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Märchen von Richiten (VIII)


前回「青き伯爵の城」



「磔刑の聖女」

イントロ

静寂のピアノ
でもちょっと旋律はキラキラしている

多分 黄金の装飾とか繊細な色彩とか何もない

靴音の反響は少ない 小さな教会
素朴で石造りの御像

彼女が纏う薄らとした埃は
純潔のベールにも見える

閉ざされた重い樫の扉が開かれて
冷たい外気が流れ込む

ベールがひらみ
彼女の俯く横顔が透けて見えた

埃が宙を舞い
月光の最中だけに淡く煌めいて
闇に消えていく みたいな


靴音だけが聞こえる
静寂の空間の旋律

弦弾きの足音か 彼女の足音か 重なる


重く感情のないコーラス

自室に敷かれた絨毯を降りて
冷たい石の廊下に出る

すれ違う者たちは避ける様に
冷たい視線だけを残して一礼する

誰もが
彼女のこれからを知り得ているような奇妙さ


鈍色の足取り

鈍色の足取り 決意で進める
背中に風を感じて 一度だけ振り返る

宵闇の匂いは 不思議と懐かしく
背中を押してくれる そう そんな気さえしたわ

鈍色?!

、、、、鈍色、、、
灰色の上に色を湛えるとそうなるのかな

追い風は鳥さんにとっては飛びにくいはずから
行かないで欲しい という引き留めにも感じけど
背中を押された気がしちゃったか、、、

伸ばした手が掴めずに、、、皮肉

扉が開くとドラムは
軍歌のような 凱歌のような勇ましさ  
支えるはずの低音もただ前へ前へ
ストリングは攻め立てる
押し出される様なベース

響きのないギターがキャリキャリしている
その高い音を出すならきっと
しなやかで細い弦を使えば良いのに
硬い弦をギリギリまで張って出すような感じ
彼女のお声に反して荒々しい
この弦に強く爪を立てるような抵抗感がある
身動きが取れない中に奏でられる音のようで切ない





背中からの風
鳥は飛べないけど 人はおされる

それでも足音は止まらず

振り返る時だけ止まる 丁寧な音作り

押し寄せる悲しみ

押し寄せる 悲しみに 独り震えて 指でなぞる
遥か遠い約束
沸き上がる 憎しみの 脆く歪な
刻の果てに闇を見つめ接吻

今 でも忘れられない

突然のおしゃれパート ジャズっぽい
ジャズは志田的に
「不自由への抵抗」とか「求める自由」みたいな
音楽の中だけでも自由でいようぜ
みたいな感覚があるから
シンフォニックな音楽からの落差がとても良い





詩的なメロディが崩されて
こんなに響きが美しい人のお声で
局所的に言葉を詰め込む譜割り?が
珍しい気がする


ここで志田の大好きウォーキングベース
孤独なステップ

メルさん ギェェェェェェ

メル、、、さん

待ってくれよ

やっぱり合わないな 君たち、、、

メルさんが半拍くらい遅く入るのも
伸びがないのも
唯一ユニゾンする 歪な〜 でさえ合わない
掛け合いを成してない
なぜ二人の旋律が重ならない
目がこんなにも合わないのか
ことごとく見ている方向が違う

扉が開く
殿下のトランペット
ファンファーレのように勇ましいが
強さだけで厚みはない音
貫禄はない 結構お若い感じかな
でも到底逆らえる相手ではない

そんな管楽器に迫りゆくストリングス
迫る宣告 と 彼女の気迫みたいな
しおらしさ や 貞淑さなどない
対抗するような振る舞い

真実の愛

愛を偽って生きるくらいなら
真実と共に死すことも厭わないわ


「嫁ぐ気はございません」までは
立ち向かっているというか 凛としていたのに

?????

