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行こう

「あそこまでいくらだ?」

改札をピッとするカードを忘れて
いつぶりか思い出せないほど久しぶりに切符を買った。

電車を見送ったホームでは
どこに立って次の電車を待つべきか
少々戸惑ってしまう。

よかった。座れた。

あまり良くないとは思いつつも
どんなひとが乗っているのか
気づかれないようにチラチラと見る。

安心した様子で彼の肩に身をゆだねる彼女。
彼女?彼女でいいんだよね?

自然と目が合ってしまうあの人は
わたしと同じように誰かのことが気になるのだろう。


乗り換えた車内から外を眺めていると
よくある景色だけとどこか違っていて。

流れる知らない景色を
見ているのか見ていないのか
そんな感覚で揺られながら好きな音楽を聴く。


女の子が洗濯ものを干す姿をみて
「あ、お手伝いかな?洗濯担当なのかな?」
と勝手な想像をして楽しむ。

耳に流れてくる音楽に
川という歌詞が出てきた瞬間目の前にも川が現れ
そんなことに幸せを感じる。


先程、知らない景色を眺めているような言い方をしてしまったが、実はこの辺りは何度か見たことがある。

ここから先が、ほんとに知らない景色だ。

あと何駅?ここはどこ?



習い事へ向かう親子や
派手な装いのマダムが降りていく。

空席が目立ってきた。

みんなが向かわない場所へ向かうような
この感覚がすきだ。

そろそろイヤホンを外して
流れるアナウンスをBGMにする。


初めて降り立った駅はなんだか空気が新鮮で
「これから冒険のはじまりだ!」
なんてわくわくする自分を、少し可愛く思う。


さぁ、

行こう。