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クラウドが変えた世界とこれから ~メインフレームから量子エッジコンピューティングまで~

こんにちはスクラムマスターの伊藤です。

クラウド(クラウドコンピューティング)はご存知でしょうか。
実は筆者は以前、クラウドを利用したビジネス立ち上げの仕事をしていました。その際に、様々なクラウドサービスに試用・調査、ビジネス企画を行いクラウドに関する本の出版にも携わりました。

そこで今回はクラウドコンピューティングについて紐解いていきたいと思います。

※個人的に好きな雲は飛行機雲です

よもやま話

雲は英語でCloud(クラウド)ですが、Crowd(クラウド)という言葉もあります。 こちらは群衆という意味ですが、日本人はLとRの聞き分けが苦手なため同じに聞こえます。

クラウドファンディングは雲ではなく、群衆+資金調達です(Crowdfunding)

クラウドが変えた世界

クラウドの登場によって何が変わったのでしょうか。

様々なものが変わったと思いますが、根本的なところは所有から利用への変化だと思われます。

所有から利用へ

クラウドを車に例えてみましょう。
(愛読者には、またかよと言われそうですが)

写真の車はランボルギーニで、車両価格は5000万円ぐらいでしょうか。維持費も大変そうです。 クラウド登場前は所有するしか手段がありませんでしたが、クラウド登場後は利用することが可能になりました。比較してみましょう。

車をサーバーに置き換え、サーバーを所有することをオンプレミス、利用することをクラウドと置き換えるとしっくりきます。

誰でも最良のインフラを

所有のデメリットや利用のメリットは分かったけど、それが何に繋がるのかを、もう一歩考えてみましょう。 クラウド登場前は、一部の富裕層しか高級車に乗れなかった、つまり大企業などある程度体力がないと最適なインフラを構築・維持することが出来なかったわけです。

それが、クラウド後は極端な話、誰でも最良のインフラを構築することが可能になったのです。つまり、今までアイデアはあったが気軽に試せなかった。何とかリリース出来たが、ユーザー増大に耐えきれずサービスダウンしている間に大企業に模倣されたということが無くなりました。

これがクラウドが変えた世界であり様々なイノベーションが生まれるきっかけを作ったのです。

個人的な衝撃的だったクラウドの利便性

ものすごく主観的ですが、クラウド黎明期をこの業界でリアルタイムで体験していた筆者が感じた衝撃的なことを紹介します。今では当たり前なのかも知れません。

スペックアップがすぐ出来る

クラウドのインスタンスはストレージとは分離しているので、メモリやCPUが不足しているなと感じたら、一旦停止してすぐにスペックアップしたインスタンスに変更することが可能です。

1時間単位での課金のため、少しだけスパコンを使うといったことも十分可能になりました。

スケールアップも割とすぐ出来る

サーバーの台数を増やす、スケールアップもスペックアップほどではないですが、割と容易に出来ました。

設定を正しくしておけば最適な台数で運用が可能なオートスケーリングも可能で、クラウド前は最大のアクセス量を見積もって台数を確保するという無駄が大きいことをしてもなお、急激なアクセス増大には耐えられないという、ある意味ポンコツな運用でした。

バックアップはこんなに簡単で良いのか

バックアップって意外と面倒だったりするのですが、クラウドはボタン1つ、設定1つで簡単に出来てしまいました。

データベースのマルチアベイラビリティーゾーンの簡単さは失業者を生む

データベースを複数台にするのは高度な技術が必要でした。片方に書き込んでる最中に参照されたらなど、色々厄介でしたがデータベースには貴重なデータが格納されているため、絶対に欠損させない、いつでも参照できるように停止させないといった要件を満たそうとすればするほど複雑になり、構築経験があるエンジニアは貴重でした。 が、クラウド(この場合はAWSです)の登場でボタン1つで簡単に国をまたいだマルチアベイラビリティゾーンを一瞬で実現してしまうことを目の当たりにして、「これは失業者が出る」と心配したものです。

よもやま話

クラウド本の出版に携さわったという話をしましたが、著者名は会社で印税が入るわけでもなく もう内容も古いので特に紹介はしませんが、技術評論社へ打ち合わせに出向いたり 目次から作るといったお作法を学んだり興味深かったです。出版後に1冊いただきました。

クラウドの注意点

ここまで見てきたクラウドの特徴からクラウド(雲)というネーミングは言い得て妙だと思われます。

  • 雲は自在に形や大きさを変えることが出来る

    • スケールアップやスケールアウトが容易

  • 雲は突然現れたり消えることも出来る

    • 瞬時にインフラを構築したり、逆に撤退も容易

  • 雲に国境などなく何でも越えることが出来る

    • ネットワークがあれば世界中どこからもアクセス出来る

どこかからでも世界中を相手にサービスを開始できることは素晴らしいのですが、実は注意点があります。

雲には国境はないがネットにはある

これは、実際にあったことなのですがアプリのサーバー代をコストダウンするために国内のレンタルサーバーからAWSに変更したところ、ランニングコストは半分以下となり大成功と思いきや、中国から利用できないとのクレームが…。

中国の有名なグレートファイアウォールは様々なもの(Google、Facebook、Twitterも繋がらないため中国独自のサービスがあります)を遮断していますがクラウドの最大手AWSにも繋がりませんでした。

全ての国を検証している訳ではないですが、他にも検閲を行っている国がありそうです。雲には国境はないがクラウドコンピューティングには国境があるという皮肉な状態になっています。

グレートファイアウォールの回避方法は?

