。性格もあるのだが、一度始めるとキリがなくなるほどやってしまいそうになり、そのことを考えると途端に面倒になってイヤになる。さらに言うと、折角掃除して綺麗にしても、結局また汚れてくるのだから、さらにイヤになってくる。「イヤ」の繰り返しが雪だるまみたいに膨れ上がって、最終的には、汚れた部屋でも気にしないような状態が生まれてくる。
独り暮らしなら問題ないこの性格も、家庭があって家族がいて・・・となると、そうはいかなくなる。
ちなみに、現在の家庭でも家事の9割は私が遂行している。
たまには、無くなったトイレットペーパーくらい入れてくれてもいいのではないかとさえ思うくらいには、名もなき家事も私がほとんど行っている。

閑話休題。
とりあえず、掃除に関しては、それでも最低限を押さえておけば何とかなる。目に余るホコリを取るとか、洗濯も同じで、こちらも最低限で、何なら下着とか一週間洗わなくてもストックがある状態にしておけば、まあ問題はない。
大問題は、炊事、である。

こと炊事、食事の準備というのは、とにかく頭が痛い。
当時、いちばん辛かった家事が、この炊事=食事のことを考えることだった。
朝ごはんの準備の時にはすでに晩ご飯の準備を考えねばならない。しかして家人に、
『晩ご飯、何食べたい?』
などと、どれだけ可愛く聞いてみたところで、返ってくるのは、いかにも面倒そうな表情で、
『(はぁ?)今、朝飯食ったばっかで、考えらんない』
or
『(気のない様子で)・・・・・なんでもいいよ』
という、一番貰いたくない回答のみ。
新婚当初くらいは、ひょっとしたら、なにか料理名とか食べたい食材くらいは言ってくれていたかもだけど、記憶をさらってもなかなか出てこないので、多分、そんなシアワセな想い出は記憶のどこか、亜空間にでも飛んでいってしまって決して思い出せそうにない。

そんな大失敗で主婦業を一時は廃業したというのに、20年弱の時を経て、再び主婦業に復帰してみたのは、まあ、この先の終活に向けての初歩だったのだけれど、これはまた別のお話。

アラフィフを迎えて主婦業に復帰するに辺り、私がまず家人となる人に言った言葉は、
『私は主婦業に向いていないから、なにも期待しないでね』
だった。
大真面目に言った。そもそも結婚を申し込まれても、ずっと拒否してきた理由なのだから、しょうがない。家人もそれは重々把握してくれているようで、まあそれでも家事の9割を私がやってはいるが、昔の時と違うのは、気が付けば、
「(料理を用意してくれて)ありがとう」とか、
「(ゴミ出しは)俺がやっとくよ」とか、
なんなら、自分の衣服の洗濯は自分でやってくれているので、とてもとってもありがたい。
良いダンナさんと思われるだろうけれど、何のことはない、彼は独り暮らしが長すぎて、洗濯には独自ルールがあるし、食事の準備は今まで独りだと大変だったのが、やってもらえるのがありがたいという、「実務レベル」の事柄なので、私は逆に、殊更そのことを「ありがたがらない」ようにしている。
そうしないと、お礼を言ってくれたり、ゴミ出しをやってもらうことが、彼が「やるべき事柄」として認知してしまうと、言ってくれなかった時、やってくれなかった時に、私の中に「不平不満」という呪いのような何かが生まれてきてしまうから。

そんな、些細な、けれど非常に面倒くさいメンタル持ちな私は、いまだに主婦業にはだけは向いていないと思っている。

炊事は面倒だからイヤなのだが、料理を作ること自体はそんなにイヤではない。そもそもルーティンワークはどちらかというと好みなタイプなので、料理工程はゲーム感覚で面白いと思うし、酒飲みなので美味しい酒のアテが作れるとかなり嬉しい。
片付けは面倒だけれど、洗い物自体は実はそんなにキライではない。これも作業としては好みの部類。
但し、これが「義務」になるのがイヤで、今現在、義母の介護の一環でこの炊事が「義務化」してきている事に、結構な不安と焦燥を感じているが、これもまた別のお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?