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SHIFT Game Producer Meetup #8 明日から使える!ユーザーに愛される長期運営タイトルの作り方

こんにちは★SHIFTエンターテインメント業界ウェビナー担当の高木です!

今回で8回目となる、ウェビナー「SHIFT Game Producer Meetup #8」では、DeNA Games Tokyo 益田 氏、マイネット 取締役/マイネットゲームス 代表取締役社長 松本氏をお招きし、1LDK 朝岡 氏をファシリテーターに対談を行いました。

一部分ではございますが、その様子をぎゅっとまとめてお届けします!

《前回》
SHIFT Game Producer Meetup #7 新作ゲームの企画立ち上げからリリースまでの成功と失敗に学ぶ

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最初のテーマは「長期運営で重視すべき指標は何か」

(画面上)DeNA Games Tokyo 益田 氏
(中)1LDK 朝岡 氏
(下)マイネット 取締役/マイネットゲームス 代表取締役社長 松本氏

※以下敬称略

-最初のテーマ:長期運営で重視すべき指標は何か

松本:ロイヤルユーザー数を追っています。他社さんが1年以上運営したタイトルをM&Aや事業買収でお譲りいただいて、これまで80本ほど運営してきました。そのうち、ほぼどのタイトルも売り上げの86%~90%がロイヤルユーザーさん、つまりゲームの価値観に共鳴して定着しているユーザーさんによるものなので、その方々のデータを重要視しています。社内で定義も統一していて、単月1万1円以上課金して今月もログインしている人を「ESPU(Ever existed-S-Paid-User)」と呼んでいます。

※マイネット様ではお客様のことを親しみを込めて、『ユーザーさん』と呼んでおり、本インタビューではユーザーさんもしくはユーザーに統一しています。

朝岡:ロイヤルユーザーの切り取り方はDeNAさんも同じですか?

益田:基本的には同じです。弊社では「コアユーザー」と呼んでいて、会社としての共通基準はあるのですが、タイトルによって重視すべき指標の差分もあるので、ユーザーの切り取り方はタイトルバイでも細かく適正化しています。

朝岡:ロイヤルユーザーの動向はどのぐらいの粒度まで見ていますか?

松本:各タイトルでARPUは違いますが、1万1円で線を引いて、データも全タイトル同じところに貯めています。そしてどのタイトルでも使用するフォーマットは全部同じ。ESPUを軸にツリー分解しています。前月からの継続率やDAUとARPUに分けて、新規流入の何%がSPU(S-Paid-User)転換して、翌月ESPUになるのかなど。それを共通フォーマットに反映させて、全タイトルが同じように見られるようにしています。

朝岡:DeNAさんはどこまで細かい粒度まで見ていらっしゃいますか?

益田:粒度は様々ですがタイトル毎に設定した目標と需要のコアを追っています。お客様の欲しいものが無くなった時に、運営上のKPIの指標が止まるんですよね。

まず目標のコアは、ゲームにとってエンドコンテンツやお客様が魅力的な目標だと思うもの、その目標が途絶えていないかどうかをゲームごとに見ています。次に需要のコアは、魅力的な目標があるにも関わらずお客様が「達成するために努力しなくてもいいや」となると売りが立たない。だから、目標を達成するために欲しいものが途絶えていないかどうかを見ています。この2つが枯渇してないか。枯渇しないよう新しい価値をどうやったら足せるかを常に追っています。

質疑応答

―ここで視聴者からの質問にお答えいただきました。

「複数タイトルのKPI管理は大変だと思うが、どう管理していますか?」

松本:弊社は、社内システムなどは立てていないです。管理ツールを作るとその改修だったり運用だったりが大変じゃないですか。そのためスプレッドシートで統一しています。共通のフォーマットがあって、先ほどお話しした共通でデータを貯めているところから同じ規格でアウトプットする、というシンプルな形にしています。

