見出し画像

もりお Morio

【この企画・作品について】

3人の作者さんと一緒にリレー形式で
《1つの作品》を作りました。
作者の方たちは誰と一緒に作っているのか内緒にしたまま物語を紡いでいただきました。

任務として
①指定ワードを入れる
②指定登場人物を入れる
③タイトルを誰かが決める
というのがありました。

こちらには作者さんの名前入り台本を置かせていただきます。

---------------


【コナオ】

僕が『ゴメス』という存在を知ったのは、今朝の報道から。

体長約10メートル体重約3万トン。
別名古代怪獣と呼ばれ、東海地区金峰山(きんぷさん)付近に出現したらしい。

「よく考えた方がいいです。」と、1人の男性が声をかけてきた。
この男性は、フライパン曲げが得意だと言う個性的な人。
スプーンなら聞いたことあるけど、フライパンなんだな。
いつかは僕にもできるだろうか。



【酢めし太郎】

彼はこの力をエスパーを超えた力
「エスパニョール」
だと言った。

僕にも使えるだろうかと尋ねると
彼は
「よく考えた方がいいです。」
そう答えた。

未来予知...はじめにこの会話を予測していたとでも言うのか...。
恐るべし、エスパニョール。

エスパニョールであのゴメスを倒せないかと、
僕は聞いてみた。

すると、彼は僕の肩をポンと叩き、
「ゴメスですか、厄介ですねぇ。久しぶりに本気を出すとしましょうか。」
と小さな声で呟き、呪文のようなものを詠唱し始めた。

(30秒)
マチュピーチュッピー、ピチュマッチュ
マチュッピ、チュッピー、ピピチュッピ
マチュピピチュッピ、マチュチュッピー
チュッピピマチュピ、マチュピッチュ
マチュピチュー!
ヤァ〜!

ゴメス、ボカーン!
ゴメスは爆散した。



【ビューティー菩薩】

「実はこれが初めてじゃないんです」
ポツリとその男が呟いた。

生中継されていたゴメスの呆気ないまでの爆散映像は、瞬く間に世界中に拡散され様々な憶測が飛び交っていった。

「初めてじゃない?って…どういうことですか?」
僕がその男に尋ねると、男は懐かしそうに目を細めながら話を続けた。

「最初は平安時代、そう、私は宮中に遣える陰陽師でした。
身分を伏せていち家来として、侍女たちとけまりや百人一首に興じていました。
野菜の収穫も楽しかったですねぇ。
大根や芋、人参を掘り出す競争をよくしていました。
私は特に、ごぼう抜きが得意でした。
年に一度、赤く熟れたトマトをぶつけ合う祭りトマティーナは、それはそれは盛大なものでした。
平穏な日々を送っていたそんなある日、いきなり襲って来たのです。そう、あのゴメスが。」

『ど、どういうこと?』僕はゴクリと息を呑んだ。

「ゴメス、いや、ほしとの宮様は…殿様のほんの出来心だったはずの浮気がどうしても許せませんでした。
ほしとの宮様がたいそう可愛がっていた、お尻の形がピーマンの様にふっくらとしていたひとりの侍女に手を出してしまったのです。
ほしとの宮様にはお子様が授からなかったため、ご自身の名前をその侍女に授けていた程で、ふざけて『ピーマン星人(ほしと)とお呼びになるほどのご寵愛ぶりでした。
それなのに…。

ピーマンほしと様のご懐妊が判明した日でした。
ほしとの宮様は、裏切られた気持ちでいっぱいになり、その怒りが頂点に達した時にほしとの宮様に落雷の様な火柱が立ちました。
それがゴメスの誕生です。
怒りに震えたほしとの宮様、いや、ゴメスは、ピーマンほしと様を殺めてしまったのです。

私は咄嗟に呪文を唱えました。
インカ帝国からスペインへ伝わったとされる幻の呪文、エスパーニャです。

マチュピーチュッピー、ピチュマッチュ
マチュッピ、チュッピー、ピピチュッピ
マチュピピチュッピ、マチュチュッピー
チュッピピマチュピ、マチュピッチュ
マチュピチュー!
ヤァ〜!
からの〜Power〜!

ゴメスは山の向こうにまで吹き飛んで行きました。その後は行方を眩まし、誰もが口を黙みました。
そのうちに宮中では何事もなかったかの様に平穏な日々が戻りました。」

『ちょ、ちょっと待ってください。
あなたが本当に陰陽師だとして、何故いまここに居るんですか?
それなら、僕にそのエスパニョールという力を与えてもらえませんか?エスパニョールになりたいんです!」
僕は前のめりになりながら、その男に懇願した。

「…よく考えた方がいいです。
私は自由自在に時空を操る陰陽師。
フライパン曲げなど、赤子の首を捻るより簡単な事。時空を曲げ歴史を変えられるほどの能力を持つ者なのです。
なぜ現代に再びゴメスが現れたのか、もうそろそろお気付きでしょうか。

私が現代に現れた理由それは、あなた様をお守りする為です。
亡くなったピーマンほしと様のお腹から、奇跡的に元気に産まれたのがあなた様なのです。

殿様の御命令に従い、安心して過ごせる世の中になるまであなた様を時空の歪みの中で見守って参りました。
いつか再びあのゴメスが現れる事はわかっていました。
金峰山を眺める街で暮らすあなた様を見つけ、ゴメスはやって来たのです。

エスパニョールの能力を持ったものは、半永久的に不死身となります。
あなた様がこの力を持ちたいと願うならば授けることも可能です。
しかし…何千年もの間生き続けるということは、かなり大変なものです。

ゴメスは爆散しました。もう二度と生き返ることはありません。
どうかこれまで通りお過ごしいただくことをお勧め致します。
私もまた時空の歪みに戻ることなく、現世で努めを終えようと思います。
私の役目は、これでもう果たしましたから。」

僕があのゴメスに狙われていただなんて。
僕の母さんがピーマンほしとだなんて。

一瞬空を仰いで視線を戻すと、既にその男の姿はなかった。

もしかして、今のは全て幻だったのか?

生中継が続いているスマフォの画面に目を移すと、一瞬男の後ろ姿が過ぎった気がした。
やはり現実なのだ。

「ったく、人騒がせなゴメスめ!
僕の母さんは母さん唯1人だからな!」

そう呟くと、ピーマン型のお尻にあるデニムのポケットから、星人(ほしと)が産まれた時に亡くなった母親の写真を取り出した。

『母さん、今日は母さんの大好物だったピーマンを買って帰るよ』