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10-2 誰も悪くないんですね?

 娘と自分のちょっと変わった相性を「不幸」と捉えてしまった私だが、それで産後鬱が酷くなったかと言われると、そうでもない。むしろ、「救われた」想いすらあった。

 西洋占星術で「娘と私は難しい相性」と指摘されるまで、私は「産後鬱になり、育児が上手くいかないのは、私が駄目な人間だからだ」と自分を責めていた。「私が悪い。私なんていなくなったほうがいい」と思い詰めると、それこそもうとち狂ってしまいそうだったので、私は責任転嫁をし、今度は「娘が悪い」と思おうとした。それで足りない時には、「旦那が悪い」「家が悪い」「社会が悪い」「時代が悪い」と、とにかく悪者探しばかりしていた。

 でも、育児が上手くいかない理由が「娘と私の相性に問題がある」と分かってから、気が楽になった。「相性」が「悪い」のであって、娘や私の人間性そのものが「悪い」わけではない。持って生まれた性質は悪くないのだけれど、その「相性」がたまたま「悪かった」だけなのだ。よって、誰も悪くない。私も悪くない。もう、自分や娘を責めなくていいんだ。そう思うと、肩の力がかなり抜けた。

 これは、人間関係に悩む人が陥りがちな罠ではないかなと思う。相性に問題があるだけなのに、自分、あるいは相手の人間性そのものが「悪い」と思って責めてしまうこと。悩んでいる方は、「子供と親」って、「夫と妻」って、所詮「こんなもの」と一般論で片づけてしまわず、「自分の場合、どうなのか」と占いやカウンセリングなどで探っていただけると、案外謎が解けていいんじゃないかなーと、個人的には思ってます。はい。

 それで、「相性が悪い」だけで、「人間性そのもの」は悪くないと思えて、多少楽になったものの、それでもまだ「相性が悪い」と思っていたので、苦しさは残った。だって、一人一人の人間としての娘と私は悪くないけど、「一緒にいると苦しい」問題は片付いていなかったのだから。


 これを、「相性は悪くないですよ。むしろ、良いと思います」と一言で一蹴してくれたのが、T店在籍の占い師さん。私は、普段あまりやられないというスカイプ鑑定を、「遠方で東京に行けないけれど、どうしても育児が苦しい」とごり押ししてお願いしたのだ(その節はありがとうございました)。

 そこでもやはり、「娘と私は全く違うタイプの人間」であることが指摘された。そして、「娘さんは、あなたの人生の目的を塗り替えて、新しくしてくれる存在です。既存のものが壊されるのだから、最初はショックが強いかもしれないけれど、後々になったら『良かった』と思えると思いますよ」と言われた。

 私は「この相性を『新しい風を吹き込んでくれる良い相性』と見るか、『自分が持っていたものを壊してしまう悪い相性』と見るか、見方によって幸不幸は真逆になるのだ」ということを痛感させられた。娘は悪くない。私も悪くない。そして、相性だって悪くない!


 ただ、欲深い私はその鑑定だけで満足できず、「まだ苦しい。まだ何か出てくるんじゃないか。もっと新しい発見があるのではないか」と、もう一人、T店在籍の占い師さんに、メール鑑定を(ごり押しで)お願いした(正式メニューではないけれど、「遠方で緊急」とごり押してしまった。ありがとうございました)。

 そこでもまた指摘された。やはり、「娘さんはあなたに大きな変化をもたらす存在です」と。そして、「娘さんとの関係性は別に絶望的でも、避けられない不運というわけでも全然ありません。どちらかというと、運命の転換期。それを不幸と取るか幸せと取るかは価値観とこれからにかかっています」と書かれていた。私は涙が出そうになった。

