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RCEP のスタート 輸入通関からの視点

久々にお仕事関係のnote です。

今回は、RCEPについてのお話です。
まず、RCEPとはなんぞやなんですが、

簡単に言えば、TPP+中韓の経済協定をイメージしてもらえればいいです。(加盟国は少し違いますが)
EPA(経済連携協定)の一つです。
そのため、ここで主に話そうとしている貿易以外にも投資ルールなども含む広い内容となっています。


そして、1月1日からスタートしているのですが、報道はあまりされていない印象がありました。少なくとも、TPPやEU協定、日米貿易協定と比べても落ち着いています。

1月1日からは、日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ及びベトナムの10カ国でスタートし、
2月1日から遅れて韓国においてもスタートします。


さて、始まって1週間。仕事的には数日ですが、RCEPを取り扱ってみての私の感想なんですが、(輸入メイン)


あいも変わらず、情報が出てくるのが遅い

TPPのときからそうなんですが、協定がスタートする1ヶ月前にようやく実務的な情報が出てくるのです。

今回もそうでした。そのため、輸入者への案内が間に合わないことが多く、今週通関したもので、準備の時間が足りないため、やむなく利用せず、次回から利用することが多々ありました。

これは本当にそうです。通関業者から案内するにしても、まともな情報が出てからでないと、案内する意味がありません。客先は当然「何をしたらいいのか」と思うところ、まだ何も情報がでてなくて案内できませんってことが12月中はありました。


RCEP協定の旨味が現状少なすぎる

輸入メインのため、輸出した際の輸出先のメリットなどはわかりませんが、

今現在のメリットは非常に小さいです。

上でも説明しましたが、現在の発効国は中国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ及びベトナムですが、

オーストラリア:2国間協定、TPP
ニュージーランド:TPP
ブルネイ:2国間協定、アセアン協定
カンボジア:アセアン協定
ラオス:アセアン協定
シンガポール:2国間協定、アセアン協定、TPP
タイ:2国間協定、アセアン協定
ベトナム:2国間協定、アセアン協定、TPP

のように中国以外はすでに、何かしら協定を結んでいます。

また、RCEP協定は現状、すでに発効済みのEPA協定に比べて、ほとんどの品目で同等の税率かむしろ高い税率となっています。

そのため、わざわざRCEP協定に乗り換える意味がありません。


また、中国や韓国で見てみても、国内産業への影響を考慮してか即時に撤廃されるものが少なく、また16年目(2036年4月)にかけて関税を撤廃するものが大半です。

私もすべての税率を理解しているわけではありませんが、関税が有税のものはそのほとんどが10%までになっており、単純に10%を15等分しても0.6%。


長い年月で考えれば、プラスにはなりますが、下がり幅が小さいため、発効当初の恩恵は非常に小さいです。


もちろん、下がるものだけで言えば、16年目に撤廃が多いと言っただけであり、中国・韓国のみ関税の引き下げから除外されている品目が多いのも事実です。


各EPA協定には、年数に応じた関税率をしますステージング表というものが用意されており、すべてのHSコードについてその年の関税率が出ています。

ただ、RCEPについては、まず11年、16年、21年かけて段階的に下がるものがあるため、それだけの各年の項目を用意しなければならず、
また、中国・韓国のみ別扱いするHSコードのものがあるため、それだけ欄数が増えます。

そのため、RCEPのステージング表は過去最大で情報量が多すぎて、表が見づらいものとなっており、私も見るのが一苦労です。



原産地を証明する方法が複数ある

最後に良い点ですが、

EPA協定を利用して関税を安くするためには、その国で作られましたよ と証明することが必須です。
そのため、原産地証明が必要になります。

昔から相手国の商工会議所などが証明書を発行し、その書類でもって原産地証明をするのが一般的でしたが、(第三者証明)

TPP協定以降、輸入者や輸出者が自分自身の責任の元、原産品申告書、明細書を書くことで自主的に証明する制度が一般になりました。


上の2つは一長一短ありますが、自主証明するほうが楽なことが多いです。

ただ、RCEPについては、第三者による証明書も輸入者による自主証明の両方が認められており、

輸出者による自主証明も現在はオーストラリア・ニュージーランドのみですが、10年・20年以内にすべての国で導入することが決まっており


選択肢が多く、それぞれ選択できることはメリットとも言えます。



経済への影響は、経済学者・エコノミストの方々が書かれていると思いますので、そちらに譲りますし、なんなら輸出においては私は弱いので。


業務的にも、韓国のスタートを考えても2ヶ月以内にはほとんどの輸入者が対応できると思いますので、通関側としてはそこまでの踏ん張りでしょうか。


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