ストリングスが盛り上がって周囲の時間が止まると


突然ベトさんワールド展開というか
周囲を置いていく感じ

これはなんだろうか、、、、恍惚、、、、かな

この時代はこうするしかなかった とか
自分の死を以て主張したいとかでもなくて

真実の愛を貫いて死ぬことが
この鳥籠の中で最も美しい
だから私はそうする とでも言う
ような

ベトさん、、、、ベト、、、さん

ギギギギギギギ 志田の限界が近い

見つけたの野ばら

二人で見つけた野ばらが
君を包むことを願って墓標の周りに植えたけど

結局 遂の終まで咲く事はなかったね……

もうずっとベトさんワールドだ
微笑みさえ感じる

てのひらに溜めた水に歌いかけるような
お歌の焦点の近さ

手に入ってないって言いながら
手の中にあるものに語りかけるみたいだ



月光に恋をした

月光に恋をした鳥籠の白い鳥は、
地に堕ちると知りながら、最期まで羽ばたくよ。
だからこそ宵闇に唄うのは、
憾みの唄じゃないわ……。

懐かしい夜
月光の下に恋をした鳥と羽なのか
月光、、、、メル的なのは鳥なのか月なのか

メルツ君が生きている時は二人で鳥だったけど
亡くなってからは月なのかな


月なのか羽なのか揺らいでいる 謎い

二人がセットじゃなきゃ飛べないのに
というか宵闇に飛べるのか謎なのに

Märchenの中で
朝のSEに散々 鳥の鳴き声を使っているのも
ここに効いてきて
本当に Revo やっている

どうせ鳥は闇を飛べないんだろ
鳥は朝に飛ぶんだろ

ああああああ

不穏だ、、、、極めて不穏だ
これが月光に照らされて凶行に羽ばたいたというのか

憾みの唄ではない、、、、だと?!

復讐キャンセル?

野ばらか!そのお花は!!

え、、、、え!

待ってくれよ

なるほどじゃないぜ メルさん

?????????

結婚を断ると磔になる?
なるのか

なるのか?

いや不穏な羽ばたき、、、、死と引き換え

メルさんが復讐に難色を示している!
珍しい、、、レアメルだ

まぁ良くない!おめぇだよ!

やっぱり復讐キャンセルだ!

そんなことしたらメルさんは、、、
え?


背負うべき立場と運命?????
それはやんごとないお嬢様の立場と
愛しい人とは結ばれないという運命?

貴女はそれを背負わずに飛ぼうとしてるぜ

え?


え???

ベトさんは背負ったおつもりで
運命のままに飛ぶおつもりでいる?

え?

「いいえ」 否定と共にウィンドチャイム
イントロの寂しげなあの冷たいピアノの旋律に
バイオリンの強かにも澄んだメロディが加わる弦弾きさんが御像に捧げる旋律と
教会の静寂の旋律とが溶け合う

なんという演出

ふぁぁぁぁぁぁぁ 音楽家ッ!

この旋律が小さな教会の空気を振るわせて
窓に差し込む月光が煌めくのか
埃が舞うような参詣のない教会だからこそ
光の筋が可視化されるという

Revoさんは本当にチンダル現象が上手い

天使の彫像も、、、、天使の彫像?????

Revoさんはなんか見たことがあるのかな
教会建築とかお好きなのかな

御像×チンダル現象 のスペシャリスト


生を描くとか死を描くとか超えて
Revoさんは人間を描くのがうますぎるんだけども

別にチンダル現象だけじゃなくて
キュピーン⭐︎ みたいなのとか
霹靂みたいなのとか
六等星の輝きとか

世界の光と闇も
物理的な光と闇の対比も上手すぎる


会いにきてくれた?!?!

見えている、、、、な、、、、え!


そんなになってまで?!?!
どんなになっちゃってるの??


え、、、、え?原型なし?


確かにメルツ君の原型は、、、あんまりないか
もっとどうにかなっちゃってるの?!

でもわかるんだねベトさんは、、、



グッッッ

焔を無くした

焔を無くした君を縛る 冷たい鎖は
愛を亡くした 君を想う二人の愛憎

何かが落ちた

??????
なんか音作りもお声も焦点がより近くなった

嘗てないほどお優しいお声で
膝をついて転んだ幼子をあやすみたいな

慈悲、、、というか うーん
母の無償の愛みたいなのに近い

「触れたい」みたいな 恋心より
「庇いたい」みたいな眼差しを感じる
髪を漉いて濡れる目尻を指の腹で撫でたい
冷気に晒される頬を手で包み込みたい  みたいな

あれ、、、、???
ベトさん????

Märchenのメルさんに誰をみているの

鳥は空へ

鳥は空へ 屍体は土へ 摂理を裏切り続けた

?????
やっぱり恋愛の愛ではない何かが混ざっている

これは転んだ幼子に
「走ってはダメよ」と言い聞かせる感じだ


夜は明けて

夜は明けて 終わりの朝へ 次の別離こそ永遠――

うーーーーーーーんんんんんんん????

