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おもに七月堂書籍から詩の紹介をしていきます。
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#豪徳寺

「花をささげる」(髙塚謙太郎著『sound&color』より)

庭のひろがりをゆびでひろげて みえてくる束をなぞるゆびをひらき いちめんのにおいやかなこえ…

「はじまり」(峯澤典子著『ひかりの途上で』より)

ときに火を焚き ときに花を流し 空にいる肉親に声を送る 地球という かなしい水辺に 降り立つ…

「#MeToo」(山田亮太著『誕生祭』より)

私も 自分のずるさを隠すために 見ないふりをしたことがある 私も 支配したいという思いにか…

「一本の声」より(永澤康太著『誰もいない』より)

一本の声に戻ってゆきたい あなたであり、ぼくでもあるような きみであり、きみでさえないよう…

「帰り道」(菊石朋著『ラララフラワー』より)

猫が小さく鳴いていて きっと町中のひとが その声に 耳をすましている 今は大きな音を たて…

「身体を流れる」より(海老名絢著『あかるい身体で』より)

雨が揺れる街で ビニール傘越しにビルの光が滲む 唐突な水たまりは 影の向こうに 夜景を映す …

「クリーム」(西尾勝彦著『なんだか眠いのです』より)

奈良には しかびと が います 二足歩行する 鹿のような人です もしくは 四足歩行できない 人のような鹿です わたしは今まで 数回お会いしました 一緒に お茶したこともあります  めるる  めぎゅ? と ほがらかに しゃべっていました ほんとう と うその あいだに ちょっとした 原っぱがあるように 現実 と 非現実の あいだには やわらかくて 甘い クリームが はさまっています あなたの町に クリーミーな人は いますか 西尾勝彦『なんだか眠いのです』収録 発行:七月堂