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最初のビットコイン論文を読み解く! ブロックチェーンの目的とは?

こんにちは。ルピナス暗号資産ナビゲーターのshibaです。

この記事は、暗号資産(=仮想通貨)投資コミュニティ、ルピナスの投資講座の内容に基づき書いています。

暗号資産の投資からWeb3.0、ブロックチェーンのことなど、暗号資産を取り巻く情勢について解説しています。その目的は暗号資産投資のリスクヘッジであり、より小さなストレスで最大の利益を得ることです。

私自身もこの記事を書きながら勉強している身で、この記事を読んでくださるあなたと共に学んでいければと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

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今回のテーマは、ビットコインの始まりとなった最初の論文を読み解くことです。最初の論文を著(あらわ)したのはサトシ・ナカモトと呼ばれる人物ですが、実は未だにその正体は明かされていません。

匿名の人物によって提案されたビットコインではありますが、なぜ1BTCに200万円、2021年には700万円もの価格が付けられるほどになったのでしょうか?

今となっては信じられないかも知れませんが、ビットコインが誕生した当初(2009年)、1BTCには100円ほどの価値もありませんでした。実際に、1万BTCでピザを購入した人もいました。

そんなビットコインが、つまりは暗号資産が現在のように価値を認められる背景にはやはり理由があります。その理由とは何か。ビットコインの仕組み、誕生の理由をサトシ・ナカモト氏の論文から読み解きます。

なお、サトシ・ナカモト氏の論文で提案されているのは、電子取引システムの仕組みであり、厳密にはビットコインが提案されているわけではありません。ここでは分かりやすくするためにビットコインと記述していますので、ご留意ください。

暗号資産投資についての理解を深めることで、ストレスフリーな投資にお役立ていただければ嬉しいです。ぜひ最後まで読んでみてくださいね^^

※本記事では、仮想通貨、暗号通貨、暗号資産などの用語が登場しますが、これらは基本的に同じ意味です。

1.本記事の出典

この記事は、サトシ・ナカモト氏が2008年に公開した論文、『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』(以下、「論文」と呼びます)に基づき作成しました。単純にこの論文をなぞったわけではなく、ビットコインが社会的に認められ、現在のような価格を付けるに至った理由に焦点を当ててまとめています。

出典論文のリンクを貼り付けておきますので、参考にしてみてください。

原論文(英文、サトシ・ナカモト)

https://bitcoin.org/files/bitcoin-paper/bitcoin_jp.pdf

英語の論文だけでは読みづらいと思いますので、今回参考にした2つの日本語訳も貼り付けておきます。原著を読むことで、サトシ・ナカモト氏が目指したものが見え、暗号資産が長期的に価値ある通貨である理由が理解できるのではないでしょうか。

日本語で読むビットコイン原論文(Coincheck)

ビットコイン: P2P 電子通貨システム

https://bitcoin.org/files/bitcoin-paper/bitcoin_jp.pdf

2.従来の金銭取引の問題点

はじめに、日本円や米ドルなどの通貨の取引を想像してみてください。例えば、1万円を取引先に送信する際、あなたはどのような方法で送信していますか?

恐らく次のような方法を使うのではないでしょうか。

  • 銀行振込

  • クレジットカード

  • Paypal

  • PayPay など

これらはいずれも第三者の金融機関、サードパーティと呼ばれる組織を介して行われます。私達は通常、意識はせずともこれら第三者を通して金銭の取引をしています。

つまり金銭取引は、彼ら第三者が”信用できる”ことを前提にしていると言えます。

しかし、この第三者を通した金銭取引にはいくつかの問題があります。

■第三者を通した金銭取引の問題点

  • 返金処理など争議の仲裁コストが必要

  • 争議を予め防止するため、多くの個人情報を必要とする

  • 詐欺などへの対策に労力を割く必要がある

  • 上記のコストは取引手数料などの取引コストを引き上げる

ご存知のように、従来の第三者を通す金銭取引には一定数の手数料が必要です。このため、頻繁な取引や少額の取引にはどうしても向かないという性質がありました。

ちなみに、第三者を通した一般的な金銭取引は、可逆的な取引と言われています。一度支払った金銭を返金してもらうことができるのも可逆的であるが故ですね。

しかし可逆的な取引では、一定数の詐欺を受け入れざるを得ません。詐欺への対策は実施されているため割合にすれば多くはありませんが、ゼロにすることはできないのが現状です。

■取引コスト減少に向けたサトシ・ナカモト氏の提案

上で書いたように、第三者を通した金銭取引には争議の仲裁コストが含まれるため、少額取引に向いていません。

売り手と買い手が第三者を介さずに取引するには何が必要になるでしょうか?

