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盆かわいい

ばばさ菓子が日常のお供え菓子の役割も果たしている、ということを前に少し書いたけれど、お盆はお供え菓子の本番のようなものだ。近所のスーパーでもエントランス脇に配置され、賑わいを見せていた。

この辺りの定番は、「粉菓子」と言われる、米などの粉と砂糖を混ぜて型抜きしたものだ。今の今まで全国区と思っていたけれど、この「粉菓子」という言葉が使われているのは新潟県や山形県の一部なんだそうで、知らないことばかりだ。見た感じは落雁のような感じだけれど、高級和菓子店で見るような指の先ほどの小さなものではなく、子供の掌くらいかそれ以上のサイズで、蓮や菊の花や松竹梅の形に型抜きされ、地域によっては中に餡が入っているものもある。

この「粉菓子」、子供の頃に少し食べたことがあるけれど、高級和菓子店の小さくて口に入れるとホロっと溶ける和三盆の落雁と違い、もっとモッサリとして、子供の舌ではなかなか「おいしい」と認識できるものではなかったような気がする。60代後半の母に聞いてみると「昔は今のようにお菓子がいつもあるということもなく、供えた後の粉菓子はみんなで食べていた。でも粉菓子をめちゃくちゃおいしいと思って食べていたわけではなく、生菓子(練り切りで餡を包んだ、鯛などの形を模した式菓子)のほうがバイブスが上がった、とのこと。

そんなことを思い出しながらスーパーに売られている盆菓子を見ていると、スタンダードな粉菓子セットは全体の20%くらいで、その他は透明なプラスチックの箱に入った地元洋菓子店のケーキやクッキーの詰め合わせ、地元和菓子店の羊羹やどら焼きなどの詰め合わせなど、「食べ慣れていて、子供から大人までおいしいと感じるもの」「お供えした後でみんなで分けて食べやすいもの」が多いように感じた。簡単にいうと、孫に「いらない…」と言われにくいもの、という感じだ。

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これはここ最近の変化なのか、それとも割と前からこうなのか。今までお盆に無関心だったのでなんとも言えない。もっと盆菓子に興味を持っていればよかった。

お菓子だけでなくドーム状の容器にドライフルーツが詰まったものも、お供え用として売られていた。これは映える。これだけでなく、スイカやメロンの形をしたばばさ菓子ゼリーなど、色合いがかなりポップでかわいいものも多い。

この「昔からある粉菓子」「美味しさという『実』の部分を重視した地元菓子店の詰め合わせ」「ポップで映えるかわいい盆菓子」全て購入して食べ…もとい調べたかったけれど、なにせ新型肺炎流行の影響もあって仕事がいくつか飛んで自由研究の予算があまりない。ここは一番心を動かされたポップな映え盆菓子をいくつか買ってみることにした。

まず目を引かれたのが、愛媛県八幡浜市の「株式会社あわしま堂」の「ラムネ落雁」。

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パステルカラーが可愛い上にラムネ味なんて、夢のような盆菓子ではないか。

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お皿に出してみると、思った通りにかわいい。映える。蓮や菊の花などのお供えモチーフを手堅く押さえているのもポイントが高いだろう。100点満点中150点のビジュアルだ。

お供えした後に、「ラムネなんて食べるの久しぶりだなあ」とホクホクして食べてみると、固形ラムネのように甘酸っぱくサラッと溶けてシュワシュワ…というわけではなく、懐かしい粉菓子の「モサ……」の後に「シュワ……」が来て、そのあと水分を吸ったでんぷん質が「モコ……」と膨らみ、それがさらに泡立つような感じがある。ほのかな酸味と爽やかな香りがある。こんな感じ初めて。美味しいかどうか、なんとも言えない。このときは雨ばかりの天候だったので、シケてこうなったのか。私だけの感覚で判断するのはよくないと思い、母にもひとつ食べてもらったら、喜怒哀楽のどれでもない顔をして「粉菓子ってのはこんなものだろう」というようなことを言っていた。そうなんだろうか。

もうひとつ、一際目を引くものがあった。

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愛知県あま市「株式会社 村瀬製菓」の「お供金魚鉢」は、その名の通りドームを金魚鉢に見立て、金平糖の水の中にピンク、オレンジ、イエローのポップな色合いの金魚型の落雁を泳がせたカラフルなお供え菓子。うちのいつも質素な仏壇も一気にポップになる可愛さだ。

お皿にあけてみたら、これまたかわいい。完全にメルヘンだ。

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ちなみに、この金魚の落雁もちょっと「モコ…」という食感だった。角切りの赤いゼリーは、かき氷のいちごシロップの味。

価格はどちらも400円(税抜)ほど。今回は盆菓子にわかとしてはしゃいでみたけれど、これからは毎年気にかけてみたい。とはいえ1年後か…と思っていたけれど、「秋の彼岸にはまたお供え菓子が並ぶだろうから見てみろ」と母に言われ、自分がいかに仏教上の行事に無関心か思い知った。

墓参りには一応行くけれど、霊や死後の世界はいまいちピンとこない部分も多いので、菓子の部分から攻めていこうと思う。

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