2022年に観たアニメ映画を紹介する

はじめに

この記事は 東京高専SPC同好会/プロコンゼミ老人会 Advent Calendar 2022 20日目の記事です。

皆さんこんにちは。塚本です。今回はタイトルの通り、僕が2022年に観たアニメ映画を紹介していこうと思います。

本記事で扱う対象の映画ですが、

  • 2022年公開の国内作品であり

  • 僕が映画館で観た作品であり

  • 既存のTVアニメや他媒体アニメーションの続編・劇場版でない

ような作品に絞りたいと思います。3番目の扱いが微妙な映画は僕の裁量で決めています。
条件を全て満たしている作品で紹介されていない物については、観れていないか感想が書けるほど印象に残らなかった、もしくは文量を割いて褒められる感じではなかったものだと思ってください。

観た映画

以下、今年観た映画について鑑賞日順に紹介していきます。

地球外少年少女 前編『地球外からの使者』・後編『はじまりの物語』

電脳コイルの監督が原作・監督・脚本を手掛けたSFジュブナイル。
舞台は2045年の宇宙ステーションで、月で生まれた主人公と幼馴染が暮らす宇宙ステーションに地球出身の見学者一行が訪れる所から物語が始まります。
30分6話構成のNetflix独占公開作品で、6話中の前半3話が前編、後半3話が後編としてそれぞれ2週間限定で劇場公開されました。

物語の前半は商業宇宙ステーション「あんしん」を舞台に少年少女がトラブルを超えて団結する展開を、後半は人工知能におけるシンギュラリティや隠された世界の真実を描いています。
思春期・反抗期の主人公が仲間を認めて協力していく前半の展開はジュブナイルとして本当に王道ですが、一方後半は展開が一変し、宇宙漂流物・シンギュラリティ題材のSFの終盤ならこれだよな、という展開を見事にやってくれます。

前述の通りいわゆるNetflix映画なのですが、映画化に際した再編集がほとんどされていません。普通の映画を観に来たはずなのに鑑賞中に3回OPやEDを観る事になり、前編を観た時にかなり驚きました。

犬王

室町時代の能楽師・犬王と琵琶法師の友魚が手を組んで活躍していく姿を描いたミュージカルアニメで、監督はあの鬼才・湯浅政明さんです。

能楽・琵琶という単語から落ち着いた雰囲気の作品かと思う方もいると思いますが、実際はその印象とは正反対。この二人は観客を大量に集めて沸き立つライブを披露するアーティストとして描かれます。
琵琶法師の友魚が弾くのはド派手なロックミュージックであり、異形の能楽師である犬王はその体形をフル活用しながら歌って踊りまくります。
ド派手かつ「ギリギリあったかもしれない」ようなライブ演出も圧巻。とりあえず下の映像を見ると僕の言いたい事が分かると思うので見てください。

僕は劇中歌の中では腕塚が最も好きなのですが、室町時代が舞台にもかかわらずプロジェクションマッピング的手法を提示してくる「」やモダンバレエ要素まで取り込んだ「竜中将」ももちろん面白いです。それぞれYouTubeで一部公開されているため、興味があればそちらも是非。

夏へのトンネル、さよならの出口

「欲しいものがなんでも手に入る」とされるウラシマトンネルを巡り、主人公の塔野カオルとヒロインの花城あんずは共同戦線を組んで協力する事になる……というあらすじの、八目迷さんの同名小説を原作にした映画です。

ジャンルとしては青春ボーイミーツガール恋愛映画と言ってしまっても良いような作品なのですが、それでも今年ベスト級に素晴らしい作品でした。僕は初見で観たその日に映画パンフレットを買い、その翌日にもう一度観て原作小説も購入しました。

ヒロインはいわゆるクール美少女的なキャラクターであり、最序盤では「冴えない主人公とそれを引っ張る自信家なヒロイン」というような関係性の作品にも見えますが、展開が進むにつれてヒロインの人間性や主人公の信念の強さが表れ、この構図が大きく変わっていきます。
主人公もヒロインもある種の危うさのような物を抱えていて、その不安定性や同じ目的を共有する仲間ではあるけど見ている先が違う不安感がトンネル内での特徴的な色使い・音楽と合わせて作品への緊張感を与えています。

小説からの改変要素についても納得できる部分が非常に多いです。
80分の映画である事を前提にして主人公とヒロインの恋愛映画だと割り切り他キャラの登場回数を極力減らしたり、序盤からヒロインとの距離を縮めておくためにオリジナルで傘とホームのシーンを追加して作品のキーアイテムにしたりと、原作からの少し大胆にも思える構成変更が映画としての方向性を明確にしています。
その他にもヒロインの同居人が出てこなくなっていたりとか、原作で独立に存在していた祖父の死と漫画家志望という設定を組み合わせた点など、とにかく細かい点まで適切な改変を行っているという印象を受けます。

上に書いてない話題でもホームでの雲の描写とか色使いとか向日葵とか喫茶店でのヒロイン描写とかまだ書きたい事がたくさんあるんですけど、他作品とのバランスを考えて感想はここまでにしたいと思います。配信来たら絶対観てくれ~!