ちなみにカスタマイズ性以外にもメリットがあって、スプレッドシートでアウトプットすることで、管理会計などのデータも全部接続しているんですよ。そのため経営陣がどこの売上が不調だというのを検知した時に、それが各タイトルのKPIツリーにまで繋がっている。現場がPLを意識できるようになるし、逆に経営陣がKPIを意識できるので、会話しやすいメリットがあると思います。

益田:弊社では管理ツールを作っています。日頃から新しい施策を入れるとか、新しい機能開発をする度にかなりデータ分析を重視する傾向にあって、専門の担当の方に「こういう項目が見えるように追加してもらえますか?」など対応しています。

朝岡:それによるメリットってどんなところが強いんですか? また、標準化の逆だと思うのですが…

益田:メリットとしては一個一個のタイトルの深いところまでしっかり知れるというところです。我々は「アップデートしたけど結果ってどうだっけ?」をちゃんと追うところをすごく重要に考えているので、タイトルごとの対策は立てやすいです。

朝岡:ロイヤルユーザーにいかに長く遊び続けていただけるかについて、戻ってきてもらったり、続けてもらったりという点でどんな風に考えていらっしゃいますか?

益田:まず戻ってくるところに対しては、運営の長いタイトルになると新規の流入や復帰ユーザーを獲得するって厳しいと考えています。そちらよりも今遊んでいただいているお客様に力をかけていて、先ほどの目標のコアと需要のコアの考え方が一番大きいです。目指したい魅力的な目標と達成感を小刻みに感じられるフィードバックが枯渇しないことを重視しています。

5年ぐらい前、カードゲームで対人戦とかソーシャル要素というよりも、強いボスを倒そうというものが増えたと思いますが、その時のゲームって小刻みなフィードバックがあまり無くて、ステージクリアくらいしかフィードバックが無かったんですね。魅力的な目標があってもクリアできないからしんどいというのが多かったと思うんです。

我々が運営しているブラウザゲームが長く続けられている理由としては、ソーシャル性が強いので対人戦で1位を獲りたいという点はもちろん、昨日よりも相対的に強くなれたという小刻みな成果を感じやすい影響が大きいと思うし、最近の人気のアプリゲームもそういったアプローチをしているのかなと。そういう意味で目標のコアというところで、目標と小刻みな達成感をどう表現するかはとても大事にしています。

朝岡:昨日よりも強くなれたというのは、どのようにフィードバックをしているんですか?

益田:『農園ホッコリーナ』の例で、最近バッジという仕組みを入れまして。図鑑をどれだけ埋めていくかが大事なゲームなんですが、今までは単に図鑑が埋まる数字が上がっていくだけだったんですよ。なので、何個達成したらバッジあげますというような嬉しいポイントを強調して作りました。


「長期間運用しているゲームだと、運用側の新陳代謝によって運営側のゲーム理解がユーザー側と乖離する。乖離しないように意識していること、仕組み化していることはありますか?」

朝岡:マイネットさんの場合だとM&Aをすることもあるので、そことの乖離など結構難しかったりするんですか?

松本:難しいです。これはもう徹底的に「歴史をちゃんと持ち帰ってくるように」と移管の時に伝えています。

益田:弊社では端的に言うと「遊び尽くせ」という感じです。自分がコアユーザーになる。マイネットさんとの大きな違いは、我々は基本的に本社とのやり取りをしているので、移管に対する時間が長いんですよ。そのため、ちゃんとその人の中に残す。そのためにはお客さんの気持ちになることを徹底的に重視しています。

松本:ゲームを徹底的にやり込むというのは本当に本質だと思っていて。例えばGvG タイトルってやり込みが重要じゃないですか。全員最高課金ユーザーの気持ちになるのはバランスが悪いので、プロデューサー・ディレクターが、最高レベルまで課金した時のユーザー体験をちゃんと分かっている状態にして、その他メンバーが月に数万円ずつ課金している人の気持ちを分かるようにして、無課金の気持ちが分かる人もいて。ユーザー体験を分けながら、みんなが考えている状態を作ることは工夫してやっていました。

朝岡:2社さんとも仕組み化やドキュメント化を大事にされていると思ったのですが、その風潮はどのように作ったんですか?

