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ニーチェ哲学ドルONF(オネノプ)をご存知ですか?

<時間が無い人へ💡長いこの記事を3行にまとめるとこんな感じです> ①KPOPアイドルのONFが哲学的にアイドルをやってて面白いよ②4/28にアルバムを発売するけど作品にニーチェ要素入ってるよ③ONFはデビューからずっとKPOPで芸術している“超人”グループだよ

とぅるせっ!こんにちは〜ニーチェ哲学ドルONFです!!

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冒頭から勝手にONFちゃんに二つ名をつけて荒ぶり中ですが、許してください。だって!ONFのリパッケージアルバム※1「CITY OF ONF」の発売日(4/28)が近づいてきたんですもん…  

前回書いた記事は3月末に公開しましたが
その後、3曲の新作のタイトル名が公開されました。

・踊って (Ugly Dance)
・My Genesis (Ubermensch)
・The Dreamer

いやー、このタイトルだけで期待値が爆上がりしてしまいました。
これらの曲、アルバム「MYMAME」※2収録曲と連動感満載なのですから…


・踊って (Ugly Dance) →  Beautiful Beautifulの延長線上の歌。「Beautiful 」の対義語「Ugly」がタイトルに!

・My Genesis (Ubermensch) → MY NAME ISと似たタイトル構成。

・The Dreamer → The Realistの続編、または前日譚らしい。

※リパッケージアルバム「CITY OF ONF」にはこれら6曲をふくめた14曲が収録される


アーーーッ!!本当面白いことしますね!オネノプさんは!

初めてですよ…ここまで私を翻弄したアイドル達は…
リパッケージ自体をビジネスでなく、表現のひとつとして利用するって過去こんなことしてるアイドルいました??


それで驚いたのは、2曲めのタイトル“My Genesis (Ubermensch)”ですよ。
Ubermenschの意味は、超人です。超人といってもヒーロー的なことではなく、哲学者ニーチェの説いた“超人“です。ちなみに韓国語だと“克服人”と表現するみたいですね!

前回の記事で、

「彼らは上辺だけでコンセプトを表現しておらず、そのアイドル人生の根底には哲学が存在しているように思います。」

と書かせていただきましたが、早くもその発言を
裏付けてくれるような回答が来ちゃったのではないでしょうか。


そこで今回は、自分の中の乏しい知識をフル動員してONF×ニーチェを考えていきたいと思います。
歌詞がまだ一部しか公開されていないので、Beautiful Beautifulの歌詞と新曲のタイトルを中心にしたペラッペラの独自解釈です。間違いなど多々ある可能性もございますのでご容赦を…


■ニーチェについて

まずはニーチェニムについて軽く紹介を。

実存哲学というものを提唱し、「ツァラトゥストラかく語りき」という自分の思想をストーリー仕立てでまとめた著作を発表した方です。
本質哲学」という偉い人がず〜っと考え続けてきた歴史あるそれまでの主流とはまったく反対の考えが、ニーチェニムの実存哲学でした。

生きることの意味、物事の本質とは?ということを考えるような「本質哲学」に対し、実存哲学は「はいはい、人生に意味なんかないですよ!存在しないものを考えるのはもうやめて、今を自分の価値観で肯定して生きていこうぜ〜」と言っている感じでしょうか。

実際には世の中って誰かが作った常識や価値観でほぼほぼ出来ているわけです。そして無意識にその価値観が染み付いていて、XXXじゃないと幸せじゃない、みたいな考えになり。その価値観と現実に乖離が生じることで苦しんでいる人が多いのではないでしょうか。

誰かが決めた見えない枠組みにとらわれず、現実にある自分を大切にしようということなのですが、これどこかで耳にした言葉じゃないですか?

