朝吹亮二『密室論』より抜粋

死体というものはなにかを思惟するということはないだろうからやはりどこまでも透明な密室である透明な箱のなかに透明な箱がありそのなかにまた透明な箱がありそのなかにまたまた透明な箱がありそのなかにまたまたまた透明な箱がありどんどんちいさくなりどんどんどんどんおおきくなって光の粒子となってうわわわわっってちりぢりになる夏の死体であり夏の密室である植物の名前が無限につらなるどれも錯綜した名前そして鉱物の名前も無限につらなるこれまた錯綜した名前そして発音しがたい音や綴りにくい文字の黒い光のなかをすすむ赤道を通過し子午線を通過する石段をおりたりのぼったり坂道をおりたりのぼったりする上下に揺れたり横揺れしたりする乱調に運動する眠りつづける死体の粒子だりゅうしもときにはほこうするのだったいっこのしつないではねむりのたんさんがはじけしょくぶつがなびいてさわぐむぎいろのおかではさんそがおおすぎるさんそがおおすぎてふうけいまでもいきぐるしくするふうけいまでもろしゅつをおおくするかがみのようにとうめいなひだまりがいくつもあってひとつひとつがまっしろにみえるまでまぶしいひだまりでないぶぶんもしきさいをうしなうまでにひかりをあびるうみまでつづくみちもどこまでもおなじようにまぶしくてみえないゆるやかなじょうしょうやかこうさまざまなきふくもまぶしいひかりのうずせっかいしつのいえなみもまどもまっしろにひかりをきゅうしゅうしひかりをはんしゃしぬれたようになるまどのなかだけ




朝吹亮二『密室論』収録
発行:七月堂

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