益田:意志です。自分達で引き取る時に「意志を持って作ろう」という。じゃないと今後苦労するという経験のあるメンバーが多いんです。最低限の物の作り方とか、コンフル(Confluence)にまとめてそれを見れば、大体最初のキャッチアップはできるとか、意志を持ってやっています。本音を言うとみんな苦手です(笑)。

松本:弊社は文化形成ですね。インセンティブを付けています。スローガンの一つに「シェアリング」というのを作っていて。知見や情報を可視化して、シェアすることは最高だという言葉を掲げているんですよ。

それを積極的に推進した人、成功・失敗事例を展開して事業部の宝にした人は月例賞で大々的に表彰されたりと、「売上を上げた」だけじゃなくて「シェアリングした」ことで受賞するようになっていたりします。

また仕事を属人化している人には機会が来にくい構造にもなっています。最近でもSEGA様から『龍が如くオンライン』の運営を預かるタイミングで、この人は引き継ぎ準備ができているから直ぐに新チームへアサインできるよ、逆にこの人は今の仕事にロックされているから輩出に時間がかかるよ、というコミュニケーションが多くあったりしました。次々に新しい案件を獲得してその運営をしっかり行っていくために、ドキュメントを作ることや仕事を自動化・効率化することに対してインセンティブがあるような組織設計になっています。


次のテーマは「損益分岐点をどれぐらいの粒度で見ているのか」

-次のテーマ:損益分岐点をどれぐらいの粒度で見ているのか

松本:損益分岐点、現場はもう完全に見ていますね。「自分のタイトルの損益分岐点いつ?」と聞かれたら全員答えられます。グロスのシミュレーションにかなり力入れているんですよ。シミュレーションを担う子会社も持っていて。各タイトル、2年後にグロスがいくらくらいになる予測なのかが見えているので、それをずっと意識して工夫し続ける。いつまでにどのくらい稼働を浮かせるとか、外注費を適正化するとか、オフショア化したらいいだとか、目標値が見えています。

益田:弊社ではプロデューサー・ディレクターは必ず見ています。ただ全員までは必須では見てないです。特に何もせずこのまま運用していけばというラインと、プロデューサーの意志も込めて「ここまで行きたい」ラインで見ています。

我々はアップデートを積極的に実施するため、前年度比のYoYをすごく大事にしていて、それが90%とか100%超えたら最高だよね、という世界でやっています。前年度は嬉しいことに100%超えのタイトルが出ました。ただ苦しいタイトルはコストの最適化もやります。やるとしてもお客様にちゃんと満足されるエンディング届けられるかどうかのところまでしか、コスト最適化はしないです。

朝岡:僕も実体験でお話しすると、ゲームの開発終盤やリリース3ヶ月、半年って「売り上げどんどん伸ばしちゃおう」という時期で、アセット追加や人もどんどん入れて。「あれ?やればやるほど赤字?」となる時があるんですよね。

僕が手伝っている色んな会社さんにお伝えしているのは、例えば「1個のガチャを追加するとなった時に、かかっているコストといくら以上になったら損益分岐点を超えるか」。「このガチャ作るのに2,000万かかった」という場合に、プラットフォーム手数料などを考えたら「実は3,000万以上売り上げ出さないと赤字」となっているケースが、たまにあるんですよね。会社さんによっては、それぐらい1個1個の施策や作っているものが効率的に作れているか、もっとうまく伸ばす方法があるのでは、というのは全然見られる指標かなと感じています。そこの重要性は当時は全く分かっていなかったです。

―ここでトークセッションも終了。

いかがでしたでしょうか?今後も「SHIFT Game Producer Meetup」を開催してまいります。ご期待ください!


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執筆者プロフィール:高木 真愛
WEB広告代理店で営業・広告運用を経験し、その後はしばらく接客業にて奮闘。現在はSHIFTにてセミナー運営・集客、バックオフィス業務、人事採用サポート、SHIFTnoteのライターを担当。

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