みんなが作ったframeに無理に自分をはめないで         −Beautiful Beautiful /ONFより抜粋−

そうです、ONFの“Beautiful Beautiful”の歌詞にこのフレーズがあります。また、デビューアルバムON/OFF(2017年発売)収録曲の「Original」を日本語verで発売しているのですが、そこでも自分の意思や価値観で生きることを推奨したメッセージを発信しています。

世界の常識より 自分自身を信じればいい
思うより強いから 怖がらずに進めばいい 
           −Original 日本語ver/ONFより抜粋−

実は前々から、ONFちゃん達はBeautiful Beautifulと同じことを伝えようとしてくれていたのですね。

■My Genesis と「ツァラトゥストラかく語りき」

ニーチェニムの著作「ツァラトゥストラかく語りき」の中に登場するワードは神は死んだ永劫回帰、超人、末人、ルサンチマンなどが有名です。

このあたりのワードを超ざっくり説明すると…

神様は絶対的価値の頂点として揺るがないものでしたが、科学技術が発達したり、宗教に絡んだいざこざなどで人間は結果的に、自分の手で神の存在を信じられなくしてきました(神の死)。そうすると、神がいることで成立していた価値観、生きる意味などが崩壊します。その結果、絶望し全てが虚しくなります(ニヒリズム)。そして人間は安楽を求めて時間つぶしをして人生を浪費します(末人)。我慢し慎ましく生きるのが美徳だと言いながら実際は持つ者、強者に嫉妬します(ルサンチマン、奴隷道徳)。

KPOPで例えると…

サバイバル番組に参加しているAくん。Aくんを推すことが私の生きがい!と毎日投票を行った。無事デビューが決まった先に、制作側の不正が発覚しデビューが白紙になってしまった。極めつけに推しに熱愛発覚(神の死)。自分が頑張った意味ってなんだっけ?と思っても状況は何も変わらず絶望(ニヒリズム)。私もいい歳だしオタ卒して大人しく仕事しないとね。アイドル推しても何もならないし…(末人、ルサンチマン、奴隷道徳)。

みたいな感じですかね?!

ちなみに現実から目をそむけるために、ありもしない架空の価値観(アイドルを推しても何にもならない、いい歳になったらオタ卒など)を自分の中に持ち込み、本当の欲求を抑え込み自分の気持ちを無かったことにすることをニーチェは奴隷道徳と表現し、それにとらわれると人間本来の生き方ができないとも言っています。

2019年秋〜2020年始めは某Pのせいで地獄でしたが、ニーチェニムは、その暗黒期を含めた人生が永遠に映画のループみたいに繰り返されたらどうするよ〜?と想像するのも怖いことを言っています(永劫回帰)。

そういう嫌なこともまるっと繰り返される世界・価値観が崩壊した世界だったとして、我々KPOPオタはどうすればいいのか?を考えると、今すべき生き方が見えてくるというわけです。

その答えは、人生色々ある中、あれもこれも全て受け止めて、これで良かったんだと全肯定する生き方をすることとニーチェニムは言っております。色々あったけど、もう1回同じ人生を繰り返そうじゃないか!と言えるくらい自己肯定するのが超人であるということです。

長くなりましたが、アルバム紹介資料の中のMy Genesis (Ubermensch)の説明文を見ていきましょう。

ニーチェ哲学の根本である「超人(Ubermensch)」をテーマにした曲で、ロックとJazzのジャンルが1曲の中で多彩に構成されたマルチジャンルの曲である。
「自分自身を克服し、新しいものを創造する存在として生まれ変わる」という内容の歌詞は、ニーチェの著書「ツァラトゥストラはかく語りき」の題材
(ライオン、子どもの段階)を部分引用した。 絶え間ない肯定を通じて自分を克服する姿はONFの歩みともよく似ている。


アルバム紹介資料より抜粋
(http://www.globalinterpark.com/detail/detail?prdNo=8075090228)

ライオン、子どもの段階という部分なのですが、人の精神が変化し超人になる過程を「ラクダ→ライオン→子ども」に例えて描かれたものです。

「汝なすべし」ラクダのように義務とか責任とか色々なものを背負い込み忍耐強く砂漠を歩いている、これが第一段階です。

「我欲す」しかしある瞬間からライオンに変化し、既存価値を否定し、自分を支配するものと戦い自由を勝ち取ります。

その後、子どもになりゼロの状態から自分の意思のまま遊び、楽しみ、新しい価値を想像していくというような流れです。

「幼子は無垢、忘却、そしてひとつの新たな始まりである。自ら回る車輪、始源の運動、そして聖なる肯定である。世界を喪失した者がおのれの世界を獲得するのだ」
-弘文堂「ニーチェ事典」より引用-

