迷子
こちらの作品は実験的な作り方をしたものです。
わたしがメインで物語を書いていったのですが、途中展開をどうしようかなと悩んだ時に思いついた方にご連絡をして、少しだけ続きを紡いでいただく…という感じで進めました。
協力してくださったら方の名前入り台本を残します。
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冬はすぐそこだというのに少し暑さを感じる午後、僕は少し困っていた。
休日を利用して知らない駅で降り、適当に気の向くまま散策をするのが好きなのだが完全に迷ってしまったようだ。
ポケットからスマホを取り出すも画面は真っ黒のまま。サイドボタンをカチカチ押す音だけが虚しく鳴る。
さて、では落ち着いて状況を把握することにしよう。
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[コナオ]
青い空。
お日様の陽射しの邪魔にならないくらいの薄い雲が少しあるような、空。
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[藤原]
あたりを見渡したら、小さい公園がある。
遊具はあまり錆び付いていなくて、色や形が可愛らしい。
花壇がちゃんと手入れされている。
公園に植えてある木々の付近には、その植物の名前と説明が丁寧に書かれている。
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歩きながら流し見ていたが、なんとなくそこで足が止まった。
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[黒磯]
アザミ
花言葉は 触れないで
アザミには棘がたくさんあります。
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「君が咲いていられる季節はもうすぐ終わるぞ。」
触れて欲しくないアザミに、声なら届くのだろうか。
『うるせぇ。トゲトゲで刺すぞぉ。』
いつの間に現れたのか、カメラを首からかけたおっちゃんがイタズラに笑っていた。
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[しんご]
『おれがアザミならそう言うね。』
隣にしゃがみ花たちにシャッターを切る。
「アザミは怒りましたか?」
意地悪く聞いたわけじゃない。素直に知りたくなった。
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シャッター音が鳴り止まないのは、僕に興味がなくなったのかそもそも質問が聞こえなかったのか。
邪魔をするのも悪いので
『報復。』
「えっ?」
『赤いアザミの花言葉は、報復、なんてのもあるな。』
先程の質問への答えなのだろうか。
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[GREEN FINGERS(プロット)]
『はっはっは。そんな怖い顔せんでいいよ。
まぁ若い子らはほれ、ググる言うんかな?
調べたらなんでも分かるな。』
僕はポケットから画面が真っ暗のままのスマホを取り出した。
これがない時代はどうしていたのだろう。
「あの、道に迷った時はどうしてるんですか?」
『え?そら見覚えのある建物を探すとか?』
「あ、そっか。そうですよね。」
思い返せば、電車に乗っていても歩いていても目や耳をスマホに向けていて、周りの景色なんて何一つ見ていなかった。
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うん、見ていなかった。
もったいないことをしたな。
少し冷たい風を日差しが暖める。
「あ、あの。」
『なんやー?』
「僕、道に迷ってたんですけど
ググらずに、歩いてたら、この公園に辿り着いておっちゃんにも会えました。」
『ほんまか!花見て知らんおっちゃんと喋って、そんなんも楽しいやろ!』
にこにこ笑いながらカメラを片付けるおっちゃん。
『よし、ほな帰り道教えたろ。行こか。』
そう言いながらぽんっと腰を叩かれたので
「おっちゃん。…触れないで。」
『おぉ!?あははは。』
きっと僕は、アザミを見るたびに今日のことを思い出すのだろう。