余談ですがグレートファイアウォールの回避方法も記載しておきます。
携わっているアプリやWebは、日本人向けなので関係ないと思っても、出張や駐在で中国にいる日本人も少なくありません。知っておいて損はないはずです。

まずはアクセス可能かどうかをチェックしましょう。
https://www.comparitech.com/privacy-security-tools/blockedinchina/

Google 先生はダメみたいですね…。

正直なところ、クラウドを移行するしかありません。日の丸クラウド(例えば、さくらインターネットやIIJなど)はグレートファイアウォールで弾かれませんので有力な選択肢の1つです。

問題は、AWSで作り込みすぎてしまい移行が困難な場合ですが、知る人ぞ知るAWS北京リージョンというものがあります。

現地法人を持っていないとアカウントが作れないなどハードルは高いですが、中国で展開したいのであれば検討しても良いかと思います。

よもやま話

一時期、中国から完全に排除されているGoogle先生はAndroid端末はあれども、Google Play Storeに繋がらない有様です。それに引き替え、Appleと中国との関係が良好(?)のようでiPhoneは大人気ですしApp Storeも使えます。

クラウドのこれから

クラウドはこれからどうなるのでしょうか。いくつかありますが、一番大きなこととして、所有から利用へ、そしてインフラになると考えています。
電気や水道のようにインフラ、なくてはならないものになると考え意識することがないものになっていくと考えられます。

既にストレージを中心に意識しない形で個人利用も増えてきていますが、NASやTV録画のストレージもクラウド化されてくると考えられます。
そして、クラウドが当たり前になってくると、現在も電力会社やインターネットプロバイダのように乗り換えも容易になってくると考えられます。

そして、もう少し先を考えてみましょう。

集中と分散の繰り返し

コンピュータの歴史は集中と分散を繰り返してきました。
最初はダム端末言われるクライアントとメインフレームのホストコンピュータ時代から始まり、クラウド時代は過ぎてスマホやIoT(エッジコンピューティング)にて分散の時代になっていると考えられます。

※筆者作成

それでは、未来はどうなるのでしょうか。

再び集中の時代になるのであれば量子コンピュータやAIをクラウドで利用する時代になると考えられます。ネットワークの進化も伴いクラウドゲームも市民権を得てきていますが、現在はセキュリティによるメリットで企業で使われているシンクライアントも、むしろシンクライアントの方が快適という時代になり個人利用が当たり前になるかも知れません。

そして、ありそうで無いシンスマートフォン(念の為ですが、ここでいうシンはThinです。新しいのシンではないです)が登場するかも知れません。 更に先は、ガートナーの受け売りになってしまいますが、再び分散となりエッジコンピューティングが進化し、量子エッジコンピューティングになるのではと予想されています。

ところで、量子エッジコンピューティングとは一体?と少し話題になっていました。

普通に考えれば量子コンピュータを分散してエッジコンピューティングとして使うということでしょう。量子コンピュータのクラウド利用が一般的になった後に、量子コンピュータの小型化、低価格が進み各企業のサーバールームに設置できるようになれば利用料を払わずに量子コンピュータが使えるようになるのでメリットがあるのかも知れません。そもそも、量子コンピュータを何に使うのかですが、恐らく各企業がAI(例えば汎用人工知能)を利用するにあたって学習データを外部に置きたくないといった需要があるのかも知れません。

引用元:日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2021年 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20211028
こういっては何ですが、ハイプ・サイクルに書かれている用語を知らなくてもなんら問題ありません。ほぼ消えます。ただ月データセンターはロマンを感じますね。

よもやま話

本ブログはなるべく多くの方に分かるように平易な書き方を心掛けているのですが、後半は難しい用語が連発してWikipediaリンク祭りになってしまい申し訳ありません。

それだけIT業界は意味不明なバズワードが横行している証左なのかも知れません。

筆者が学生の頃(まだスマホどころか3Gが間もなく開始)、ゼミでこれからユビキタス時代になるが、どういった社会になるかという課題があり、「紙とペンが無くなる」、いつでもどこでもネットワーク経由で最高峰の頭脳が使えデータの入出力が出来るようになるといったレポートを書いたと記憶してますが、まぁ、そういった時代になりつつ(なった?)かなと思いますが、このユビキタスは、マルチメディア → ユビキタス → クラウドコンピューティングと言葉を変えて生き残った由緒あるバズワードではないかと思っています。

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執筆者プロフィール:伊藤 慶紀
大手SIerにて業務用アプリケーションの開発に従事。 ウォーターフォールは何故炎上するのか疑問を感じ、アジャイルに目覚め、 一時期、休職してアメリカに語学留学。 Facebookの勢いを目の当たりにしたのち、帰国後、クラウド関連のサービス・プロダクト企画・立ち上げを行う。 その後、ベンチャーに転職し、個人向けアプリ・WebサービスのPM、社内システム刷新など様々なプロジェクト経験を経てSHIFTに入社。 趣味は将棋、ドライブ、ラーメン、花火、読書など

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