”転売”の問題点 経済学的観点から

Part1にあたる

からの続きです。
ここでつかう”転売”の定義もしているため、先に必ず読んでください。


”市場”とは 経済学の第一歩

経済学的な話を急に話しても、わからないので、初めての人でもわかりやすいようにイチから説明していく。


経済学の基本中の基本。”市場(しじょう)”についてだ。

まず、プレイヤーは2人。

商品の買い手である”消費者”、商品の売り手である”生産者”だ。

ここで、一番重要な条件として、”消費者も生産者も自由に取引できる”ということだ。


市場においては、2つの数字がある。

商品の「価格」と「数量」だ。


そして、2人のプレイヤーと2つの数字の関係はこうだ。

消費者は「価格」が高いとき、そもそも高すぎて財布的に買えなかったり、少ない量しか買えないため、購入する全体の「数量」は少ない。

逆に「価格」が安いときは、購入する「数量」は多くなる。
その関係は下のグラフだ。(雑ですみません。)


生産者はどうかというと、まず
「価格」が高いとき、生産者はたくさん売って、その分沢山儲けたいため、生産する「数量」を増やします。

逆に、「価格」が安いときは、儲けがでないことや作れば作るほど赤字になるため、生産しなくなり、全体の生産する「数量」は少なくなります。

これを組み合わせると

結論から言えば、2つの線が交わる「価格」と「数量」が一番いいということ。
また、市場によって自動的に一番いい「価格」と「数量」になるということです。

まず、価格が高いとき。緑色の線の価格だった場合

消費者はAのところの「数量」しか買いたくない。

しかし、生産者は儲かると思ってBの「数量」を作ってしまう。

結果的に、在庫が増えてしまうため、生産者は価格を下げて売ります。


さきほどよりも売れる「数量」は増えたものの、まだ在庫を抱えているため、値段を下げる。
これを繰り返して交わるところに落ち着くのです。


価格が安いときは、これの逆のことが起こります。


転売擁護の経済学者の理論

池田信夫氏など転売擁護を行っている話を簡単に

実は上の話の逆、価格が安いときの話がメインの主張だ。

紫の線が生産者が設定している「価格」だ。

このとき、生産Xに対して消費者の求める需要の「数量」Yが大きく上回っている。圧倒的に品薄状態。

擁護する経済学者は、市場メカニズムではPの「価格」が適正だという。
しかし、生産者は適正価格を無視して「価格」を設定している。


”転売”での価格上昇はは、”適正価格”にする動きであり、その「価格」でも買いたい人はいる。買いたい人が買えるようになるため、”転売”は正当な行為だ。


これが擁護する意見の主張である。つまり、設定価格が安いのが悪いという主張。そして、転売を防ぎたいのであれば、販売価格を上げろという意見。


確かに、販売価格を上げることは、”転売”行為を防ぐことに効果はある。”転売”の利益が減るからだ。

チケットなど数量に上限がある場合、

青の生産者の線は、上限の「数量」に達するとそれ以上増やせないため、どんに高い価格でも上限「数量」である。
そこで、黒の線の「価格」で出しても、欲しい「数量」は多い。

そのため、赤と青が交わる「価格」まで上げられるため、”転売”によってその「価格」になる。


擁護派に対する意見

私は擁護派に対して2つの意見がある。

1つは、「価格」を上げるべきだという意見に対して。
すぐ上の上限の「数量」がある場合のグラフ。

チケットは確かにそうだが、SwitchやPS5といった商品については短期(1~3ヶ月)ではメーカー側も簡単に生産「数量」を増やせないため、上限があるパターンではないのか。

特に、半導体が世界的に不足していることから生産が増やせない場合がある。長期(1年単位)では水色の線のように自由に「数量」を調整できるとして、生産者は水色と赤色の線が交わるところの「価格」を設定。

そのため、簡単に”価格を上げろ”という意見はいうべきではないと考える。

なぜかPS5ではしなかったが、歴代のプレイステーションは最初に高めの「価格」に設定(赤と青の交わる価格)
その後、生産体制が整うと「価格」を下げる(赤と水色の交わる価格)

ということを行っている。

また、業界内での競争があるため、簡単に「価格」を上げる判断はできない。そこは、経営的な視点も抜けているため、安直すぎると言える。


そして、2つ目が、消費者と生産者のグラフの線が、”転売”により線自体が変化している可能性を考慮していないことだ。

このグラフの線は、「価格」と「数量」の関係だけを示すため、他の要因によってグラフ自体が変わる可能性がある。

極端な例を出すが、”転売”の買い占めにより、生産者がすべて転売ヤーに買い占められ、転売ヤーからしか消費者は買えない状況。

これは、生産者→転売ヤーに置き換わる。
そのため、転売ヤーの利益・経費分商品コストが上がることになる。

そのため、青から水色に線が移動。適正「価格」がP'からP''に上がることになる。
つまり、転売ヤーによって不当に価格が釣り上がる様子である。


極端ではあったが、買い占めやすいものほどこれに近い状況になり、転売ヤーから偽りの”適正価格”で買うか、買うのを諦めるかしかなくなる。


さらに、状況を付け加える。
転売ヤーは商品を仕入れるため、赤色の線にも干渉する。転売ヤーが儲けられると予想し、買いたい「数量」を増やす。

そのため、赤色からピンク色に線がシフト。

これで適正「価格」はP’’’となる。

P'と比べると適正「数量」は変わらない。ただ「価格」が釣り上がっただけだ。

市場のメカニズムは正常だ。ただ、この”釣り上げ”が正常なのか。

赤とオレンジで囲っている部分が、転売ヤーがいなかった場合消費者が得している部分。
そして、転売ヤーによってオレンジ部分が消えることになります。

失った部分は、別のところに悪影響を及ぼします。

不当に「価格」が上がり、その分を使われたであろう未来の消費が消えることになります。
ゲーム機であれば、不当に上がったことで、ソフトを購入する意思決定にも影響を与えます。


まとめると。”転売”によって、”市場”が歪むことを全く考慮していない。

その点で、”転売”を許してはならないという結論に至りました。


フリマサイト自体に罪はない。

以上が、”転売”を否定する意見です。


捕捉としてですが、経済学者は基本フリマサイト自体は否定することはありません。

基本で話した、”市場”に該当するためです。

実際、フリマサイトの否定=株式市場の否定にもなってしまうためです。


余り物、中古品が売買できる”市場”は非常に大切です。

たとえ、買った後に合わなかったとしても、中古品市場で売れるとなれば、買いやすくなります。

事実、本や漫画は一時期電子書籍の影響を受けましたが、読んだ後に売ることで、費用回収できる点から買い手がいる本・漫画の実物が再評価されることとなりました。


株式市場も同じです。会社は株式を発行してお金を集めます。

ただ、株式を買ったあとどうすることもできないとなると、発行のときに買いたいと思う人は出てきません。
持ち続けることも、他の人にすぐに売ることもできるからこそ、発行の時に買いたい人が出てくるという効果があります。


そのため、フリマサイト自体には罪はありません。ただ、”転売”などの問題で多少なりとも改善すべき点はあるでしょう。

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