四畳半タイムマシンブルース

四畳半神話体系 の登場人物を舞台「サマータイムマシン・ブルース」に持ってきて悪魔合体させた映画。
クソ暑い日にクーラーのエアコンが事故により故障、「私」はタイムマシンで昨日に戻り過去のリモコンを持ってくる事を思いつく。自由気ままな一行に翻弄されながらも、タイムパラドックスが発生しないよう奔走する事に……という展開のSFコメディ作品です。
映画というよりはファンディスクや長編劇場OVAのような感じで、四畳半神話体系を観ている事を半ば前提にした作品ではありますが、一応劇場版や続編という扱いではないので、というか僕が紹介したいのでこの記事で紹介する事にします。

まずはキャラ元の四畳半神話体系と関係ない部分から語るんですが、登場人物を知らない状態で展開だけ見てもSFコメディとして最高だと思います。そもそも名作舞台を元にしており、その上でその舞台の脚本がそのまま脚本に入っているので話が面白くない訳がないという感じ。
キャラクターの一見不可解な各行動がそれぞれ回収されていく流れは普通に観てて面白く、展開のテンポの良さには爽快感も感じます。劇場で購入できる映画パンフレットには時系列順・タイムトラベルの関係図があり、それも良かったです。

もちろん四畳半神話体系の続編作品として見ても完璧。僕はむしろ本作品の予告を観てから四畳半神話体系・夜は短し歩けよ乙女 の原作小説・アニメを観たり読んだりしたいわゆるにわか勢なのですが、それでもキャラへの愛着はあり、12年前のアニメのキャラ達が今でも元気にやっているというその一点だけで感慨深かったです。過去描写へのセルフオマージュ・ファンサービス要素も各所に散りばめられており、当時アニメをリアルタイムで観ていた人にとってはもう最高なんだろうなという気持ちです。

タイムマシンを巡ってドタバタしている所だけでも勿論良かったのですが、騒動の解決後、夕暮れ時の鴨川デルタ付近を一同が駄弁りながら歩いていくモラトリアム的な描写、大学生活が終わった後にこれを懐古して青春と呼んでそうなこの雰囲気が本当に素晴らしいです。あと最後のセリフ。映画をこれで終わらせてるだけで10万点は加点していいと思います。

雨を告げる 漂流団地

ペンギン・ハイウェイ のスタジオコロリドが制作するNetflix独占配信作品で、突然海上を漂流する事になった団地が舞台のジュブナイル映画。
主人公は思春期・反抗期ぐらいの少年で、ヒロインの位置にいるのはその幼馴染です。上で紹介した映画と共通点がありすぎる。

舞台となっている団地は取り壊し直前で人が住んでおらず、主人公とその幼馴染(夏芽)は共にそこで育った仲です。
夏芽の心情が物語展開の中で大きなウェイトを占めていて、新しい居場所や母親を認め、優しくしてくれた相手の死や団地にはもう住めないという事実を受け入れる事が作品におけるかなり重要な要素となっています。

キャラクターがみんな小学生で強いまとめ役がいる訳でもない事もあり、トラブルの大半が人間サイドの問題(素直になれなかったりだとか、必要な情報を明かしていなかったりだとか、状況に耐えきれず他人に当たってしまったりだとか)で観てるとかなりハラハラします。
それでも最終盤のパートは完璧で、2時間かけてずっと描写し続けてきた問題をスッキリ解決してくれるため、観てる側としても非常に爽快感がありました。

僕が愛したすべての君へ・君を愛したひとりの僕へ

並行世界の存在が実証されて世界線を行き来できるようになった世界が舞台の、二本同時公開の小説原作SF恋愛映画です。

予告や公式サイトで説明されている範囲で雑に紹介をすると、僕愛が「並行世界からやってきた相手と恋に落ちる話」、君愛が「並行世界に駆け落ちしようとした結果ヒロインが幽霊になってしまう話」で、同じ主人公かつ別のヒロインで物語が進んでいきます。
また、両作品のストーリーは二本で一作品となる構成で、どちらの映画を先に観るかで鑑賞体験が大きく異なるような作りになっています。

この予告では青春ラブストーリー的な宣伝をされていますが実際はハードSF色も強く、世界線関連の描写には理論的な説明がしっかり存在し、テクニカルターム的な謎単語もバンバン出てきます。
あと上のあらすじ紹介は本当に事前情報だけで書いた内容なので、劇場で観ると「このあらすじ全然違うじゃん!」ってなると思います。僕も初見でそうなりました。

二本立てにしている部分の構成について、一本目の何気ない発言や不可解だった描写が二本目で回収される流れは素直に面白いです。観る順番で鑑賞体験が変わると宣伝されているのも納得で、よく考えられている作品だと思いました。
ただこれは映画化の際の改変だと思うのですが、もう片方を知らずに一本の映画として観てもある程度成立するように描かれており、そこで好みが分かれるかもしれません。
片側を観ただけでも物語全体の構成がある程度分かってしまい、また両方の映画に共通のパートも存在するため、展開を知っている状態で既知パートをもう一度流されて冷めてしまう人もいるかも、と思いました。

主題歌や監督、制作会社まで変えて2作品を同じクオリティで映画化する挑戦的な企画です、残念ながらもう上映終了となってしまったそうですが、配信等に来たらぜひ観てみてください。

ぼくらのよあけ

今井哲也さんの漫画を原作にしたSFジュブナイル映画です。小学4年生の男子が主人公で、取り壊し直前の団地が舞台です。今年公開のアニメ映画、設定に重複がありすぎない?

