きみ、
呼びかけると きみがいる
うすいろの空気に きみ、
雨上がりと
割れた鏡の似ていることに
きみを呼んで気づく、
手をはわせると 手はきずついて
ぬれた土のにおいがした
きみ、
人はどうして
くだけていくときがいちばん
やさしいのか、
きみは骨を隠すように 同じ言葉を何度もつかう
わたしは、きみを呼んでいる
何度も呼んでいる、
きみ、
遠くに、いつか耳がある
わたしを 脈拍とまちがえる耳
「tempo giusto―テンポ・ジュスト:正しい速度で。(一般に、心拍の速さと言われる。)」
黒崎立体 詩集『tempo giusto』
発行:七月堂
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