歴史千夜一夜(1) 豊臣秀吉は忍者だった

 色々なところでお話しをして多くの人にご納得いただけるのが、この豊臣秀吉忍者説です。どういう話かというと、豊臣秀吉は織田信長の忍者軍団のトップだったのではないかという話です。

 織田信長は、伊賀に大軍を送って伊賀忍者を壊滅的な状態にしたといわれます。その後、本能寺の変で落ち延びる徳川家康を伊賀忍者が守って、伊賀忍者が徳川幕府の隠密となっていくので、伊賀忍者は壊滅はしなかったのですが、織田信長がなぜ伊賀をそこまで破壊しようとしたのでしょうか。

 通説では織田信長が忍者のような薄気味悪い存在を嫌悪したと言われたりします。しかし本当にそうでしょうか。織田信長は実利主義者です。忍者とかスパイの有効性を理解していたはずです。薄気味悪い存在と思うより、役に立つ存在と考えていた可能性が高いと思います。ではなぜ伊賀を滅ぼそうとしたのか、それは織田信長にも忍者軍団がいて、そのライバルを消そうとした方が自然ではないでしょうか。

 江戸時代、忍者はお庭番と呼ばれました。なぜなら、身分が高くない彼らがトップである権力者の近くにいて連絡ができる良いポジションだったからです。豊臣秀吉が織田信長のぞうり取りであったことは有名です。信長の近くに常時いれるポジションです。もし、秀吉が信長の諜報機関のトップとして最適なポジションと言えるでしょう。

 また、豊臣秀吉はサルのような顔だったといわれます。それを裏付けるような資料も残っているので一概に嘘だとはいえないのですが、少し違和感があります。美美意識が高く、美形を好んだ織田信長が、サルのような顔の人間をそばにおくでしょうか。一方、忍者には、その得意技で名前がつけられました。サルのように飛ぶから猿飛佐助みたいな例が分かりやすい例です。ひょっとしたら、豊臣秀吉はサルのような顔だったからサルとよばれていたのではなく、サルのように飛ぶ技に長けていたからサルと呼ばれていたのではないでしょうか。
 豊臣秀吉が、本能寺の変のあと、中国地方から短期間に戻って明智光秀を討った話は有名です。世にいう中国大返しです。これも秀吉が織田信長の諜報機関のトップだったら謎が解けます。秀吉はすでに本能寺の変を知っていて準備していたのです。もしくは、豊臣秀吉が仕掛けたのかも知れません。

 当時、織田信長は日本統一の一歩手前でした。織田信長が天下を統一してしまえば、不要になり粛清される可能性があったのが諜報機関です。諜報機関は戦争には強力なツールですが、反乱されると怖い存在でもあったはずです。織田信長がいつ自分を不要と思って殺されるかもしれないと思った可能性は高いと思います。

 実は千利休にも忍者説があるのですが、利休も豊臣秀吉に重用されたにも関わらず、なぜか急に逆鱗にふれ処刑されてしまいます。各大名にあって情報を直接聞ける千利休は、ひょっとしたら秀吉の後継者として、織田信長の諜報機関を引き継いだのかも知れません。だからこそ、天下を統一した秀吉にとって邪魔になったのかもしれません。たぶん、当時の多くの人間が、わざわざ処刑することもないという雰囲気だったのだと思います。大名の多くが助命を嘆願したともいわれます。しかし、秀吉にとって諜報機関を掌握して、力をつけてきた千利休が脅威になってきたとしたら、処刑する必要があったのも納得できます。このように考えると、意外と筋が通るのです。

 話はもどりますが、豊臣秀吉が初期に手柄を立てる話には、蜂須賀小六のような野武士というか、あまり正規軍とは感じられないゲリラ戦的な軍団が手柄を立ててくれます。これも彼が忍者だったとすると理解しやすくなります。ただのぞうり取りに、そういう人間との接点があったとは思えません。彼が忍者であって、そういうゲリラ戦を得意とする野武士たちとの接点があったとしたら、そういう野武士たちを使って、様々なことができたでしょう。第一ただのぞうり取りであれば、日本を統一すること自体があり得ないといえます。

 秀吉が他の忍者と違ったのは、表に出てきたことです。忍者というと現代のイメージでは、影の存在というイメージが強いのですが、当時はそうでも無かったと思います。武士にしたって、主君に忠誠を尽くすというのは江戸時代以降の価値観であって、当時は実力のない主君を離れて転職する武士も多くいました。当然、忍者にしたって影に生きるなどという道徳はなく、実力でいくらでも出世しようと狙っていたと考える方が自然です。

 では、なぜそういう話が現代に残っていないのでしょうか。それは秀吉が徹底的にその話を隠したのではないでしょうか。出世は確かにできるかもしれませんが、忍者の出だと分かると他の大名が納得しないかもしれません。だから、彼は織田家の忍者や諜報機関に関する話を徹底的に消したのではないでしょうか。そして、豊臣秀吉が忍者であったことは、歴史の闇に消えていったのです。

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