マンションにおけるポリシーについて(後編)

前編はこちら

side🦏

総会後の初回理事会前に、猪田が言った通りに理事会に投書を書いた嶋さんをお呼びすることとした。

嶋さんにお声掛けしたのは、斉藤だった。猪田さんが、私がいくと言ったのだが、あのままお宅に行かれたら玄関先でドンパチ始まるに決まっている。

斉藤がくじ引きで選ばれたとはいえ理事長ですから、私に行かせてください、と猪田を抑えて訪問した。

🦏こんにちは、今期理事長の斉藤です

嶋さんは、穏やかそうな現役世代の方だった。

🦓嶋です、斉藤さん、わざわざ申し訳ありません。意見書の件ですよね?

🦏ええ、そうなんです。嶋さんにお越しいただきお話したくて。

🦓僕にですか、、分かりました。
一つお聞きしたいのですが、斉藤さんは、あの意見書を見てどう思われましたか?

🦏私は…


ー翌月ー

理事会の前の時間を使って斉藤は、猪田さんと嶋さん、管理会社担当の4人で話し合いの場を持つこととした。

猪田が堪らず口を開いた。

🐗嶋さん、私、このマンションでここ数年理事やってます猪田といいます。意見書読みましたけどね、わたしはびっくりしましたよ!このマンションはね、コミュニティ活動で成り立ってるんですよ!それをあれをやめろこれをやめろってどういうお考えなんですか!お聞かせくださいよ!

🦓私としても、皆さんのやっていることを否定したいわけではないんですよ。ただ、このご時世ですし、そういった観点があってもいいのかなってだけで、、

🐗そうは言っても、このマンションは…!!!

🦓それは理解してます。ただ、、

…このまま進めても埒が明かないなと思った斉藤が口を開いた。

🦏あのー、若輩者でくじ引きで当たって理事長しているわたしが言うのもなんなんですが、今回の話の大事なところって、このマンションがどういうマンションにしていきたいかってところが定まっていないことが問題なんではないでしょうか?

🐗🦓???

何と言おうかと考えていると、管理会社の担当者が続けた。

🐀斉藤様のおっしゃるとおりで、このお話は、このマンションの方向性、つまり、このマンションはどういうマンションにしたいかということが全体に共有されていないということで発生しているのではないか、という問題提起ですね。

🦏はい、嶋さんが書いてくれた意見書の観点は、私からすると、そんなことまで気を配るんですね、と大変勉強になりました。先日お聞きした前のマンションの話、大変参考になりました。嶋さん、再度お話いただいてもよろしいでしょうか?

ー先月、嶋宅を訪問した時ー

🦏私は、意見書を見て驚きました。正直マンションだし、ある程度は管理費払って楽したいと思っていたので、嶋さんの観点で管理のことを考えたことはありませんでした。

🦓私は近くのマンションから引っ越してきました。

…(前のマンションの話)…

もちろん、前のマンションとこのマンションの状況が違うことは理解していますが、それでもやはり以前の経験から、このマンションはこのままで大丈夫なのか、とても心配なのです。特に皆様を困らせたいわけではありません。

🦏嶋さん、そのようなお話はありがたいです。ぜひ理事会の前に理事会のキーマンの猪田さんとお話していただけませんか。マンションに思い入れのある猪田さんは、きっと嶋さんのご経験のお話を聞いたら、ぜひ一緒にやろうとおっしゃると思います。

ー打ち合わせの場ー

🦓…ということです。私の一個人の経験から差し出がましいことを申し上げてしまい、失礼いたしました。

🦏ありがとうございます。嶋さんのお話大変参考になりました。ただ、聞くところによると、このマンションの多くの方は無関心層なんだそうです。

🐀総会を開けば200人以上が出欠票をほぼ委任で出しています。督促してから出す方がほとんどです。理事会の役員も、輪番なのに毎回数名は幽霊役員です。出席はおろか返事すら出さない人もいます。

🦏そんな中で、マンションをよくしたいと思う方が集まって、いろんなことを考えてくださることで、このマンションは成り立っているわけです。管理費を削減していくと、その皆様が活動して作ろうとしている楽しく明るいマンションにするための予算が取れないわけです。
お金か夢がなければ人間は動かないといいますが、マンション管理の場合、皆様自分の持ち物ですから、莫大なお金がなくても夢があれば動く人もいます。ただ、ある程度のお金がないとその夢すら動かせないわけです。

🐗嶋さん、先ほどはちょっと言い過ぎてしまって申し訳ない。ただ、これだけは分かってほしいのは、私は、このマンションは、魅力ある、生き生きしたマンションにしていきたいんですよ。この価値を保っていきたいですから。ただ、斉藤理事長の言うとおり、そのために必要なコストカットはしなくてはいけないですね。嶋さん、ぜひ委員会で一緒にやりませんか。

🦓はい、、私に出来ることであれば…

斉藤は思った。このマンションの未来はきっと明るいはずだ。

こんなにもマンションのためを思って動く人がいるのだから。

fin.


🐀…ちょっと着色したんですけど、こんなことがあったんですよー!マンションにおける、なんかスローガンとかチームセオリーとかポリシーとかクレドとかそういうこう、テーマみたいなのが打ち出して行けたらいいんですけどねって思ったんですけどどうでしょうね?

🐻脚色な、何色に塗ったんだよw そもそもマンション自体というより、通常は理事会が固定化しないから玉虫色というか、理事長の意向によって変わっちゃうからなあ…

🐀それが困るのでなんか真ん中に一本通るものがあればなって思ってるわけです!このマンションはこのテーマです!みたいなやつ!そんなマンションだったら管理もやりやすくないですか?管理会社としても良い考えだと思うんですけど!

🐻なるほどな、、(…そんなにしっかりした組合ばかりじゃないけどな…)まあ、いい案が思いついたら教えてくれ!ちょっとお客さんに電話しなきゃいけないから、またな!

🐀あ、逃げましたね!だいたい管理会社の人間がいう電話する予定なんてほぼ嘘じゃないですか!ちょっと!課長!!


…おしまい


another story(おまけ)

話し合いの帰り道、集会室からの帰りがけにメールBOXに立ち寄った嶋の目に、見慣れないオレンジ色の文字で相談無料の文字が大きく書かれたチラシが目に入った。

🦓ん?マンション管理についてマンション管理士に相談してみませんか?このチラシ限定で相談無料?ちょっと話だけでも聞いてみようかな…なんだか、変わった名前だな、、

🐑…

おしまい


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