ちなみにyayayaにも、荷物を背負うという表現があります。yayayaは、ラクダ→ライオンへ変化する時の歌なのかもしれません。

あれこれ感情の浮き沈みの中
耐えられない荷物をこれ以上背負おうとしないで
時には両目を閉じて耳を塞いで
君の気持ちだけを信じて

−yayaya /ONFより抜粋−

■力への意思を持ち続ける超人ONF

人生に意味がないのが、世界の本来の姿だとしたら、その場合人間には何が残るのでしょうか。それについて、ニーチェニムは「もともと人間にはより良くなりたい・高みを目指したいという精神的な欲求が備わっているよ」と説明しています。超人はその欲求を無視せず、決まった価値などないという前提の中で、自ら価値を作り出し、高みを目指してより美しく楽しく生きるぞ!という強い意思があるのです。

これをKPOPアイドルに例えてみます…

末人アイドル:この仕事本当にめんどくさい…なんで俺が同じこと何回も何回も。。でも断ると面倒だからやらなきゃな。。。早く終われ〜〜!!
超人アイドル:毎回同じステージするんじゃなくて、ステージの冒頭にボトルフリップチャレンジするのどう?そんで水の色も変えたら楽しいじゃん!面白いから、またしよう!

今を自分の意思でどう楽しむか。その結果、たとえ失敗しても問題ない。自分がやりたくてやったことだ!さあ、もう1回。。。

ONFのボトルフリップチャレンジは、超人的思考に溢れたステージだと思います。

■ニーチェと「舞踏」

4/28リリースのタイトルは、韓国語で「춤춰」、日本語ではタワレコで「踊って」と記載されています。

ニーチェは、舞踏・ダンスに関連する名言が多いんですよね。

いつか空の飛び方を知りたいと思っている者は、まず立ちあがり、歩き、走り、登り、踊ることを学ばなければならない。
その過程を飛ばして、飛ぶことはできないのだ。
-フリードリヒ・ニーチェ-
一度も踊らなかった日は失われた一日と考えるべき。一度も笑われなかった真実は偽りのものだと思った方がいい。
-フリードリヒ・ニーチェ-

こちらの記事で、脳科学者の茂木健一郎さんがニーチェが到達した舞踏の概念について説明しています💡

とにかく、踊ること。意味を問わずに、心と体を動かすこと。その結果、何かが成し遂げられることに意義があるのではなく、踊ること自体に意味を見出す。踊ることが、生きることである。そのようなニーチェのメッセージを、高校生の私はしっかり受け取った。
-茂木健一郎氏/「やる気が出ない人」に送るニーチェ的アドバイスより

今回、ティーザーで新曲の歌詞が少し紹介されました。

1 and 2 and 3 and 踊って 1 and 2 and 3 and everybody feat the beat and move your soul 新しいことをしよう、私たちいつも違う道へ どうせこの世に簡単なことはない
−踊って (Ugly Dance) /ONFより抜粋−

踊り自体に意味を見いださず、踊ることに意味を見出す

それがどんな踊りであっても、自由に、自分の意思のまま体を動かすこと、これは今回のONFの曲のテーマになっていそうです。また、踊ること以外にも道という言葉が入っていましたが、ニーチェもこのように語っています。

世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。
その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め。
-フリードリヒ・ニーチェ-

ONFちゃんの新曲の全体像がとても楽しみになってきました!

もしかしてフリースタイルとかあったりする?!楽しみです!!

■自己肯定と並ぶニーチェの重大ワード「芸術」をKPOPで

僕の人生のすべての叫びが きっと芸術 芸術 芸術                                 −Beautiful Beautiful /ONFより抜粋−

ニーチェは、この人生を生き抜くには芸術が必要だ!と言っています。芸術は自分の中の価値感を表現するもので、より良いものを目指すことと密接な関係があります。

KPOPで芸術をしたかった作曲家ファンヒョンさん👇

 動画からのコメント抜粋(一部意訳)

とにかく、前向きなメッセージを伝えたかった。
ご存知のように、最近は苦労しています。
しかし、それも私達が生きている人生だと思いました。                                そして、その人生を表現することで別の芸術に変化させることができます。
それで、歌は私が美しいと言い続けます。
あなたは美しい、私たちは皆美しいです。


-3:33からのファンヒョンさんの言葉-

 動画からのコメント抜粋(一部意訳)

