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夢
やったことない作品の作り方と収録の仕方をしたので、お耳心地悪かったらすみませんゴメン
〜〜〜〜
-1-
すーっ。ふーっ。
散らかった部屋、ビール、缶詰、そしてタバコ。
明日になればまたスーツを着て適当にやり過ごす。
嫁さんをもらったやら、父親になったやら、周りからのまぶしい類の話はもう落ち着いた。
「はぁ。便所すらめんどくせぇな。」
カタンッ。
ポストに何か入ったようだ。
いつもなら放置して溢れ返ってからまとめて捨てているが、今日は妙に気になった。
引き寄せられるように手に取った手紙には
【船井義太郎様
あなたが諦めたことはなんですか?
ここではやりたかったことが体験できます。
お待ちしております。】
と書いてあった。
「はっ。うさんくせぇな。」
とは言ったものの捨てる気にはならないくらいには気になっていた。
-2-
『先生ばいば〜い!』
「ばいばい!また月曜日ね!」
園児を見送った後、掃除をしながら思い出すのは昨日届いた不思議な手紙のこと。
「私が諦めたこと、やりたかったことかぁ。」
ほうきを持つ手を止めぼーっと園庭に目をやる。春から夏の花へと移り変わってゆく。
『時本先生、終わりましたか?』
「あ、もう終わります!」
-3-
「あっははははは。
あ、あかん。普通にわろてたわ。」
「今のツッコミはワードもおもろかったけど、間ぁやな。間が絶妙やったわ。」
ファミレスで動画を見ながらお笑いについて考える時間は俺にとって趣味であり、趣味…であり…。
趣味かー。
コンビ名もあったんやけどな。
「どうもー!シューシューロケットでーす!」
ダサイんか?これ。だからアイツもコンビ解消したんか?修一と秀太でシューシューやん。ええやん。チャレンジする前にやめやがって。
「はぁー。仕事探すしかないか。就職なぁ。」
あんまいアイスコーヒーが飲みたくなってドリンクバーへ向かう。
知らんおっさんと同時にボタンを押しそうになって、思わず手を引く。
こういうときに指重ねるくらいの勢いがないからあかんかったんかなー。
席に戻ると1通の手紙。
「うーわ、これ誰が置いたん!おもろ。」
-4-
すーっ。ふーっ。
どう考えても胡散臭い手紙だったのに、来てしまった。変な団体に勧誘されそうになったら暴れて帰ったらいいか。
馬鹿でかい建物に入ると中はどこか懐かしいような意外と落ち着く空間になっていた。
『いらっしゃいませ。船井様お待ちしておりました。』
「あ、はい。」
他にも人はいるようだがあまり気にならない。
『船井様。こちらではやりたかったことが体験できます。船井様は人生で諦めたことがありますよね?』
いつもの俺なら決めつけるような失礼な物言いに顔を歪めているはずだが、なぜか心地よく言葉が入ってきた。
「犬。
犬と関わる仕事がしたかった。」
『できますよ。こちらへどうぞ。
いってらっしゃいませ。』
扉を開けるとそこは誰かの家の前。
中から犬を連れた人が現れた。
『ほら、もう、こっち来なさい!
ラッキー、こら。
あーごめんなさい。この子全然言うこと聞かなくて誰かの手を借りないとどうしようもなくてね!今日はお願いしますね。ほら、おいで!』
「はい。お預かりさせていただきます。」
これはわんちゃんだけじゃなくて飼い主のケアも必要だな、と頭の中を整理していく。
まずはラッキーにたくさんの愛情を注ぎたいと思った。
広場へ行き一緒に走り回る。遊び慣れていないのか独特の動きをするラッキー。可愛くて仕方がない。
走って、触れて、優しく話しかける。
ラッキーの目が輝いている。
ゴロンと一緒に寝転んで見上げた空は澄み切っていた。
「ラッキー、最高だなぁ。」
-5-
『船井様、お疲れ様でした。』
「あぁ、ありがとう。」
高揚していた。
諦めて、忘れて、奥にしまいこんでいた自分の純粋な気持ちに触れる時間だった。
顔を上げて歩く帰り道は
でっかい家、かっこいい車、雑貨屋、花屋、
しっかりと目に入るものを認識できる。
普段の俺なら声を掛けようなんて考えもしないが、気分が良かったので花屋の店員に話しかけてみた。
「こんにちは。こんなところに花屋さんがあったんですね。」
『はい!
オープンしたばかりです!』
「そうでしたか。花、買ったことないなぁ。」
『あ、じゃあ…おひとついかがですか?』
帰ってきてすぐに、花屋が選んでくれたオレンジ色の花をペットボトルに挿した。
テレビをつけると笑い声が聞こえてくる。
『どうもー!シューシューロケットでーす!』
『僕昨日君の代わりに手ぇ洗っといたよ。』
『おい、怖いからお客さんに絡むな。』
『しかし暑くなってきましたねぇ。
もう夏がすぐそこまできてますけど…』
花と笑顔が咲き、部屋が生き返る。
「コーヒーでも飲むか。」