やっぱりお声が
転けたちびっ子を助け起こした感じなんだよな
「怪我はない? 泥を払ってあげましょうね」
「ここで走っちゃダメよ」
「おうちはわかりますね
大事なものをもう落とさないように」
「私はもう行きますからね 」

みたいな
摂理に戻しましょうと、、、、、

唯の

でも…

後悔などしていないわ 嗚呼 これが 私の人生
《門閥貴族の令嬢》 でも
《七選帝侯の息女》
でもないわ 私は《一人の女》
唯 君だけを愛した――

唯の【Elisabeth】

すげぇ、、、、気持ち良すぎるメロディ

美しい音を耳に突っ込まれて
正しく耳が喜んでしまう
あ、、、、ああ、、、、美しい、、、

志田は美しいものを聴かされている

志田もこの恍惚に漂白されそう

盛り上げが完璧
歌い上げに適しすぎている
こんな旋律何処にあったんだ

カノンのようなハーモニー
と涙のトッカータ、、、

良い

もう自分に言い聞かせるみたいな
決意で進めるんじゃなくて

宣誓というか
やっぱりそれが一番美しいものだと
知っているみたいだ

翼はないのに
ハープのグリッサンドも
ストリングスの駆け上がりも翼を広げたかようで

幼子に膝をついていたのが
すっと立ち上がって
その先に想い人が居ると知っていて
今度は一度も振り返らずに
階段を一段ずつ
一歩ずつ上っていくみたいだ

まて、、、、羽ばたくんじゃなかろうな


愛したー の後のオルガン系?ベース?の低音が
メルさんの低いハミングのお声に
近い響きをしていて心臓に悪い

な、、、、なんだこのSEは


帆布を張るような

羽ばたき、、、、、?
いや強めの抱擁にも聞えるな、、、、


あっああああああああああああ

ギギギギギギギ

その階段の先で羽ばたいて
月光を抱きしめども掴めるものはなく
精神はメルさんと抱擁できて
肉体は土へ、、、のかな


御像の後ろから差し込む月光が
メルさんを包む
その広げた腕は羽ばたくようでもあり
磔のようでもある



耐えがたい

書いていて打ちひしがれる

志田の咬合力がジルコニアをも砕きそう


こんなにも 儚く 切ない物語を
見方によっては愚かな彼女を
美しいとしか言えない





メルさんを置いて
彼女が光の柱に消えていく
ほこり舞う教会に差し込むあの光のように

メルさんは抱きしめ返せたのか、、、、、



スーパーエリーゼタイム


ベトさんが羽を広げた旋律とは逆に駆け下りる

教会を離れる二人

エリーゼさん怒ってらっしゃる
いやそうだよな、、、、

メルさんさっきからおかしいよな

何を真に受けるとダメなんだ
自分を縛るのが二人の愛憎だということ?
メル的な存在をエリーゼさん以外の方法で
愛してくれた人がいたこと?
真実の愛を貫いて死ぬのが美しいということ?
復讐をしないということ?

エリーゼさんの願いはきっと
ずっと一緒にいる事

確かに全部 真に受けられると困るな

記憶をなくしたことがある人に
「わすれましょう」は鋭利だな

あんな女とけなして
貴方がおかしいといって
何でもないみたいに忘れさせようとして
こんなにもエリーゼさんが憐れにも必死に縋る
人間らしさ、、、、


今までエリーゼさんの振る舞いは
メルさんより精神的に上位に立っていたというか
エリーゼさんに依存していたのはMärchenメルさん側
のような雰囲気だったのに

それが「もういいんだよ」の一言で崩れてしまう
この一言の重さよ

エリーゼさんがメルさんと一緒に居るために
メルさんの存在のために
愛がために
メルさんのためにやっていた復讐を

メルさん自身に「もういいんだよ」と言われてしまったら
エリーゼさんはその存在そのものを否定する残酷さ

でもこの一言に込められる
メルさんからエリーゼさんに向けられた
「私のためだったと知っている」
「君につらいことをさせていた」
「ありがとう」
「私も(メルさんなりに)あいしている」というニュアンス?

この一言に
この優しくも残酷な一言が
メルさんを大好きなエリーゼさんにとどめを刺す

この言葉はきっと
二人で復讐をして回った過程がないと出てこないし
人間の生き様と触れてメルさんの精神が醸成されて
「復讐も愛の形」を経て
「復讐しない愛の形」を知りたどり着く答えみたいな
メルさんから出た
エリーゼさんへの紛れもない愛の形で、、、、