 メール鑑定には、こうも書かれていた。「娘さんが生まれたばかりの時は、負担や変化が大きくてなれないこと、上手くいかないことばかりで大変ですが、その内、良い事として転じていきます。変化に慣れて娘さんのことを把握できるようになる、多分、言葉でコミュニケーションができるようになる5歳から小学生くらいの時になれば、『この子を産んで良かったなぁ』と思えると思います。基本的に良い配置に娘さんの星はたくさんありますので、大きくなってから『育てるのが大変だったけれど、いい子に育ってくれてよかった』という結論になっていくのではないでしょうか」と。

 これはもう、本当にこの通りになった。勉強して理屈が多少分かるようになった今でも、「西洋占星術スゲー!」と感心してしまう。娘はこの本を執筆している現在、小学1年生の6歳だが、5歳で年長になったあたりから、(娘に関しては)子育てが急激に楽になった(息子は別ね)。年長になって、娘に「理性」のようなものがちゃんとでき、一人の人間同士として日本語できちんと会話ができるようになってから、急に精神的に私が楽になったのだ。肉体的な大変さはあまり変わらないけど。夜テレビ見ながら寝てしまい、重たくなった体を担いで布団に運んで行ったり、朝、忙しい中、登校時間ぎりぎりになって「あれがない!」と騒ぎ始めたり。頼むよ、小学生。

 もちろん、それでもまだ6歳なので、その我儘に振り回されて精神的にも疲労困憊することはあるのだが、少なくとも、娘が赤ちゃんの時に感じた「一緒にいるだけで恐怖」は、今は全くない。娘のことを、無条件に可愛いと思える。もうそれだけで幸せだ。その上、最初は「自分の事しか考えられない子ではないか」と思っていたものの、今は自分を大切にしつつも、他人のことを考え(そのバランスに悩んでいる時はあるが)、家でも私が疲れていると弟の面倒を積極的に見てくれる、優しい子になった(私が疲れやすいから、多少無理してるかもしれないが)。『育てるのが大変だったけれど、いい子に育ってくれてよかった』という言葉は、そのまま本当になった。


 ちなみに、息子と私の相性は、占い師さんもびっくりするほど「良い相性」である。相性に「良いも悪いもない」と言うならば、「一緒にいて楽な相性」とでも言おうか。息子は、私にとって無条件に可愛く見える相性なのだ。「娘さんの存在が衝撃的すぎたので、ボーナス的な癒しの存在」と言われる占い師さんもいた。

 ただ、その癒しの存在も、付き合っていく上で苦労がないわけではない。むしろ、寝つきが悪く、折角寝たかと思ったら、夜中に「もっと大きいの食べるー!」と謎の寝言で泣き叫び、寝不足でぐったりする母の上に、朝、「おかーしゃん、おきてー」と容赦なく乗っかってくる、苦労の多い存在だ。3歳になってもイヤイヤ言うし、好きなものを見つけると周りの危険を顧みずに突進していくし、大好きな消防車を見ると動かなくなるし、大変さは山ほどある。「二人だけでいるのが苦痛」だった娘だが、今では「娘と二人だけでお出かけすること」のほうが癒しになっている。人生、数年で大きく変わるものだ。今では本当に、心の底から、「娘を産んで、娘が娘でいてくれて、良かった」と思っている。あ、息子のこともそう思ってるよ。うん。かーちゃん、本気。時々すんごい疲れるけどね。人間だもの。


 「相性が悪い」と言われる仲でも、工夫次第で上手くもいくし、「相性が良い」と言われる仲でも、一緒に暮らすのに努力がいらないわけじゃない。


 結局、本当に「相性」に良いも悪いもないのだと思う。ただ、娘と私は「一緒に暮らしていくのであれば、多少どちらかが我慢したり、時間をかけて慣れていったりするなど、工夫が必要な相性」だっただけだ。そして、息子は「一緒にいても、精神的負担はあまりないが、肉体的ダメージが大きい相性」となっている。男子だから仕方ない。車にひかれたり、崖から落ちたりしないよう、命を守るのに母親は精いっぱいだ。

 人と人の相性は、悪いばかりの相性もなければ、良いばかりの相性もないのだ。

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