この課題への解決策こそがこの論文の主旨です。上記の問いに対して論文が提案しているのは、「信用ではなく暗号化された署名に基づく電子取引システム」を創ることです。

この電子取引システムに求められる要件は、”非”可逆的な取引を実行できることです。

なお、第三者を介さないユーザー間の取引のことをPeer to PeerとかP2Pと呼びます。

以下では、非可逆的な電子取引システムを創るための論文における提案内容を解説していきます。

3.電子署名に基づくコインの定義

サトシ・ナカモト氏が提案したコインの定義、すなわち暗号通貨の定義は次のようなものでした。

暗号通貨の定義:チェーンのように連続した電子署名

私達は普段、現物のコインを見慣れているので、「電子署名がコイン?」とイメージがつけにくいかも知れません。

2.で説明したように、暗号通貨の電子取引では、二重支払いを防止する必要があります。そのため、電子データではあるものの、コインがAさんからBさん、BさんからCさんへと受け渡される仮定で、過去にAさん、Bさんが所有していたことを証明するための電子署名が付けられる必要があるのです。

この電子署名が連なったものが電子コインである、というのがサトシ・ナカモト氏の提案する暗号通貨の定義です。

ただ、厳密なことを言えば、私達のような一般のユーザーが過去の所有者の署名を確認するなどの検証を行うのはほとんど不可能です。この過程を実施するのは、この後に登場するプルーフ・オブ・ワーク(Proof Of Work , PoW、以下、「PoW」と呼びます)を実行するコンピュータ(ノードと呼ばれる)です。

現在では、このPoWによる管理を分散型管理などと呼び、従来の中央集権的な管理(銀行などの金融機関による管理)と区別しています。

では、この電子署名を監視する分散型管理は、実際にはどのように実行されているのでしょうか?

従来の金融機関のような第三者がいなければ、誰が責任をとるのか?

私達はあまりにも第三者による管理に慣れてしまっているため、分散型管理と言われてもなかなか納得できないかも知れません。

しかし、この論文で提案されたPoWは、第三者が不在でもシステムを稼働し続けることができ、かつ先で書いた二重支払いを防止し、非可逆的な取引を可能にする仕組みでした。

以下では、このPoWに焦点を当てて解説していきます。

4.Proof Of Work(プルーフ・オブ・ワーク)

Proof Of Work(以下、「PoW」と呼びます)を日本語に訳すと、「証明のための仕事」となります。

世界初の暗号通貨であるビットコインを例にとると、世界中のビットコインに関する取引は、約10分毎に一つのブロックにまとめられます。

ブロックとは何か、よくわかりませんね。世界中の取引をハッシュ値と呼ばれる文字列に変換したものをブロックと呼びます。

ハッシュ値というのは、ハッシュ関数を使って作られる文字列のことです。ハッシュ関数によって作られた文字列、ハッシュ値は、元のデータに戻すことができません。

このハッシュ値の先頭数桁(nビット)が0(ゼロ)で始まるようにするため、世界中の取引を集めた数値データにナンスと呼ばれるデータをくっつけます。このナンスを見つけることこそがPoWの作業のメインです。

イメージ化すると下図のようになります。

ブロックの生成イメージとハッシュ値の内容

上図の中にある元のテキストが少し違うだけで、ハッシュ値(上図でいうと固定長のテキスト)ががらっと変わります。

PoWの作業は、ナンスを少し変えてハッシュ値を算出して、決まった桁数の0が先頭に並ぶようにするトライ&エラーの作業です。先頭の0の桁数をいくつにするのか、0の数が1つ増えると、必要な計算量は指数関数的に増えていきます。

しかし、こんな面倒臭そうなPoWを誰が好き好んで実行するのでしょうか?

そんな疑問が頭に浮かびましたか?

それに、どうしてPoWで二重支払い、つまり詐欺を防止できるのか、まだ不明瞭ですね。各ブロックに前のブロックのハッシュ値が含まれていることが肝になっています。

以降では、二重支払いなどの詐欺に対してPoWがもたらす効果やPoW実行者へのインセンティブについて説明していきたいと思います。

5.PoWがデータ改ざんを実質不可能にする理由

PoWによってブロックごとの取引データとナンスが決まり、ハッシュ値が作られることがわかりました。

しかし、PoW自体がトライ&エラーを必要とし、大変な労力を伴います。こんな労力をかけて暗号通貨を管理するノード(コンピュータ)の一員になりたい人が果たしているのでしょうか?

そんな面倒な作業をする管理者の一員になるより、さっさとデータを改ざんするなりして暗号通貨を大量に盗みとってしまえばいいじゃないか?そう考えてしまいませんか?

■ハッキングには天文学的なコンピュータパワーが必要

まず、データの改ざんが限りなく不可能であることを説明します。

4.で示した「ブロックの生成のイメージとハッシュ値の内容」の図をもう一度見てみてください。各ブロックに前のブロックのハッシュが含まれていることがわかります。

つまり、どこかの時点でデータを改ざんしたとすると、そのあとに続く全ブロックのナンスを再計算しなおさなければ改ざんしたブロックを含むチェーンが全ノードから認められることはないということです。

この考え方は非常にロジカルな部分で、言葉だけではわかりづらいと思います。図にすると以下のようなイメージになります。

データ改ざんが困難であることのイメージ

上図に示すように、例えある時点のブロック内のデータを書き換えることができたとしても、その後に連なるブロックのナンスまで全て再計算し直さなければ改ざんされたチェーンが認められることはありません。

