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あなた、ばばさ菓子でしょう

私のよく行くコンビニは、パートの職場の近くのローソンだ。繁華街からは少し離れていて、近くには信用金庫や郵便局、マンションなどがある。

リモートワークで済んでいた期間が終わり、久々にコンビニに寄ってお菓子でも見よう、プライベートブランド「ローソンセレクト」の商品のあたりを見ていたら、「あ、この感じ…あなた、ばばさ菓子でしょう」というお菓子がいくつかあったのだ。

私は今まで、コンビニには若い層に売れるような菓子ばかりでばばさ菓子はないものと思っていたけれど、調べてみたらそれは思い込みで、コンビニにもばばさ菓子は以前からあるとわかった。

これなんかは、一見してストレートなばばさ菓子アソート。価格帯も、ばばさ菓子によくある感じ。

この手のものは、セブンイレブンにもある。

ぜひリンク先で「みんなのコメント」を読んでみてほしい。ばばさ菓子ファンの肉声だ。小さくなりゆく栗饅頭、美味しくない草餅、減るようかん、消えるチーズブッセ……『2012年頃のラインナップが好きでした』。時代が見えるし、なんだか音楽シーンを語る時のようなトーンがかっこいいが、「食品小さくなってる問題」の進行が見える。


これらのばばさ菓子王道アソートの他にも、「ローソンセレクト」の中に、気になるものが2つあった。

ひとつめは、透明感のあるジューシーなイラストがあしらわれた洒落たパッケージの「ひとくち国産果汁ゼリー」。きれいなデザインにスルーしそうになるが、この感じ、あからさまにではないけれど、ちょっとばばさ菓子の香りがする。

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(リュックに入れて持ち歩いていたらヨレヨレになってしまった)

「これ、中身はおばあちゃんちにあるゼリーじゃない?!」ばばさ菓子ウォッチャーの勘が働いた。価格も、ばばさ菓子の大袋ゼリーがこのくらいの量だったらこのくらいかもしれない。裏面の表示を見ると、製造所は長野県飯田市の「株式会社 竹林堂製菓」という表記がある。……竹林堂製菓?!あの、映えるばばさ菓子ゼリー「紫陽花」を作っている会社が作っているのか……これは「決まり」だ。これはばばさ菓子だよ!


艶消しの個包装袋に入った上品な見た目、ギュッと甘酸っぱく、濃厚な果実の香り。あれ、かき氷シロップ味の「紫陽花」とはかなり方向性が違うな……

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食べてみると、強い甘味と濃い果実の味がしておいしい。それに、私がよく知る寒天を主としたばばさ菓子ゼリーの「ニチッ」としつつ歯切れ良い食感とはちょっと違うような……もっと粘り気があって柔らかく、口溶けも良い。 

これは「彩果の宝石」に近い。「彩果の宝石」もこの「ひとくち国産果汁ゼリー」も、寒天ではなく「ペクチン」で固められている。ジャムとかを煮るとトロッとしてくる、あのとろみは果物の皮や種に含まれるペクチンの作用だぜ、と昔読んだジャム作りの本に書いてあった。だから寒天のゼリーよりもニチニチしていなくて柔らかい。そういう意味では高級洋菓子店にある「パート・ド・フリュイ」とか、その系統だ。これをド直球のばばさ菓子「紫陽花」と同じ会社が作っていると思うと、すごい芸風の幅だ。(竹林堂製菓はローソンセレクト以外の自社製品でも直球に『パート・ド・フリュイ』という製品も出している。おいしそうhttp://xn--cks957akto.com/jelly/)

紅茶に合いそうな、「彩果の宝石」系のやや高級な味わいのお菓子をばばさ菓子に分類してしまっていいのか、いや、「彩果の宝石」も「エコルセ」なんかと並んでデパ地下界のばばさ菓子と言ってしまっていいんじゃないか……と悩んだけれど、我が家のリアルおばあさんである母がこの「ひとくち国産果汁ゼリー」をめちゃくちゃ気に入っていて、定期的に買って帰るようになったのだから、我が家では少なくともばばさ菓子と言える。

もうひとつ、おしゃれなパッケージでも隠しきれないばばさ菓子の香りをまとったお菓子がこれ、「瀬戸内レモン大福」。

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ばばさ菓子売り場に通い詰めていると、ある種の形状や質感で「ばばさ菓子っぽさ」を感じるようになるけれど、この大福にも見覚えがある。この「ばばさ菓子研究ノート」にはまだあまり登場していないけれど、それは単に私がこの手のムニュ…と柔らかい求肥っぽい大福に少し苦手意識があったからだ。

でも、このレモン大福は爽やかな香りと酸味のせいか、食べやすいし、むしろ好きだと感じる。おいしい。母と姉にも好評。

裏面を確認すると、製造者は岐阜県各務原市の「足立産業株式会社」という会社。webサイトを見る限り、かっちりとしたばばさ菓子を作っている会社だ。商品案内に並ぶラインナップから「餅には自信がある」という雰囲気を感じる。「自家焙煎くるみ使用のくるみ餅」がおいしそう。


「ひとくち国産果汁ゼリー」と「瀬戸内レモン大福」は、実績のあるばばさ菓子メーカーにコンビニがプライベートブランドのための商品を依頼したものだろう。それが特に「お年寄り向け」という見た目ではなく、他のお菓子たちと同じフォーマットでパッケージされて、ばばさ菓子と非ばばさ菓子の境界が溶けていることがとても新鮮だった。

私がおばあさんになった時にはばばさ菓子はどうなるんだろう、と考えたことがあるけれど、なんだかその一端をみたような気になった。いよいよ壁はなくなっていくんだろうかねぇ……と1981年生まれは思う。

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