KPOPでアートをやりたかっただけです。
-4:35からのファンヒョンさんの言葉-

KPOPで芸術をした結果、それがどういう結果になろうとも、ONFちゃんやファンヒョンがその瞬間を楽しい!と思って高揚感を感じられればOK。それはどんな結果になっても失敗ではないのです。

自分が今、「楽しい」「美しい」「価値がある」と思えるものを感じて表現すること自体が芸術。

ONFの存在を美しく、楽しいと感じることは、自分の中で決めた価値であり誰にも影響されるものではありません。彼らのことを認め、自らの意思で応援し、より良い場所に向かいたいと思うことも力への意思であり、そこから生まれるものは芸術なのだと思います。

ONFのファンダムであるFUSEは、他グループと比較してもファンアートが盛んですが、彼ら自体が芸術をしているアイドルだということも関係しているのかな?と思うこの頃です。

■永劫回帰とONFペンライト

先程も出てきた、ニーチェニムの言葉で有名な「永劫回帰」。もし仮に今と同じ状態が繰りかえされることになっても、それでよし!もう1回!と言えるように今を強く肯定し意思を持って生きる人=超人でした。


時間軸が直線上に表される西洋の時間概念に対し、ニーチェは時間を円環状に表現しました。時間軸が直線上にあるような考え方の場合、未来に対して明るい何かを求めてしまったり、今信じている価値(美や若さといったもの)が時間とともに消滅していくことを理解できず、結果人生終盤になって現実に気づく…。

一方、ニーチェニムの実存主義は時間を円環状にとらえている為、現実を生き、未来へ過剰に期待することがないので結果、その積み重ねであるで人生を肯定できるということだと思います。

一般的にKPOPアイドルは時間的制約のある職業です。それは年齢、兵役、事務所との契約などによるものです。ONFも、時間という概念が作品やステージのあちこちに登場します。ONFの立体ペンライトが発売されることになったので、その画像を改めて見てみましょう。

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ペンライトは、デビュー日である8/3を表す8時3分を指し、その周りに歯車が円状に配置されています。しかもこの時計と歯車が回転するので、「自ら回る車輪」としてループするようなイメージを持つデザインです。

もし無理やりニーチェ的に解釈するとすれば、この今の瞬間のONFとFUSEという存在がデビューから今まで、まったく同じ形で再び繰り返されようと、後悔せずこれで良い、と肯定するような生き方をしよう、という意味が込められているのではないでしょうか。このペンライトの中で、ONFとFUSEの永遠の時が刻まれているかのようです。

■僕がなりたいのはnumber oneじゃなくてonly one

ナンバー1は、誰かが決めた基準の中で順位付けされたものです。
何かで1位を取るということは喜ばしいことだけど、誰かが決めた一方的な物差しによって苦しむこともあります。

・良い音楽を発表しても認知されることすら難しい現実
・商業的観点で実施される音楽アワード
・数の論理で勝敗が決るレース

勝者がいれば、その影には敗者も存在します。
敗者の気持ちを良く知っている彼らだからこそ、本当の価値は他人が決めるものではなく、自分自身が意思を持って表現すること・芸術することが大切なんだと、明確にメッセージを発信できるのだと感じます。
自分の芸術をしたうえで結果的に1位を狙えるよう努力をし続けるのが超人であるONFの目指すべきところなのかもしれません。


■最後に

人間、興味が持てないことは価値のないもの、存在しないものとして脳内処理してしまいがちですが、ONFの魅力にまだ気づいていない方には、とても面白いことをしているアイドルがいますよ、とだけお伝えしたいです。

趣味嗜好もそれぞれではありますが、自分の中では
「外見がカッコいい」とか「流行ってるから注目している」といった理由で推していたアイドルとはまったく別次元で夢中にさせてくれるのがONFという存在です。

権力構造の強い韓国で、ニーチェの思想を盛り込んだKPOPをやっちゃうとか、かなりロックじゃないですか?

カッコいい彼らのカムバックをリアルタイムで楽しめる今にとても高揚しています。


※1:韓国は、発売したアルバムに数曲追加して再度アルバムをリリースするリパッケージアルバムというシステムがあります。※2:2021年2月に発売したアルバム。今回はそのアルバムに3曲追加して再発売となる。

参考文献:芸術研究2009第21・22号「ハイデッガーのニーチェ解釈における美術との対峙」近岡資明氏、最強のニーチェ!飲茶氏、弘文堂「ニーチェ事典」



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