メルさんがそう言うのが分かっていて
「嫌!」と
「言わないで」と言っているみたいだ


しかもこのエリーゼさんの裏の音楽が
宵闇の唄の疾りだす旋律で
ドラムとか宵闇の唄の怒濤のエリーゼさんパート

人形の陶器の肌が割れて
からくりが壊れるような音

エリーゼさんは壊れてしまったのか、、、、
もともと動いてしゃべるのがおかしいのだが

何とも切ない、、、、志田はエリーゼさんにも
幸せになってほしかったぜ、、、、




Richiten 


このお声で唄われる彼女の「真実の愛故の死」に対する恍惚さには
背筋を冷やすものがある

志田はJoelleさんの「独りよがりな自分の幸福」を
彼女の声で聴いてみたいと言っていたが
こう来るとは思わなかった

志田はどうしても彼女の物語を
幸福だと言えない

でも美しく幸福に満ちて輝いている

胸が締め付けられる

そしてRevoさんがえげつない
彼女のお声の美しさを美しい音楽に乗せることが
まさに彼女を聖女として祀るようで
そして志田もそれに加担しているかのようで

耐えがたい


ベトさんは「彼は私がこうすることを望んでいる」かのように
その一瞬の抱擁のためにメルさんも望んでいなかった結末

苦しい

最後の最後まで二人の愛がすれ違っている


彼女は家の決定に逆らい磔刑になったにもかかわらず
なぜ聖女様と呼ばれているのでしょう

そもそも本当に磔刑によって亡くなったのでしょうか

志田が聞く限り磔刑にされる描写は
「磔にしろ」という殿下の言葉だけ

殿下が兄なのか父なのか
複雑な家庭環境はよく分からないが

彼女のお母様が身分を偽ってまで守ろうとしたもの
それはきっとベトさんの命

この狭い鳥籠の中でを振り返ると
その複雑な出自のせいか 何かしらあって
生きているのに土に埋められた
「屍体は土へ」の摂理に反した存在だったベトさん

彼女を掘り出し
賢女であるメルツ君のお母様に助けを求めたのは
身分を偽って城を抜け出したお忍びの侯妃なのか
訳ありの侯女なのか、、、、


自分で羽ばたいたベトさんを見て
「その結果がこれだ」と殿下は笑っている

そして磔にしろ と命じている

やんごとない家にとって
きっと彼女が選んだ結果は隠したい事実でもあり
それを上書きするように
彼女の体を死後、磔にしたのかもしれない

が、志田の知る限り磔刑という方法は
極めて不名誉 というか 侮蔑の対象になされる
いにしえの経験者にキリストがいるので
なんとなくセイント感があるが

殿下が彼女に対してこの方法を選んだことには
まさに「殿下っ」と言わざるを得ない

そんな彼女が聖女として教会に祀られる
もしくはまつりあげられるに至るには

彼女の死後
「愛を貫くことこそが神聖」のような価値観で
彼女の物語がこの音楽のように美しい音色で語られるまで
相当な時間がかかっただろう

殿下は単に家を守りたくて
自分の家の者に厳しい刑を下したのかもしれないが
公にするにも
求婚してきたラインさんにも
彼女の死の理由を波風立てぬようにいくらでも偽れたはずで

志田の想像だが
彼女の死因自体は磔刑と偽ったけど
「愛を偽らない故の死」は偽らずに
愚かな者として磔刑を選んだことが
後世に「悲惨な時代に愛を貫いた女性」という歴史を残し
恋愛の自由や女性の自由を訴える者が居る時代に
愛を貫くことこそが美しい と思える時代に
彼女を聖女として教会が建てられ
そんな彼女を拝むようになったのかもしれない

そしてまた悲惨な時代は繰り返され
愛を貫くより 生き残らなければ
死に意味などない
生者こそ勝者だ みたいな
「愛」でどうのこうのと言ってられないような時代が来る

すると徐々に彼女への信仰は薄れ
参詣は途絶え
忘れ去られる

そんな悲惨な時代にも
争奪から離れて
手には武器ではなく楽器を握る者が居て

流離うように
愛を唄うように音楽を奏でる者が居て

御像に月光が差し込む夜が
聖女が愛した者と抱擁を交わす夜が訪れる

彼女の神聖さを 尊さを 愚かさを
噛みしめるように
聴く者が涙をこぼせるのは
この眩い時代に生まれた私だからなのかもしれない



ここまで読んでくださって
誠にダンケシェーン!

次回
Märchen von …「暁光の唄」

志田はもう限界よ!

余談


志田です

満身創痍です



先日旅から帰国し、昨日卒業式を終え
怒濤の2週間を過ごしました

Märchenとは関係ありませんが
旅先でもRevo音楽の感想を一稿書き上げましたので
お楽しみに!








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