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定年教師の独り言 vol.13 苦い思い出「実習担当」

 保育教諭3年目の娘のクラスに、2年連続で教育実習生が配属されているらしい。仕事のことを相談してくる子ではないので、「らしい」としか言えないのだが、このところ毎日寝落ちしているリビングのテーブルに、実習日誌があるから確定だ。娘は赤ペンで、なんとコメントしているのだろう…。

 自分にも、何度か実習生を担当した経験がある。最初は20代の終わり。そしてそれは、少し苦い思い出として残っている。

 結論から言えば、実習生に「城田先生の学級経営は納得いかない!」と言われてしまった。先輩や若手職員が用意してくれた実習打ち上げの席上、なかなかに出来上がった実習生が絡んできた。彼曰く、「城田先生は冷たい」

 彼は実習中、ある女子グループから、グループ内のもめ事について相談を受けていて、自分もそれには気づいていた。「城田先生には相談したの?」彼がそう尋ねると、「だって、城田先生聞いてくれんもん。」だったとのこと。「何で、親身になってあげないのか」彼の自分に対する不満はそこだった。

 女子グループの言い分は、ある意味正しい。勿論、相談を無碍にしたつもりはないが、当時の自分は、解決策を与えるよりも、まず自分たちで考えさせたかった。だから「どうすればいい?」の質問に、「あなたたちはどうしたい?」と、逆質問を返すことがあった。望んでいる答えが返ってこないことに業を煮やした子どもたちは、実習生に不満をぶつけたらしい。

 自分なりの思いを反論したい気もあったが、雰囲気を察した先輩が間に入り、引き取ってくれた。以来彼との交流はない。無事採用試験を突破したと噂には聞いたが、どんな先生になっただろう。自分を反面教師として学級経営をしただろうか。

 経験を重ねていく中で、当時の自分の未熟さが自覚できるようになる。「自分たちで考えさせる」ことは、今でも間違っていないと思う。ただ、「自分で考えてごらん」ではダメだ。ヒントも見守りも、励ましも必要。少し高等テクだが、最終的にうまく行ったときには、あたかも自分の力で解決できたと思わせるような、「仏の一押し」が理想。初めて実習生を預かった頃の自分には、その力はなかった。

 さて、娘よ。
 実習生にどんな姿を見せているのだろう。理想の先輩の姿を見せられなくたっていい。反面教師として、実習生に考えるきっかけを与えるだけでもいい。自分を追い込み過ぎず、素の姿を見せればいいのだ。あと少し。がんばれ…。

 それから…
 そろそろベッドで寝てくれない?

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