舞台は2049年で、主人公が異星から来た惑星探査機・人工知能である「2月の黎明号」に遭遇する所から物語が始まり、不具合で地球に不時着した彼を宇宙に帰す事を目的に話が展開していきます。

作品は「2月の黎明号を宇宙に返そうとする子供組」「昔に同じような経験をしたけど失敗してしまった大人組」という構図で成り立っていて、大人側が子供の行動を心配しながらも背中を押す、みたいな流れになっています。

冒頭の描写から比較的リアリティのある近未来SFという感じで、作中で使われているデバイスについても突飛すぎず、現代の延長にある世界観なのがよく伝わってきました。作中に登場するオートボット(AI搭載のロボット)が家電的な扱いで危険性をそぎ落としたようなデザインになっているのも好きです。

原作の絵柄から思い切ってリアル路線に寄せるキャラデザは賛否両論という感じですが、あの絵柄でアニメ映画として動かすのが難しいのも分かるので個人的には納得です。
親世代の話を圧縮して主人公周りに強くフォーカスした話にしたのも合理的で、映画としてまとめるならそうなるよね、という気持ちになりました。

すずめの戸締まり

最早説明不要の新海誠監督最新作。今年観た映画がこの作品一本の知り合いが無限人いて影響力すげ~~~って言ってます。

まだ上映中なのでネタバレになる事は書けず、感想なり評論っぽい事を書いても熱心な新海ファンの方に怒られてしまいそうなので、小学生並の感想を書くのに留めておく事にします。芹沢くんがかっこよかった。あと景色も綺麗だった。御茶ノ水の再現度がめっちゃ高い。

映画館に行くと未だに一日5回ぐらい上映されてるのでまだ観てない人は観ましょう。劇場で買える映画パンフレットに監督・音楽等のインタビューが結構な文量で載っているため、そちらも買って読んでみるといいと思います。

THE FIRST SLAM DUNK

SLAM DUNK原作者の井上雄彦さんが監督・脚本を務める12月3日公開の映画です。僕は桜木や流川ぐらいならなんとかわかる程度の未読勢なのですが、それでも十分楽しめました。

本作品については古くからのファンの多さや前情報が異様に統制されていた事もあり現在もネタバレ厳禁の雰囲気があるので、今回は物語にほぼ関係しない部分に絞って書いていきたいと思います。
また、未読エアプ勢が適当な事言って袋叩きに遭ってしまうのが怖いので、原作との違いやキャラ描写についての感想も省く事にします。まだやってるので興味ある人は観に行ってください。

この映画ですが、とにかく超意欲的な作品な事は間違いないと思います。漫画の絵柄をそのまま3DCGで動かして最高のスポーツ作品を作る、という発想が既に挑戦的で、これを原作者主導でやるのも凄い。
しかもこれが期待外れの大爆死にならず、むしろ期待を超えるクオリティで出てきたのでめっちゃ驚きです。

予告の時点では不安視もされていた3DCGでのバスケ描写ですが、これが完璧にハマっています。
僕も再序盤でこそ戸惑ったのですが、試合開始直後~最初の数点が入るまでの流れだけで完全に評価が一変しました。カメラワークも相まってマジで身体が釣られて動いてしまう、アニメ作品でこれだけ緊迫感のあるスポーツ描写はなかなか無いと思います。
過去作品の3DCGリメイクは失敗する事も相当多い印象なのですが、本作については完全に成功と言っていいでしょう。これだけキャラを動かすならCGじゃないと無理だよな、という所も納得しました。

このCG描写をさらに引き立てているのがカメラワークです。キャラに寄せたりアングルを下げたりしてスピード感を表現したり、一人称視点を使ってプレイヤーにかかるプレッシャーを表したりと、とにかく臨場感を与えるのが上手すぎる。
あと音の演出も良い。観客の声や環境音が消えてコート内の音だけが聴こえるようになる場面とか、所々で挟まる無音の演出とか、もちろんBGMも良いしその使いどころも良い。

おわりに

いかがでしたか?

こうして記事を書くと割と映画ジャンルに偏りがある事がわかり、青春恋愛映画・ジュブナイル映画・SF映画ばかり観てる人みたいになってしまいました。一応補足しておくと今年公開のアニメ映画にこのジャンルが多かっただけで、観る作品自体に好みが大きく関わっているという事はないと思います。

この記事の公開日は12/20ですが、実はこの記事の公開以降にも12/23に かがみの孤城 の上映開始が控えています。楽しみですね。映画館で映画を観ると楽しいので皆さんも是非やっていきましょう。


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