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【インド映画】Dunki(2023)

監督: ラージクマール・ヒーラーニー
出演: シャー・ルーク・カーン、タープシー・パンヌ、ボマーン・イーラーニー、ヴィッキー・カウシャル(特別出演)など
上映時間: 2時間40分

ついに全インド映画ファン待望の作品が公開になりました!その名も「Dunki(ダンキ)」。

あの超名作「きっと、うまくいく」など、数々の傑作映画を生み出してきた名監督ラージクマール・ヒーラーニーと、説明不要の大スター、シャー・ルーク・カーンの初タッグ作品です!公開初日に観に行ってきました!

Dunki(ダンキ)とはパンジャビ語で「不法移民」という俗語。当時パンジャーブ州やハリヤナ州、グジャラート州などで、経済苦からの脱却を図り、ダンキでの海外移住を図るものが後を絶たなかったらしい。

ストーリーはインド北部パンジャーブ州のラルトゥという小さい村に住む4人の若者が、貧困から抜け出すためにイギリスに行くことを夢見るところから。ある日ラルトゥにハルディ(シャー・ルーク・カーン)という男がやって来ます。彼は以前この町出身のマヒンデルという男に命を助けてもらったことがあり、その際に彼がおいて行ったテープレコーダーを届けに来ました。

しかし彼はハルディを助けた直後に事故死しており、ハルディは残された妹のマヌ(タープシー・パンヌー)のイギリス行きの夢を叶えるためにラルトゥに残り、彼女とその友人たちの手助けをします。

彼らははじめビザ入手の仲介業者に多額のお金を払いビザ入手を依頼するが、その業者は偽物でお金だけ持って高飛びされる。
そして次は英語塾に通い、学生ビザでの入国を試みるが、試験に合格したのは友人のバッリ一人だけ。ハルディとマヌと友人ブッグはダンキ(不法入国)でのイギリス行きを目指すことに。

正直言うと、途中まで「ラージクマール・ヒーラーニー大丈夫か??」と心配になるほど退屈なストーリー。もちろんいつものコメディチックな演出で笑えるシーンもあったのですが、今作はしっくり来ないポイントが非常に多いのです。

一つはストーリーの裏切りのなさ。彼の監督作は唸るような展開が多いのですが、今回は本当に予想の範囲を全く超えてこない。サプライズが全くないのです。

そして登場人物にも感情移入できない。なぜなら彼らの行動はつじつまが合っていないことが多く、芯がないからです。いくら個人の苦しい事情があるとはいえ、法を破る行為である不法入国は決して許されませんし、イギリスに入国しても彼らは警察から逃れながらコジキをするだけで、結局問題の解決にはなっていません。
しかもハルディは不法入国する際に人を殺めています。いくら友人たちのためとはいえ、こんな奴に感情移入はできません。

最後の最後までずっとこの調子で「ラージクマール・ヒーラーニーの時代は終わったのか?」とまで思ったのですが、違いました。自分は大馬鹿ものでした。

自分の中ですべてがひっくり返ったのがラストシーン。もちろんシーンそのものも素晴らしく、目に涙を浮かべながら観ていたのですが、一番大きかったのはそこで今までのすべての疑念が解消されたということ。この映画は「ドラマ」ではなく「ドキュメンタリー」だったのです。

彼らのように藁にもすがる思いで不法入国を試みた人が多数いたことも、不法入国を果たしたものの現地でも貧乏暮らしになってしまうのも、偽のビザ仲介業者に多額のお金を騙し取られるのも、ただ本当にあったことなんです。

それが良いとか悪いとかそういう話ではありません。ただただそういう人たちがいたという話なんです!そしてそれを僕たちに知ってほしいということなのです!だからこそ物語のおもしろさを重視した「ドラマ」ではなく、リアリティを重視した「ドキュメンタリー」調になっているのです。

なのであえて登場人物に芯を持たせたり、ストーリーをダイナミックにしたり、予想外の展開を用意したりしていないのです。それがダンキで不法入国を試みた人たちのリアルだから!

過去のラージクマール・ヒーラーニー監督映画は、ほぼ一貫して「社会問題をベースにした泣いて笑えるコメディドラマ」で、今回も当然のごとくそれを期待していたのですが、今回は思い切ってそのフォーマットを崩し、社会問題により重点を置いた作品になっています。

その挑戦する姿勢も含め僕はすごく好きでしたが、娯楽思考で保守的な考え方が強いインド人たちはどう反応するのか。初日で他人のレビューがまだわからない状態なので、インド国内でどれぐらい受け入れられるのかが非常に気になるところです。

シャー・ルーク・カーンは久しぶりに恋愛シーンを見たような気が。だいぶ老け込みはしましたが、彼のロマンス演技はやっぱ最高です!
最後のシーンは完全にシャー・ルークの演技で泣かされました。

「Dunki」はインドの名監督、ラージクマール・ヒーラーニー監督が、新境地を切り拓いた作品。この作品が受け入れられるか否かで、次からの作品の作り方がまた変わってくるかのと思われます。どうなるのか??
僕個人としてはすごく好きでした!

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