これを成功させるためには、天文学的なコンピュータパワー(CPUパワー)が必要であることがわかります。

■PoW成功ノードへのインセンティブ

そしてもう一つ、データ改ざんのモチベーションを失わせる仕組みがあります。

それは、PoW成功者へのインセンティブです。PoWの成功とは、ブロックごとのハッシュ値を作るためのナンスの発見です。

業界内では、このナンスを発見することを採掘(マイニング)と呼びます。最初にナンスを発見した人には、マイニング報酬が支払われる仕組みになっているのです。

各ブロックの最初の取引は、新たな暗号通貨の発行です。つまり、ビットコインで考える場合、マイニング報酬はビットコインで支払われます。

現在、ビットコインのマイニング報酬は6.25BTCです。2023年1月現在のビットコインの価格は日本円で約220万円ですので、その6倍以上ですので、1,200万円以上の報酬ということになります。

約10分に1つのペースでブロックが生成されるとして、最初にナンスを採掘したノードが1,200万円以上のマイニング報酬を受け取るのです。

いかがでしょうか?一生懸命最速のコンピュータを用意したとして、そのコンピュータで正当にマイニングをするのか、リスクを侵してハッキングするのかどちらが賢明と言えるでしょうか?

6.インフレーションを防止する仕組み

マイニング報酬が支払われるということは、ビットコインが無限に採掘されるという意味に捉えることもできます。

通貨が無限に増え続けると、通常インフレーションと呼ばれる状態に陥ります。インフレーションとは、通貨の価値が低下し、物価が上昇する現象のことです。

しかし、サトシ・ナカモト氏はインフレーションへの対策も講じていたのです。

ビットコインを例に挙げれば、その発行枚数は2,100万枚と決められています。またマイニング報酬は、約4年ごとに半分になるようにプログラムされているのです。

これは、単に報酬が減るという意味ではなく、価値が担保されると捉えてください。日本円でも米ドルでも、一般の通貨において流通量が増えすぎればその価値が低下してしまいます。ビットコインでは、それを避けるための仕組みが初めからプログラムされているのです。

7.結論

本論文では、第三者の信用に頼らない電子取引システムが提案されました。

冒頭で書いたように、この論文が目指したのは、”二重支払いを防止する”電子取引システムの構築でした。

二重支払いとは、一度誰かに支払ったお金と同じお金をまた別の誰かに支払うことです。例えば、Aさんに支払った1万円と全く同じ1万円をBさんへの支払いにも使用することです。

これは、現金を扱っている限りにおいてはあり得ません。しかし、コンピュータ上の通貨であればデータのコピーが容易にできてしまうため、電子取引システムでは絶対に防止しなければならない最重要課題となるのです。

サトシ・ナカモト氏は、このような課題に対して、PoWを元にしたP2Pネットワーク(分散型管理)を提案しました。

ブロック内のデータの改ざんを行うことは、その後に連なる全ブロックのナンスを再計算することを意味しており、事実上そのようなことはほとんど不可能と言えます。

その結果、ある特定の第三者を信用することなく、二重支払いを防止可能な電子取引システム、つまりはブロックチェーンが誕生しました。

なお、分散型管理を担うノード(コンピュータ)は、常にネットワークに接続し続けなければならないわけではありません。世界中のいくつものノードが取引を監視しているため、各ノードは自由に離脱と再接続が可能なのです。

まとめ

今回の記事では、ビットコイン誕生のきっかけとなったサトシ・ナカモト氏の論文の内容を紹介しました。ただし、論文が伝えたいメッセージに焦点を当ててより簡潔にお伝えするため、詳細な技術的部分は敢えて割愛させていただきました。

以下のような詳細な内容を知りたい方は、ぜひ冒頭で紹介した原典をご参照ください。

■今回割愛した内容

  • 分散型管理を担うP2Pネットワークの取引認証時のルール(PoWの一連の流れ)

  • 各ノードのディスク・スペースへの影響

  • 個人でできる取引(トランザクション)の簡易な検証方法

  • 暗号通貨(コイン)の価値の結合や分割の考え方

  • ユーザーのプライバシー(ユーザーの匿名性)

  • ハッキングによるデータ改ざんが成功し得ない数学的根拠


最後に簡潔にまとめてこの記事を終わりたいと思います。

■今回の記事のポイント

  • 第三者の信用を前提とした従来の電子取引は、争議仲裁コストが嵩むため取引手数料が高い

  • 第三者を介さない金銭取引のためには、二重支払いを防止できる電子取引システムが必要

  • サトシ・ナカモト氏が提案した暗号通貨の定義は『チェーンのように連続した電子署名』

  • サトシ・ナカモト氏は、PoWを用いた電子取引システムを提案した

  • PoWによる分散型管理では、データ改ざんが実質不可能である


この記事では、できるだけ初心者の方にわかりやすく書いているつもりですが、よくわからないところなどコメントいただければ別の記事で補足していきたいと思います。

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以上、ここまで読んでくださりありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。


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